NEWS お知らせ

休職中の従業員に有給付与は必要?出勤率8割の計算や有給消化を解説!

この記事では、休職中の従業員に対する有給休暇の扱いと管理に関する実務上のガイドラインを提供します。企業が直面する様々なシナリオに基づいて、法的な要件、労働者の権利、そして企業の運営に関連する課題について考察します。読者には、実際の事例と質問への具体的な答えを通じて、休職中の従業員の有給休暇管理に関する実用的な知識と対応策を提供することを目的としています。

1.休職と有給休暇の基本理解

休職と有給休暇は、中小企業経営者にとって重要な労務管理の要素です。これらを適切に理解し運用することは、従業員の健康と権利を保護し、同時に企業の運営を円滑にするために不可欠です。

休職は従業員が一定期間職務を離れることを指し、有給休暇は労働者の権利として労働基準法により保障されています。これらの制度の背後には、労働者の福祉と企業の利益のバランスを取るという大きな目的があります。労働者の権利を尊重しつつ、企業側の責任と義務を果たすためには、これらの制度に関する正しい理解と適切な対応が求められます。

休職の定義と対象

休職とは、従業員が健康問題や家族の事情で一時的に職務を離れることを意味します。中小企業の社長にとって、この理解は重要です。

休職の対象は、通常、病気や怪我、家族の介護など、従業員個人の事情によるものです。休職中の従業員は、一定期間勤務義務が免除されますが、これは従業員の療養や回復を目的としています。休職期間の設定や条件は、企業の就業規則や労働契約によって異なりますが、一般的には医師の診断書などが必要とされることが多いです。

有給休暇の基本ルール

有給休暇は、労働者が報酬を受け取りながら休暇を取得できる権利です。労働基準法により、全ての従業員に付与されます。

一般的に、従業員は入社半年後に最初の有給休暇を獲得し、その後は勤務日数や勤続年数に応じて付与されます。特に中小企業では、有給休暇の管理や付与の基準が大きな課題となります。

有給休暇の付与条件には「出勤率8割」という基準があり、これは従業員が有給休暇を取得するために必要な出勤率を指します。ただし、休職中の出勤日数の計算や扱いには注意が必要です。休職期間は通常、出勤率の計算から除外されるため、有給休暇の付与日数に影響を与えることがあります。

このように、休職と有給休暇の管理は、中小企業の社長にとって重要な労務管理の一部です。適切な知識と理解を持つことで、従業員の権利を守りつつ、企業運営の円滑化を図ることができます。

2.出勤率8割の計算方法

出勤率の計算は、中小企業の社長が従業員の年次有給休暇の付与を判断する上で不可欠な要素です。この計算は、従業員が過去1年間にどれだけ出勤したかを示し、有給休暇の権利を定めます。

特に、出勤日と全労働日の区別は、年次有給休暇の適正な管理において重要なポイントです。従業員の福祉と企業の運営のバランスを考慮し、正確な出勤率の計算を行うことで、従業員に対して公正な権利を保証し、労働基準法に準拠した運営を確保することが可能になります。

出勤率の具体的な計算方法

出勤率の計算は、社長が労務管理の中で直面する重要な課題です。具体的には、労働者の1年間の所定労働日数に対する実際の出勤日数の割合を計算します。

具体的には、以下の計算式で算出します。

 出勤率=出勤日÷全労働日×100(%)


ここでの「出勤日」とは、通常の勤務日のみならず、法律上、出勤とみなされる以下の期間を含みます。言い換えると、以下の期間は、出勤日、全労働日の両方にカウントします。

出勤日としてみなされる期間
(1) 年次有給休暇を取得した期間
(2) 産前産後の休業期間
(3) 育児休業及び介護休業した期間
(4) 業務上の傷病により休業した期間

この計算により、従業員が年次有給休暇を受ける資格があるかどうかを判断します。

出勤日と全労働日:8割出勤の要件を正しく理解する

年次有給休暇の付与基準である「8割出勤」の要件を理解するには、出勤日と全労働日の区別がカギとなります。

育児休業や介護休業など特定の期間は、出勤としてカウントされるため、これらの期間は出勤日と全労働日の両方に含まれます。

しかし、病気等での欠勤は、全労働日には含まれますが出勤日には含まれません。

特に重要なのは、休職期間の扱いです。休職は労働義務の免除を意味するため、出勤日と全労働日のいずれにも含めないのが一般的です。

3.休職中の従業員と有給休暇:経営者の判断基準

休職中の従業員に関しては、出勤日数と総労働日数のいずれも計算から除外されるため、出勤率8割を満たすことが一般的です。しかし、休職中の有給休暇の発生とその利用については、経営者にとって重要な判断が必要です。休職中の従業員が実際に有給休暇を利用できるかどうか、その法的な背景と実務上の対応について検討します。

