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社長必見「残業代は基本給に含む」のメリット・デメリットを徹底解説!

「残業代は基本給に含む」って聞いたことありますか?安易に取り入れる前に、正しい知識を身につけましょう!ネットには「違法!」という情報も氾濫していますが、本当のところは?社長必見!固定残業代の真実と、そのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

1.残業代を基本給に!? 固定残業代のミステリーを解明!

社会保険労務士として日々中小企業の社長さんたちと接していると、「残業代を基本給に入れたい」という声をよく耳にします。簡単に言うと固定残業代のことですが、この言葉の背後には、多くの誤解や不安が隠れています。今回は、この固定残業代のミステリーを徹底的に解明してみましょう!
なお、固定残業代は、定額残業代やみなし残業代とも呼ばれています。

まずは基本から!固定残業代とは何か

固定残業代とは、文字通り、毎月一定の金額として残業代を支給する制度のことを指します。具体的には、毎月の給与の中に、あらかじめ定められた残業時間分の残業代を含めて支給する方法です。

例えば、基本給が20万円で、固定残業代が5万円の場合、実際の残業時間に関係なく、毎月25万円が支給されます。

この制度の最大のメリットは、給与計算の簡素化にあります。特に、多くの従業員が少しの残業しかしない場合や、残業時間が月によって大きく変動しない場合には、給与計算の手間が大幅に削減できます。

でも、本当に問題ないの?固定残業代の注意点

「じゃあ、固定残業代を導入すれば、すべての問題が解決するの?」と考える社長さんも多いかもしれません。しかし、固定残業代には注意が必要です。

まず、固定残業代を導入する際には、労働者との間で正確な取り決めが必要です。この取り決めは、労働契約書や就業規則などの文書に明記する必要があります。また、固定残業代の金額や時間数、それを超えた場合の取り扱いなど、詳細な条件をしっかりと定めることが求められます。

次に、固定残業代の導入によって、実際の残業時間が増えてしまうリスクも考えられます。特に、社員の意識改革を伴わないまま固定残業代を導入すると、このリスクは高まります。

従業員が「どれだけ残業しても給与が変わらない」と感じると、無意識に残業を増やす傾向になる可能性があります。

逆に言えば、固定残業代の導入をきっかけに、社員一人ひとりが「同じ給料をもらうのであれば、効率よく仕事を終わらせて早く帰ろう」という意識に変わることも期待できます。

しかし、そのためには経営層や人事部門が率先して意識改革の取り組みを行い、従業員のモチベーション向上や働き方の改善に努める必要があります。

残業の問題は、単に給与計算の問題だけでなく、企業文化や働き方の根本的な部分にも関わってくる大きなテーマです。固定残業代を導入する際には、このような背景もしっかりと考慮し、企業全体で取り組む姿勢が求められます。

2.固定残業代を導入する前に!知っておきたいポイント3つ

固定残業代の導入を検討している社長さん、ちょっと待った!この制度を導入する前に知っておきたいポイントがあります。今回は、そのポイントを詳しく解説していきます。

はっきりさせておきたい!固定残業代の金額と時間数

固定残業代を導入する際、最も基本的なのが「金額」と「時間数」の設定です。これが曖昧だと、後でトラブルの元になりますよ。

良い例
基本給:200,000円
固定時間外手当:50,000円(32時間分の残業代相当)
→ 固定残業の金額と時間が明記されています。


悪い例
基本給:250,000円
(基本給には残業代を含む)
→ 固定残業となる時間と金額が明記されていない。


まず、固定残業代として設定する金額は、従業員の基本給や業務内容、労働時間などを考慮して、適切に決める必要があります。また、時間数についても、実際の残業の平均時間を基に設定すると良いでしょう。これにより、従業員との間での誤解や不満を防ぐことができます。

