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休職中の従業員の社会保険料、免除できるのか?経営者の対応策は?

休職中で給料が無く、傷病手当金を受けている従業員は、社会保険料が免除されるのでしょうか?残念ながら「No」です。ではいくらに減額なるのか?残念ながら免除も減額もされません。会社は従業員の社会保険料を納め、従業員負担分は本人から回収する必要があります。でも、どうやって回収するのか?これらの疑問について社労士が解説します。

休職中の社会保険料: 免除の誤解を解明

従業員が休職する際、多くの中小企業経営者や人事労務担当者が直面するのが社会保険料の取り扱いです。休職という特別な状況下での社会保険料は、従業員だけでなく会社にとっても頭の痛い問題であり、その対応には深い洞察と正確な情報が求められます。

産前産後休業中や育児休業中の社会保険料が免除となるだけに、「休職中の社会保険料は免除されるのでは?」という疑問や期待を持つ経営者も少なくありません。しかし、これは大きな誤解であり、実際のところ、休職中でも社会保険料の支払い義務は継続します。この事実は、経営戦略を練る際や従業員への正しい情報提供において、非常に重要なポイントとなります。

このセクションでは、休職中の社会保険料に関する誤解を解明し、その背後にある法的な理由や現実を明らかにしていきます。具体的には、休職中の社会保険料がなぜ免除されないのか、免除されない理由とその影響、そして経営者や人事労務担当者が知っておくべき重要な情報について詳しく解説します。

社会保険料の免除に関する誤解を解きながら、経営者が適切な労務管理を行い、従業員との信頼関係を維持するための知識と戦略を提供します。休職中の社会保険料の取り扱いは、会社の財務に直接影響を及ぼすだけでなく、従業員の福利厚生や労働者の権利にも深く関わる問題です。正しい理解と適切な対応が、企業の健全な運営と従業員の安心につながるのです。

免除されない現実: 休職中の社会保険料の真実

休職中の社会保険料に関して、多くの経営者や人事労務担当者が抱える疑問や誤解があります。その一つが、「休職中は社会保険料が免除される」というものです。しかしこれは、大きな誤解であることを明確にしておきたいと思います。

休職中の従業員がいる場合、その従業員の社会保険料は免除されません。健康保険、厚生年金保険料、そして雇用保険は、休職期間中も原則として支払い義務が発生します。これは、従業員が労働をしていない期間であっても、保険の「被保険者」の資格が継続するためです。もちろん、休職の理由や期間、会社の規定によって、細かな違いはありますが、基本的な原則としては変わりません。

この事実に直面した時、経営者や人事担当者は「なぜ?」と疑問に思うかもしれません。その答えは、社会保険制度の根本的な目的にあります。社会保険は、被保険者が病気、ケガ、出産、老後などで働けなくなった際の生活を守るためのものです。そのため、従業員が一時的に働けない状態であっても、その保護を継続する必要があるのです。

また、会社としては、休職中の従業員に給与を支給していない場合、その社会保険料の従業員負担分を給与から差し引くことができません。しかし、これは従業員が保険料を支払う義務を免れたことを意味するものではありません。法律では、従業員負担分の社会保険料は本人の賃金から天引きすることが原則とされており、給与がない場合は、その他の方法で回収する必要があります。

このように、休職中の社会保険料が免除されない現実は、多くの経営者にとって厳しいものかもしれません。しかし、これは従業員を守り、事業の継続性を保つための重要な投資とも言えるのです。

なぜ免除されないのか: 法的背景の解説

休職中も社会保険料の免除がないのは、なぜなのでしょうか。この疑問に答えるためには、日本の社会保険制度の法的背景を理解する必要があります。

日本の社会保険制度は、全ての労働者が一定の安全保障を受けられるように設計されています。この制度の下では、労働者は健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの社会保険に加入し、これによって病気やケガ、失業などのリスクから保護されます。

ここで重要なのは、「被保険者資格」です。一度社会保険に加入すると、労働者は「被保険者」として様々な保障を受ける資格を得ます。この資格は、労働者が働いている間だけでなく、一定の条件下で休職中も継続されます。つまり、休職中であっても、社会保険の保障を受ける「被保険者」としての立場は変わらないのです。

