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休職期間の設定で悩む経営者へ:最大期間(上限)の決め方を社労士が解説

休職期間の設定は、中小企業にとって重要な経営判断の一つです。長期に設定するリスクと短期すぎる問題点を考慮しながら、他社の事例や実際に休職した従業員が復職するまでの期間を参考にすることが大切です。企業は、従業員の福利厚生を守りつつ、経営上のバランスを取るための適切な休職期間を見つける必要があります。

この記事では、中小企業が休職期間をどのように設定し、管理すべきかについて解説します。休職期間の長短に伴うリスクと問題点、他社の事例や実際の復職データを踏まえた上で、柔軟かつ実用的な休職期間の設定方法を提供します。これにより、企業は従業員の福利厚生と経営のバランスを適切に保つことができるでしょう。

1.休職の基本 - 中小企業社長へのガイド

中小企業の社長の皆さん、従業員が休職を必要とする場合、どのように対応しますか?休職制度は従業員が一時的に仕事を離れる必要がある際に重要な役割を果たします。この制度を理解し、適切に運用することは、社員の福利厚生を保護するとともに、企業運営にも影響を及ぼします。

休職制度の運用には、従業員の健康や家族の状況、職場環境の維持など多くの要素が関わります。中小企業では特に、一人ひとりの従業員が重要な役割を担っていることが多いため、休職による影響を最小限に抑えるための工夫が求められます。

このガイドでは、休職の基本的な定義、欠勤との違い、労働法における休職の位置づけなどを明確にし、中小企業の社長が休職制度を理解し、適切に運用するためのポイントを解説します。従業員が安心して療養に専念できる環境を整えることは、企業の持続的な成長にも寄与します。

休職って何?その必要性を解説

休職とは、従業員が一定期間、仕事を離れること会社がみとめることを意味します。これは、従業員が健康問題や家族の事情など、個人的な理由で職場を離れる必要がある場合に適用される制度です。中小企業の社長として、休職制度を理解し、適切に対応することは従業員の福利厚生を高める上で重要です。

休職制度は従業員に安心感を提供し、復職後も継続して勤務してもらうための基盤を築くのに役立ちます。たとえば、うつ病や怪我などで長期間の療養が必要な従業員に対して、休職を提供することで、彼らが回復し職場に戻るまでの時間を確保できます。これは、従業員の健康と職業生活のバランスを取るうえで欠かせない要素です。

休職と欠勤の違いを明確に

休職と欠勤は、よく似ているように見えますが、実際には大きな違いがあります。欠勤は従業員が短期間、仕事を休むことを指し、主に病気や個人的な理由での休みがこれにあたります。

欠勤の場合、労働義務があるにもかかわらず、従業員が仕事を行わない状態です。一方、休職はより長期にわたり、従業員が仕事から離れる必要がある場合に適用されます。たとえば、重い病気の治療や家族の介護で数ヶ月以上仕事を休む必要がある場合などが該当します。

休職は従業員の労働義務が免除され、この期間は療養に専念してくださいという期間になります。これに対し、欠勤は短期間の不在に過ぎず、労働義務が免除されるわけではありません。中小企業の社長としてこれらの違いを理解し、従業員の状況に応じて適切な対応を取ることが重要です。

労働法と休職制度の位置づけ

労働法では、休職制度の詳細については明確に定められていません。これは、休職に関する具体的な条件や期間を、企業が独自に定める余地を残すためです。中小企業の社長は、従業員の状況や企業のニーズに合わせて、休職制度を設計する必要があります。

例えば、就業規則に休職に関する規定を設けることで、休職の申請方法、必要な書類(例:医師の診断書)、休職期間の最大限度、復職に関する手続きなどを明確にすることができます。これにより、従業員が休職を申し出た際の判断基準が明確になり、企業側としても適切な対応を取りやすくなります。

休職期間中の従業員の状況に応じて、健康保険や傷病手当金の支給、給与の扱いなどを考慮することも重要です。これは、休職期間中の従業員の経済的負担を軽減し、企業としても法的義務を果たすために必要な措置です。

以上のように、休職制度は中小企業においても重要な役割を果たします。社長として従業員の健康と福利厚生を守るために、休職制度を適切に理解し、運用することが求められます。