実際の残業時間と固定残業代、その微妙な関係

固定残業代は名前の通り「固定」ですが、実際の残業時間は毎月変わるもの。この2つの関係性をしっかりと理解しておくことが大切です。

例えば、固定残業代として30時間分の残業代を支給している場合、実際の残業時間が30時間を超えた場合、その 超過分に対する残業代を追加で支給する必要があります。

逆に、実際の残業時間が30時間未満の場合でも、 固定残業代は減額されることはありません。このような点を従業員としっかりと共有しておくことで、後々のトラブルを避けることができます。

良い例:
ある会社Aでは、従業員の平均残業時間が月20時間であることを基に、固定残業代として20時間分の残業代を設定。その金額を基本給に上乗せして支給しています。さらに、実際の残業時間が20時間を超えた場合は追加で残業代を支払っています。このように、固定残業制を設定することで、従業員からの不満も少なく、スムーズに導入できます。

悪い例:
一方、別の会社Bでは、従業員の平均残業時間に関係なく、一律で10時間分の固定残業代を設定。しかし、多くの従業員が月平均で30時間以上の残業をしているにもかかわらず、超過した分の残業代も支払っていません。その結果、従業員からの不満が絶えず、結果的にトラブルの原因となりました。

書面での取り決めはマスト!その重要性

固定残業代を導入する際のもう一つのポイントは、書面での取り決めです。口頭での約束や、曖昧な取り決めでは、後で解釈の違いからトラブルが生じるリスクが高まります。

労働契約書(労働条件通知書)や就業規則など、公式な文書に固定残業代の内容を明確に記載しておくことで、従業員との間での誤解を防ぐことができます。また、万が一トラブルが発生した場合にも、この文書が重要な証拠となりますので、十分な注意が必要です。

3.固定残業代、導入するべき?その実態を深堀り!

固定残業代を導入する際のメリット・デメリット。多くの社長さんがこの問いに頭を悩ませていることでしょう。今回は、その疑問を解消するため、固定残業代のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

会社側の視点で見る!固定残業代のリアルなデメリット

固定残業代を導入することで、一見、経費削減が期待できるかと思われがち。実際、多くの社長が残業代を少しでも抑えたいと考え、固定残業代の導入に踏み切る方も少なくありません。

しかし、考えてみてください。実際の残業時間が設定した残業時間に達しなかった場合でも、あらかじめ約束した残業代は支払わなくてはなりません。さらに、設定した残業時間を超えてしまった場合、その超過分についての残業代も追加で発生します。

こうした実情を知ると、固定残業代の導入が、実は残業代の節約策としては不十分であるだけでなく、場合によっては逆に支払いが増えるリスクも考えられます。
給与計算も複雑になり、人事や経理部門の業務負担が増加する可能性も出てきます。

さらに、今日の労働市場では「ブラック企業」への警戒感が高まっています。特に、求職者の間で固定残業代の導入が働き手にとって不利益な制度と捉えられる傾向が強まっています。

実際、株式会社AlbaLinkの調査によれば、求職・転職活動者の約3人に2人が「ブラック企業かどうか」を重視しています。

具体的には、アピールポイントの抽象性や応募条件の緩さ、労働条件の悪さとともに、「みなし残業代が含まれていないか」というポイントもブラック企業判断の材料として挙げられています。このように、固定残業代が給料に含まれているだけでブラック企業と判断されるリスクが高まり、その結果、優秀な人材の採用が難しくなることも考慮しなければなりません。

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固定残業代、じゃあ全部悪いの?驚きのメリットを探る!

「固定残業代って、結局のところメリットなんてあるの?」と思うかもしれません。しかし、そんな疑問を抱く方々に、実は固定残業代には意外と便利な面もあるんですよ、と伝えたい。

私が中小企業社長に、固定残業代を薦める判断基準として、以下の3点を挙げます。

この3つ全てに当てはまるなら固定残業検討の価値あり
(1)基本給、諸手当だけでは給与が低すぎると感じている
(2)一定の残業がある
(3)細かい残業計算が面倒と感じている


これら3つの条件に当てはまる会社の場合、固定残業代を導入することで、意外とスムーズな給与体系を築くことができます。

例として、基本給が176,000円(所定勤務時間160時間)の場合、もし残業が10時間程度あるなら、固定残業代を20時間(27,500円)と設定。
これで給与総額は203,500円となり、社員にとってもメリットが感じられるわけです。