また、社会保険料は、被保険者が受ける保障の「対価」として機能します。これは、保険料を支払うことで、健康保険の医療費補助や厚生年金の年金給付、雇用保険の失業手当など、社会保険が提供する各種の給付を受ける権利を得るためのものです。そのため、働いていない期間があっても、その権利を保持するためには保険料の支払いが必要とされるのです。


更に、社会保険料の計算基準となるのは、従業員の「標準報酬月額」です。これは、毎月一定の基準となる報酬額で、従業員の給与が変動しても、この標準報酬月額はすぐには変わりません。たとえ従業員が休職により給与を受け取っていない場合でも、標準報酬月額に基づいて社会保険料が計算され、従業員だけでなく会社にも支払い義務が発生します。

雇用保険料は、その月の給与が基準になるので、休職中(給与無し)はかかりません。社会保険料はこのような「標準報酬月額」という基準をとっているため、給与が無い月も定額の社会保険料が発生します。このあたりも誤解を招く要因だと思います。

休職中の社会保険料が免除されない理由を法的に解説すると、以下の3点が挙げられます。

「被保険者資格の継続」:
労働者は、一定の条件を満たしていれば、働いていない期間も含めて被保険者としての資格を維持します。この資格がある限り、社会保険の保障を享受する権利があり、それに伴う保険料の支払い義務が生じます。

「標準報酬月額の固定」:
社会保険料の計算には、従業員の給与ではなく、一定期間の平均給与に基づく「標準報酬月額」が使用されます。給与が無い期間でも、この月額が基準となるため、社会保険料の額は変わらないのです。

「社会的保障の原則」:
社会保険制度は、全労働者に対する最低限の生活保障を目的としています。そのため、働いていない期間であっても、その保障を受けるためには、社会保険料の支払いが必須となるのです。

これらの理由から、休職中でも社会保険料の支払いは免除されず、従業員と会社双方にその負担が求められることになります。このシステムは、労働者の社会的安全を保障するためのものであり、一見すると負担に感じられるかもしれませんが、長期的に見れば従業員とその家族の生活を守る大切な仕組みと言えるでしょう。

休職中でも変わらない支払い義務: 経営者が知るべきこと

経営者や人事労務担当者が抱える複雑な問題の一つが、休職中の従業員に関連する社会保険料の支払いです。多くの場合、従業員が職場を離れている間も、企業は健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険料の支払い義務を負い続けます。この事実は、特に中小企業にとっては、財務管理やキャッシュフローの計画に重要な影響を与える可能性があります。

なぜ、休職中も社会保険料が減額されないのか?

休職中の従業員に関して、給与がゼロになるという事実に直面して、多くの経営者や人事担当者が首を傾げるのが、なぜ社会保険料が減額されないのか、という疑問です。ここで、この複雑な問題に光を当て、実際のメカニズムを解明しましょう。

社会保険料の計算には、「標準報酬月額」という概念が用いられます。これは、従業員の平均的な月収を基にした金額で、保険料の基準となります。では、給与が大幅に減少したり、休職によって給与がゼロになった場合、標準報酬月額はどのように影響を受けるのでしょうか?

ここで重要なのが、社会保険の標準報酬の改定システムです。このシステムには主に2つのタイプがあります。

1つ目は「随時改定(月額変更)」です。
これは、従業員の報酬が昇給や降給などで大幅に変動した場合に、標準報酬月額をその都度調整するシステムです。しかし、この随時改定が行われるためには、以下の3つの条件が全て満たされなければなりません。

(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があったこと。
(2)その変動によって標準報酬月額に2等級以上の差が生じたこと。
(3)3カ月とも支払基礎日数が17日以上であること。


この3つの条件が揃わなければ、標準報酬月額の随時改定は行われません。特に休職中は、支払基礎日数が0日になるため、標準報酬月額の随時改定が発生しないのです。

2つ目は「定時決定(算定基礎)」です。
これは年1回、4月、5月、6月の3カ月間の報酬総額に基づいて、標準報酬月額を決定するシステムです。しかし、こちらも支払基礎日数が17日以上であることが求められます。
もし3カ月全てで支払基礎日数が17日未満の場合、標準報酬月額は従前のままとなります。