2.休職期間設定のバランス - 経営者にとっての挑戦

休職期間の設定は、中小企業にとって複雑な問題です。従業員が安心して療養に専念できる環境を提供する一方で、企業運営の安定も考慮する必要があります。このバランスをどのように取るかは、経営者の手腕が問われるところです。

休職期間の設定が企業に及ぼす影響

休職期間の適切な設定は、従業員の健康と福利厚生を守る上で重要です。例えば、従業員がうつ病などのメンタルヘルスの問題や重い病気に直面した場合、適切な休職期間を設けることで、彼らが安心して治療に専念し、復帰後も仕事に貢献できるようになります。また、従業員が安心して働ける環境を提供することは、企業のブランド価値を高め、優秀な人材の確保にも繋がります。

休職期間を長期にすることが企業に及ぼすリスク

休職期間が長期にわたる場合、企業には様々なリスクが生じます。長期間の休職によって、その従業員の業務に空白が生じ、他の従業員に対する負担の増加が懸念されます。これは、残された従業員の仕事量が増加し、結果として職場全体の業務効率や士気に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、休職中の社会保険料の企業負担が続くことは、経営上の負担となります。休職者がいるにもかかわらず、社会保険料を企業が負担し続けなければならないため、経営における財務的な負担が増大します。

さらに、代替人材を確保することで生じる問題も考慮する必要があります。休職者が職場に復帰した際に、人員過剰となるリスクがあります。この点は、休職者が戻ってきた時に余分な人員が生じる可能性を意味しており、休職期間の設定において重要な検討事項です。

これらのリスクを考慮し、休職期間を決定する際には慎重な検討が必要です。休職期間の設定は、従業員の福利厚生だけでなく、企業の経営戦略にも影響を与えるため、経営者としての洞察とバランス感覚が求められます。

休職期間が短いことによる問題点

一方で、休職期間を短く設定すことによる問題点もあります。

医師の診断書によると、従業員が2~3か月間の静養を必要とするケースは一般的です。休職期間をこれよりも短く設定すると、復職の可能性があるにもかかわらず、貴重な人材を失うリスクが生じます。

また、従業員が十分な治療期間を確保できず、健康状態が完全に回復しないまま職場復帰することも考えられます。これは、従業員の健康回復を妨げるだけでなく、復帰後の業務効率や職場の雰囲気に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、従業員が再び休職する必要が生じると、企業は経営上の課題に直面することになります。

さらに、解雇予告との関連性も考慮する必要があります。
企業が従業員を解雇する際には、少なくとも30日前に解雇予告を行う必要があります(または解雇予告手当の支払いが必要です)。
休職期間が終了しても従業員が職場復帰できない場合、一般的には自然退職という流れになりますが、休職期間を30日以下に設定した場合、本人に責任のある解雇予告期間を下回ることになり、これは法的に無効とされる可能性があります。

3.企業の平均的な休職期間とは

自社の休職期間の上限を設定する際には、他社の事例を参考にすることが一つの方法です。企業ごとに異なる休職期間の設定は、従業員の健康や福利厚生の確保、および企業運営の安定性に影響を与える重要な要素です。特に、企業規模によって休職期間の設定に差があるため、他社のデータを参考にすることで、自社に適した休職期間のガイドラインを設けることができます。

病気休職制度のある企業の割合

日本の企業における休職期間の設定は企業規模によって大きく異なります。「独立行政法人労働政策研究・研修機構 調査シリーズNo.180(企業調査)」によると、企業全体で病気による休職制度を有する割合は65.6%です。

特に、正社員が多い企業ほど休職制度を設ける傾向があり、1000人以上の企業では95.2%に達します。これは、大企業ほど従業員の福利厚生に重点を置いていることを示しています。小規模企業の場合、休職制度を有する割合はやや低く、10~29人規模の企業では58.0%です。これらのデータは、企業の休職制度設定に関する実態を反映しています。


■病気による休職制度を有する割合(正社員規模別)
・企業全体:65.6%
・10~29人:58.0%
・30~49人:72.5%
・50~99人:80.4%
・100 ~299人:88.1%
・300 ~999人:91.8%
・1000人以上:95.2%

独立行政法人労働政策研究・研修機構 「調査シリーズNo.181」


小規模企業の休職期間:最大(上限)はどれくらい?