また、残業が多い会社で働き方改革を進めたいという思いがある場合、固定残業代を上手く活用することで、社員の給与を維持しつつ、働く時間を減らすという方針も可能になります。

具体的には、月に40時間もの残業がある場面で、これを20時間まで減らすことを目指すとしても、残業代が減ってしまうと、働き方改革が進みません。

そこで、固定残業代を40時間分と設定することで、社員の給与を守ることができるのです。これにより、社員の仕事の質が上がるだけでなく、人材確保の面でも大きなメリットを享受できます。

最後に、固定残業代は全体的に見れば、一見メリットが少ない給与制度のように思えますが、特定の状況下では非常に有効な手段となることが理解できるはずです。

4.固定残業代、どうやって設定するの?設定のコツを伝授!

固定残業代を導入する際、一番大切なのはその「設定方法」です。間違った方法で設定してしまうと、後々トラブルの元になる可能性も。そこで、このセクションでは固定残業代の正しい設定方法をしっかりとマスターしてもらうための情報をお伝えします。

手当として払うの?固定残業代の支払い方

「固定残業代を手当としてどうやって払うの?」という疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。手当として別途支給する方法は、基本給とは別に、固定の残業代が毎月一定の金額で支払われる形になります。そして、もし実際の残業時間が設定した残業時間を超える場合、その超過分の残業代が追加で支給される仕組みです。

具体的なイメージとしてはこんな感じ。
基本給:180,000円
職務手当:20,000円
固定残業手当(※):50,000円(32時間分の残業代相当)
※実際の残業が32時間に満たない場合でも全額支給し、それを超えた場合は別途残業代を支給する。


基本給に固定残業代を取り込む!そのメリットとは?

固定残業代を基本給に組み込む方法も、選択肢の一つとして考えられます。まさに本日のテーマ「残業代は基本給に含む」方式です。


この方法を採用すると、基本給の中に固定残業代が含まれる形になります。これにより、給与明細上での基本給の金額が、一見して大きく見えるというメリットがあります。

具体的な設定例はこちら。
基本給:250,000円
※基本給には、固定残業手当として50,000円(32時間分の残業代相当)を含む。
また、実際の残業が32時間に満たない場合でも全額支給し、それを超えた場合は別途時間外手当を支給する。

固定残業の金額、時間共に明記されています。

この方法のポイントは、基本給自体が大きく見えるという点。
特に採用活動を行っている中小企業にとっては、上手に活用すれば大きなメリットとなります。
しかし、注意点として、基本給以外にも残業となる手当を支給する場合は、設定が困難です。

5. みんなが知りたい!固定残業代の正確な計算方法を教えます

残業代の計算、複雑で分かりにくいですよね。でも、ちゃんと理解して正確に計算することで、トラブルを避けることができます。今回は、固定残業代の設定方法について、具体的な計算例を交えて解説します。

固定残業手当として払う場合の計算ステップ

固定残業代を手当として支給する場合、以下のように計算します。

(1)基礎賃金(残業の対象となる1時間当たりの賃金)の計算
基本給÷所定労働時間
例:200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円

(2)1時間あたりの残業代の計算
基礎賃金×1.25
例:1,250円 × 1.25 = 1,562.5円

(3)固定残業代とその時間数の設定
金額を先に設定するケースと時間数を先に設定する場合があります。

➀金額を先に設定する場合(50,000円):
固定残業代÷1時間当たりの残業代
例:50,000円 ÷ 1,562.5円 = 32時間

②時間数を先に設定する場合(32時間):
1時間当たりの残業代×設定した固定残業時間
例:1,562.5円 × 32時間 = 50,000円

こちらは、残業代の対象となる給与と基礎賃金(残業の対象となる1時間当たりの賃金)がわかれば、計算はそれほど難しくはありません。

【残業代の対象となる給与と残業代1時間の詳細はこちらから】

基本給に固定残業代を含める場合の計算ステップ

固定残業代を基本給に含めるといっても、固定残業の金額を先に設定するか、時間数を設定するかの2通りあります。

基本給の総額を25万円とする場合、この内残業代は5万円としたら何時間分だろうと言うのが1つ目。残業時間を32時間としたら、基本給本体と残業代をどう振り分けるのかが2つ目になります。