これらの制度のもと、休職中の従業員の場合、報酬がゼロであっても、標準報酬月額の改定が行われない条件が設けられているのです。

休職前と変わらない: 社会保険料の継続的な負担

休職中の従業員に対する社会保険料の扱いは、基本的には休職前と変わりません。従業員が休職している間も、企業はその社会保険料を支払い続けなければならないのです。

ここで重要なのは、社会保険制度は「被保険者」の概念に基づいており、一度被保険者となった従業員は、特定の条件下では、労働契約が継続している限り、その資格を保持し続けます。このため、従業員が一時的に職場を離れている間も、彼らは引き続き各種の社会保険に加入し、それに伴う保険料の支払いが求められるのです。

また、給与が支払われない休職中でも、社会保険料は「標準報酬月額」に基づいて計算されるため、従業員が受け取る給与の額とは直接関係がありません。この標準報酬月額は、従業員の過去数ヶ月間の平均給与に基づいており、休職前と同様の額が基準となるため、休職中の社会保険料も変わらないのです。

この継続的な負担は、予期せぬ出費や企業の財務計画に影響を与える可能性があるため、経営者はこの点を十分に理解し、適切な対策を講じる必要があります。

企業の実質的なコスト: 従業員がいなくても発生する経費

休職中の社会保険料が企業にもたらすもう一つの影響は、実質的なコストの増加です。従業員が職場を離れている間、彼らの業務は停止または他の従業員に引き継がれるかもしれませんが、社会保険料の支払いは継続します。これは、実際には従業員を雇用していない期間にも関わらず、企業が負担しなければならない固定コストとなります。

特に、中小企業にとっては、このような固定コストは重大な財務上の負担となる可能性があります。企業が成長し、従業員が増えるにつれて、休職による社会保険料のコストも増大することが予想されます。このため、経営者は、従業員の福利厚生プログラムや休職のルールを策定する際に、これらのコストを考慮に入れる必要があります。

加えて、従業員が休職から復帰した後も、社会保険料の調整が必要になる場合があります。従業員の給与が休職前と同じであれば問題ありませんが、給与が減少した場合、特に長期休職からの復帰の際には、新たな「標準報酬月額」の計算が必要となります。この過程は、人事や経理部門に追加の作業を要求する可能性があり、企業の運営コストに影響を与えるかもしれません。

結論として、休職中の従業員に関連する社会保険料の支払いは、予想外の出費や財務計画の見直しを余儀なくされる重要な問題です。経営者は、この問題を深刻に受け止め、従業員の福利厚生や労働条件、そして企業の財務健全性を維持するための適切な対策を講じるべきです。休職や社会保険料の取り扱いに関する最新の情報を得ることで、企業は将来にわたって従業員とともに健全な成長を遂げることができるでしょう。

従業員負担分の建て替えと徴収: スムーズなプロセスの確立

休職中の従業員に対する社会保険料の取り扱いは、経営者にとって複雑でデリケートな課題です。ここでは、従業員の社会保険料の建て替えから徴収に至るまでのプロセスを、法的枠組みや人事労務の観点から解説します。このプロセスをスムーズに進め、会社と従業員双方の負担を軽減するためのポイントを抑えましょう。

建て替えから徴収へ: 従業員からの社会保険料の回収方法

休職中の社会保険料は、従業員だけでなく会社にとっても重要な経費です。この負担を適切に管理し、従業員が職場に復帰した際に円滑な徴収を行うためには、以下の方法が考えられます。

(1)傷病手当金を介した控除:
休職中の従業員が傷病手当金を受給資格者である場合、傷病手当金を会社が受け取り、そこから社会保険料を差し引いて従業員に支払います。これには、傷病手当金申請書に会社を受取代理人として記入し、従業員の同意を得る必要があります。また、本来は本人が受け取る傷病手当金を、社会保険料の建て替え払いをしているからといって一旦会社が受け取ることに対しての本人の感情も考慮する必要があります。