病気による休職期間の設定について、企業の規模が大きくなるほど休職期間が長くなる傾向があります。全体では、3ヶ月以上から3年までの期間が約60%を占めています。

特に小規模企業では、休職期間の設定に様々な課題があり、正社員が29名以下の企業の中には、休職期間を3ヶ月以内に設定しているところも約20%存在します。これは、小規模企業の限られた経営資源や独特の環境が影響していると考えられ、企業の実情に合わせた柔軟な対応が求められます。

■病気による休職期間の上限

【企業全体】
・3カ月まで:15.8%
・3カ月超~6か月:13.9%
・6か月超~1年:19%
・1年超~3年:26.7%
・3年超:1.8%

【正社員規模29人まで】
・3カ月まで:19.7%
・3カ月超~6か月:15.4%
・6か月超~1年:18.5%
・1年超~3年:19%
・3年超:1.1%

独立行政法人労働政策研究・研修機構 「調査シリーズNo.181」

4.病気による実際の休職期間:職場復帰するまでの期間

自社の休職期間の上限を設定する際には、他社の事例だけでなく、実際に使われた休職期間も重要な参考資料となります。

病気による休職期間は、従業員の病状や治療の進行に応じて様々であり、一般的には「1ヶ月程度」が最も多いパターンです。しかし、病状や治療の必要性によっては、より長期間の休職が必要な場合もあります。従業員の健康と福利厚生を考慮しつつ、企業の運営上の課題とのバランスを見極めることが求められます。

一般的な病気休職の期間:3か月以内が大半

病気による休職期間の実際は、病状や治療の必要性に応じて様々です。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、「1ヶ月程度」の休職が31.5%で最も多く、次いで「2週間程度」が26.3%、「2ヶ月程度」が13.6%と続きます。これらのデータは、病気休職の一般的な期間を示しており、多くの場合、3ヶ月以下の短期間で復帰するケースが80.8%と大半を占めています。

■病気による実際の休職期間
・2週間程度:26.3%
・1ヵ月程度:31.5%
・2ヵ月程度:13.6%
・3ヵ月程度:が9.4%
・4~6ヵ月程度:7.9%
・7~11ヵ月程度:3.1%
・1年程度:2.7%

独立行政法人労働政策研究・研修機構 「調査シリーズNo.180」

病気休職と従業員の福利厚生

病気休職は従業員にとって重要な福利厚生の一部です。短期間であっても、必要に応じて休職が可能な制度は、従業員の健康と安心を支えます。企業は、従業員の早期の健康回復と職場復帰を支援することで、長期的な業務効率と職場環境の改善に寄与できるのです。

病気による休職期間の具体的な統計は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「調査シリーズNo.180」で詳しく紹介されています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構 「調査シリーズNo.180」

5.休職期間:最大(上限)の設定方法

休職期間の最大限の設定方法についての記事では、企業が休職期間をどのように設定するべきかについて考察します。休職期間の設定は、従業員の健康や福利厚生を考慮しつつ、企業の運営上のニーズにも適応する必要があります。この記事では、効果的な休職期間の設定方法と、それが従業員と企業双方にもたらす利点に焦点を当てます。

休職期間の上限の決め方

休職期間の上限を設定する際には、従業員の健康状態や企業の運営状況を総合的に考慮することが重要です。休職期間を長く設定することによるリスクや短すぎることによって生じる問題点を考慮しながら、企業に適した休職期間の上限を定めます。

実際の事例から学ぶ休職期間の設定

休職期間の上限を設定する際には、他社の事例や実際に使われた休職期間を参考にすると良いでしょう。特に同規模や同業種の企業の取り組みを調査することで、自社に適用可能な点を見つけることができます。

実際、多くの企業では休職期間の上限を3カ月から3年と設定しており、使われた休職期間の大部分は3カ月以内に収まっています。これらのデータは、休職期間設定において参考になるでしょう。

まとめ:御社の休職期間、最大(上限)は何カ月に設定するのがいい?

社労士として、中小企業が休職期間の上限を設定する際に、3カ月から6カ月の範囲を推奨しています。この期間は、一般的な企業の設定範囲であり、従業員が復職可能な実用的な期間です。実際に運用してみて、必要に応じて期間を延長する柔軟な対応が大切です。

ただし、就業規則で休職期間を延ばすことは可能ですが、一度設定した期間を短くすることは困難な点も考慮する必要があります。


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