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休職中の従業員への給与・ボーナス支給は必要?経営者が知るべき法律と実務

中小企業の経営者にとって、休職中の従業員への給与やボーナスの支給は複雑な課題です。法的な明確なガイドラインが不足している中、企業は自らの裁量でこれらの問題を解決する必要があります。本記事では、休職中の従業員に対する給与とボーナスの扱い方に焦点を当て、経営者が直面する可能性のある諸問題とその解決策を探ります。専門家のアドバイスと実務上のノウハウを踏まえ、経営者が知っておくべき重要なポイントを解説します。

1.休職中の従業員に給与を支給する必要は?

中小企業の経営者にとって、休職中の従業員への給与支払いは重要な問題です。一般的に、労働提供がない場合の給与支払い義務は発生しない「ノーワーク・ノーペイ」の原則が適用されますが、例外も存在します。これには、特定の理由での休職(例えば、病気やケガ)や、就業規則に基づく特別な取り決めが含まれます。この記事では、休職中の従業員の給与支払いに関する法的な側面と実務における対応を詳しく解説し、経営者が適切な判断を下すための情報を提供します。

ノーワークノーペイの原則とその例外

通常、休職中の従業員に対して会社が給与を支払う必要はありません。これは「ノーワークノーペイ」という原則に基づいています。簡単に言うと、従業員が労働を提供しない場合には、給与の支払い義務は発生しないということです。

しかし、例外もあります。業務災害の場合、最初の3日間は休業補償として1日の平均賃金の60%を休業補償として支給する必要があります。
また、会社の就業規則や労働契約で、休職中の給与支払いについて特別な取り決めがある場合も要注意です。長期病気休暇や育児休暇など、特定の理由で休職している従業員に対する給与の一部を支払うといった規定が含まれる場合、規定された内容に基づいて適切に対応する必要があります。

休職中の社員へのサポート:法的枠組みと社会保険給付

休職中の社員に対する会社の対応は、いくつかの特定の状況を除いて、基本的に「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づきます。
例えば、業務災害の最初の3日間(休業補償)や、就業規則や労働契約で休職中も給与を支給すると定められている場合は、会社が給与を支払う必要があります。

しかし、これらのケースを除いては、休職中の従業員に対する直接的な給与支払いの必要はありません。その代わり、従業員は社会保険や労働保険からの給付を受けることが可能です。

具体的には、以下の給付があります。

・業務上や通勤途中での病気やケガ … 労災保険
・休業(補償)等給付
・休業特別支給金
・業務外の病気やケガ … 健康保険の傷病手当金
・産前産後休業 … 健康保険の出産手当金
・育児休業 … 雇用保険の育児休業給付金
・介護休業 … 雇用保険の介護休業給付金

2.休職中のボーナス(賞与)支給について

休職中の従業員へのボーナス支給は、経営者にとって難しい判断の一つです。法律では明確な規定がないため、この判断は企業の裁量に委ねられます。ボーナスの支給対象や計算方法は、企業の方針や就業規則によって異なります。この記事では、これらの要素を詳しく掘り下げ、休職中の従業員へのボーナス支給について経営者が考慮すべき点を解説します。

休職中のボーナス支給、法律ではどう定められているか

休職中の従業員に対するボーナスの支給に関する法律の規定は、労働基準法など日本の労働法には明確には定められていません。そのため、各企業の就業規則や労働契約で定められた条件に基づき、ボーナスを支給することになります。

休職中のボーナス支給、就業規則での規定例

実際のボーナス支給の判断は、以下のような就業規則の内容に基づくことが一般的です。

・支給月:7月、12月
・支給の対象者:支給日に在籍する者
・対象期間: 7月支給分:前年12月1日~5月31日
      12月支給分:6月1日~11月30日
・支給額の基準:会社の業績や本人の勤務成績等を勘案


休職中のボーナス算定事例:4月1日以降休職している従業員の場合

上記の規定例にもとに、4月1日以降休職している従業員の7月のボーナス計算では、以下のように考慮します。

・支給の対象:休職中でも在籍しているため、対象になると考えられる。

・対象期間:4月1日~5月31日が対象外となり、その他の期間(前年12月1日~3月31日)が対象となる。

・支給額の計算:会社の業績や本人の評価を基にした通常の支給額から対象外期間の分を控除する。


就業規則におけるボーナス支給の明確な規定がない場合、従業員との間でトラブルが生じる可能性があるため、事前に明確なルールを設定しておくことが推奨されます。

3.休職中に給与を支給するメリットとデメリット

一般的には、休職中に給与を支給する企業は少ないですが、従業員思いの社長で福利厚生的な考えから休職中も給与を支給しているケースがあります。このような対応は従業員に対するケアとして評価される一方で、企業の財務に影響を及ぼすことも考慮する必要があります。

休職中の給与支給がもたらす社員への影響

休職中の従業員への給与支給は、従業員に安心感を提供し、企業への忠誠心を高める可能性があります。しかし、企業の財務状況によっては、給与支給が企業の経済的負担を増加させることも考慮する必要があります。

休職中に給与を支給すると傷病手当金に影響する

休職中の従業員が傷病手当金の受給資格を持っている場合、企業が給与を支給することでその受給資に影響を受けることがあります。

傷病手当金は通常、給与の一部(標準報酬月額の3分の2)を補填する制度であり、給与の全額支給がある場合には受給できない場合があります。そのため、企業は給与支給の際に、せっかくの傷病手当金が減額される
という点も含めて慎重に検討する必要があります。

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4.経営者として知っておくべきポイント

経営者として、休職中の従業員に対する給与やボーナスの取り扱いについて正しく理解し、適切な判断を下すことが重要です。これには、法律的な側面だけでなく、人事管理の観点からの検討も含まれます。

休職中に給与を支給している経営者へ、社労士からのアドバイス

社会保険労務士として、休職中の従業員に対する給与やボーナスの支給についてのアドバイスをいくつか提供します。

まず、ボーナスは傷病手当金とは無関係であり、給与の代わりに賞与を支給する方が、同じ額を支給する場合、本人にとって実入りが多くなります。ただし、年に4回以上のボーナスを支給する場合は、健康保険上で報酬扱いとなり、傷病手当金に影響を与える可能性があるので注意が必要です。

休職中の従業員に給与を支給する代わりに、休職保険などの民間保険を活用する方法もあります。これは、休職中に給付金を受けることができる制度で、会社の負担を軽減しつつ、従業員にとっても収入を確保する手段となり得ます。このように、民間保険を利用することで、休職中の従業員に対する経済的なサポートを効果的に行うことが可能です。


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トラブル回避のための実務ノウハウ

人事・労務管理におけるトラブルを回避するためには、就業規則の明確化や従業員とのコミュニケーションが鍵となります。休職中の従業員への給与やボーナスの取り扱いに関しても、透明性と公平性を保つことが大切です。また、問題が発生した際の迅速かつ適切な対応が、企業の信頼性を高めることに繋がります。

まとめ

休職中の従業員への給与やボーナスの支給は、経営者にとって重要な判断事項です。法律では明確な規定がないため、企業の方針や就業規則に基づく裁量が重要となります。給与支給のメリットとして従業員の忠誠心の向上がありますが、財務負担の増加や傷病手当金が減額される影響も考慮する必要があります。
休職中に給与を支給している場合、代替としてボーナス(賞与)の支給や民間保険を活用することで、企業の負担を軽減し、従業員にとって収入を確保する方法も検討できます。



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