それぞれ以下のように計算します。

(1)固定残業代の金額(50,000円)を先に設定する場合
➀基礎賃金(残業の対象となる1時間当たりの賃金)の計算
(残業代を含む基本給−残業代)÷所定労働時間
例:(250,000円 - 50,000円) ÷ 160時間 = 1,250円

②1時間あたりの残業代の計算:
1時間当たりの賃金×1.25
例:1,250円 × 1.25 = 1,562.5円

③残業時間数を計算:
・50,000円÷1562.5=32時間

こちらの方法も、それほど難しくはないと思います。

(2)固定残業時間(32時間)を先に設定する場合
➀月の合計労働時間の計算:
所定労働時間+(設定した固定残業時間×1.25)
例:160時間 + (32時間 × 1.25) = 200時間
※残業の1時間は、通常時間の1.25時間分に相当するので上記の計算をします。

②1時間当たりの賃金の計算:
残業代を含む基本給÷月の合計労働時間
例:250,000円 ÷ 200時間 = 1,250円

③本来の基本給の計算:
 1時間当たりの賃金×所定労働時間
例:1,250円 × 160時間 = 200,000円

④残業32時間分は50,000円になります。

こちらは、残業の1時間を通常の1時間に換算すると、1.25時間で計算する点が複雑です。

6. 「固定残業代、本当に大丈夫?」導入時のリスクとスマートな対処法

固定残業代、導入を検討している会社も多いはず。しかし、気をつけなければならないポイントやリスクもあります。今回は、そんなリスクや背景、そしてその対策について解説していきます。

固定残業代が認められない条件

固定残業代を導入する際、注意すべきポイントがいくつかあります。以下に、固定残業代として認められない可能性がある条件を挙げます。

(1) 明確な記載が不足:
固定残業代の金額や時間数が明確に記載されていない場合、その給与の部分が固定残業代として認められないリスクが高まります。

(2) 対応が不明確:
実際の残業時間が設定された時間より短くても金額を減らさない、または、設定された時間を超えた場合の追加支給の記載がない場合、どのように取り扱われるかが不明確となり、問題が生じる可能性があります。

(3) 過度な設定時間:
設定した固定残業の時間が適切ではない。具体的には、36協定の上限である45時間を超えると、その超過部分が認められないリスクが高まります。この制度の趣旨から外れるような設定は避けるべきです。

このように、固定残業代を導入する際には、その条件や取り決めの明確さが非常に重要となります。認められない条件を避けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

固定残業代が認められなかった場合の影響

固定残業代が正当として認められなかった場合、それは企業にとって大きなリスクとなり得ます。そもそも固定残業代の導入は、労働時間の見積もりや給与計算をシンプルにするためのものですが、その前提が崩れることで、企業の経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

具体的な影響として、先ほどの例、基本給として250,000円の中に、50,000円(32時間分)を固定残業代として計上していたとします。この50,000円が固定残業代として認められない場合、実際の残業時間に応じた残業代の計算が必要となります。

もし実際に30時間の残業を行った場合、
・残業の対象となる給与:250,000円
・1時間あたりの給与:250,000÷160時間=1,562.5円
・残業1時間当たり:1562.5円×1.25=1,953.2円
・30時間の残業代:1,953.2円 × 30時間 = 58,596円

本来の給与は、残業30時間は設定時間(32時間)に収まってるので250,000円。
ところが、固定残業として認められなかった場合は、308,596円。

このように、固定残業代が認められない場合、企業は追加の給与を支払わなければならなくなるリスクが生じます。

固定残業制の導入を検討する際は、そのメリットとデメリットをしっかりと理解することが欠かせません。そして、実際に導入する際には、今回ご紹介したポイントをしっかりと踏まえて、適切な対応を心がけることが大切です。



当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





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