(2)直接請求による支払い:
会社から従業員に直接社会保険料の請求書を送り、指定期日までの支払いを求めます。この方法は、従業員に対する明確な通知と支払いの督促が必要です。社会保険料がかかる以上は支給がゼロでも給与明細の発行は必要になるので、給与明細発送時に請求書を送ると良いでしょう。

(3)会社による立て替え支払い:
会社が社会保険料を立て替え、従業員が職場に復帰した際にその分を徴収します。この方法は、従業員の負担を一時的に軽減できますが、従業員が復職しない場合のリスクも考慮する必要があります。

(4)賞与からの相殺:
従業員が復職した際の賞与から、休職中に立て替えた社会保険料を控除する方法です。この方法も、従業員が復職するとは限らないためリスクを伴います。

(5)退職金からの相殺:
退職金が支給される従業員の場合、退職金から社会保険料を控除する方法です。しかし、全ての従業員が退職金を受け取るわけではないので、この方法が適用できるケースは限られます。


これらの方法には一長一短がありますが、特に方法(2)の直接請求による支払いが、トラブルを避ける上で比較的安全な選択肢と言えます。しかし、会社側の管理負担は確実に増えますので、実際に採用する際には、社内のルール作りと従業員との明確な合意が重要です。

また、いずれの方法を選択する場合でも、法律や社内規定に則った適切な手続きを踏むことが求められます。これらの方法を採用する際には、従業員との事前のコミュニケーションが重要です。特に、社会保険料の支払い方法や期間、立て替えの条件など、従業員に十分な説明を行い、理解と合意を得る必要があります。

法的な枠組みと対話: 従業員とのコミュニケーションの取り方

社会保険料の建て替えや徴収は、従業員との信頼関係を維持しながら行う必要があります。以下に、効果的なコミュニケーションのための要点を示します。

(1)法的知識の確認:
社会保険料の徴収に関する法的な基礎知識を持つことが第一歩です。これには、労働法、社会保険法、個人情報保護法など、関連する法律の理解が含まれます。

(2)対話の準備:
従業員との対話の前に、伝えるべきポイントや法的根拠、予想される質問への回答を準備します。感情を交えず、事実に基づいて情報を提供することが重要です。

(3)透明性の確保:
徴収方法、期間、金額など、従業員に伝えるすべての情報は透明であるべきです。不明瞭な点があると、従業員の不信や不安を招きかねません。

(4)柔軟性の保持:
従業員の状況に応じて、支払い計画の柔軟な見直しが求められることがあります。法的な枠組みの中で、従業員の事情を尊重し、できる限りの配慮をすることが大切です。

記録の維持: 従業員とのすべてのコミュニケーションは記録し、必要に応じて参照できるようにしておくべきです。これにより、将来的な誤解やトラブルを防ぐことができます。

フォローアップ: コミュニケーションは一度きりではありません。定期的なフォローアップを通じて、従業員の状況の変化や支払い状況を把握し、必要に応じて計画の見直しや追加のサポートを提供することが重要です。

従業員からの社会保険料の建て替えや徴収は、法的な知識と対人スキルが求められるデリケートなプロセスです。しかし、適切な準備とコミュニケーションによって、このプロセスを円滑に進め、会社と従業員の双方にとって最良の結果を得ることができます。重要なのは、透明性、公正さ、そして従業員の理解と協力を得るための努力です。それにより、組織全体の信頼と結束を強化することができるのです。

まとめ

休職中の従業員に対する社会保険料の取り扱いは、経営者にとって難解な問題であり、適切な知識と対策が必要です。免除の可能性、支払い義務の継続、そして従業員からの社会保険料の回収方法について、法的枠組みを理解し、従業員との透明で公正なコミュニケーションを図ることが重要です。これにより、会社と従業員の信頼関係を維持しながら、経営の安定と従業員の福利厚生の両立が可能となります。常に最新の情報を参照し、変化する社会保険制度に柔軟に対応することが、この複雑な問題を効果的に管理する鍵となります。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。




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