法的視点:休職中の有給休暇付与のルール

この部分では、休職中の従業員への有給休暇付与に関する法的な側面を詳しく説明します。労働基準法の規定に基づき、休職中の従業員であっても出勤率が8割以上であれば、基準日(有給休暇の付与日・雇入から6か月経過した日から1年毎)になれば、有給休暇は付与されます。

ですが、休職中は労働義務が免除されているため、実際には有給休暇を利用することはできません。
ここで重要なのは、有給休暇は労働義務の免除と給料の保証を目的としていることです。「休職中は有給休暇が付与されるが利用はできない」という点を明確にし、経営者が適切な対応を取れるよう支援します。

社労士の視点:休職中の有給休暇の実務処理

社会保険労務士としての視点から、休職中に付与された有給休暇の実務処理についてアドバイスします。特に、休職中にも関わらず有給休暇の取得を申請されるケースや、有給休暇を使い切って退職する意向を持つ従業員への対応は、企業にとって難しい問題です。

休職の主旨が療養に専念することにあるため、経営者は従業員に対して有給休暇の実質的な利用が不可能であることを適切に説明し、就業規則や法的な基準に基づいた対応を行う必要があります。

4.休職中の有給休暇の消化

休職中の従業員が持つ有給休暇の消化に関しては、企業にとって慎重な管理が求められます。休職中の有給休暇の扱い方、特に復帰に向けた準備が進んでいる際の対応、そして従業員の健康状態や退職意向を考慮した適切な対応が重要です。企業は、法的な要件と企業の方針に基づき、従業員と企業双方の利益を保護するためのバランスをとる必要があります。

休職中の有給休暇の扱い

休職中の従業員への有給休暇の扱いにおいて、経営者はいくつかの重要な点を考慮する必要があります。まず、休職期間中の従業員は労働義務から免除されているため、通常は有給休暇を利用することができません。しかしながら、法律上、出勤率が8割以上ある従業員には原則として有給休暇が付与されるため、これをどのように扱うかが問題となります。

休職からの復帰後、従業員がすぐに完全な勤務体制に戻れないケースも多いです。そのため、休職中に発生した有給休暇は、復職後の緩やかな職場復帰期間に利用できるよう配慮することが望ましいです。

このように有給休暇を活用することで、従業員は復職後の適応期間に必要な休息をとり、徐々に元の勤務状態に戻ることができます。経営者は、休職から復帰する従業員のニーズを考慮し、フレキシブルな対応を行うことが重要です。

有給休暇消化の具体的な注意点

休職中の従業員が有給休暇を消化する場合、具体的な事例として考えられるのは、従業員が休職から復帰する予定日が近づいている場合です。
ここでは、従業員が有給休暇を使い切って退職するために、早期に復職を申請することもあります。

このような状況に対処するために、休職からの復帰を検討する際には、従業員が実際に健康状態で仕事に復帰できるかどうかを慎重に評価することが重要です。安易な復帰判断は、復帰後の健康問題や出勤不良を招くリスクがあります。従業員が出勤せずに有給休暇を使い切って退職するケースも考慮する必要があります。

医師の診断書の提出を求め、必要に応じて会社指定の医師による診断を行うなど、企業としての適切な手順を踏むことが求められます。これにより、従業員と企業双方の利益を保護することができます。

よくある休職と有給休暇に関するQ&A

このセクションでは、休職と有給休暇に関連するよくある質問とその答えをまとめます。休職中の有給休暇の付与、休職中の有給休暇の利用、復帰後の有給休暇の取り扱いなど、実務上の疑問に答えることで、理解を深めることができます。

Q: 休職中の従業員に有給休暇は付与されますか?

A: はい、休職中でも出勤率が8割以上の従業員には原則として有給休暇が付与されます。ただし、休職中は労働義務がないため、実際に有給休暇を利用することはできません。

出勤率は、出勤率の計算は、出勤日数÷全労働日数×100(%)で計算しますが、休職期間は出勤日数と全労働日数のどちらからも除外されます。そのため、休職中の従業員は比較的簡単に8割の出勤率を達成できることになります。

Q: 休職中に有給休暇を利用することは可能ですか?

A: 休職中に有給休暇を利用することは原則としてできません。有給休暇は、通常、従業員がその日の労働義務を免除され、代わりに給料を受け取る制度です。しかし、休職中の従業員はすでに労働義務が免除されているため、追加で有給休暇を利用することは意味を成さないと考えられます。このため、休職中の従業員が有給休暇を利用することは、一般的には認められていません。

Q: 復職後に残っている有給休暇の扱いはどうなりますか?

A: 復職後に残っている有給休暇は通常通り利用可能です。特に、休職からの復帰後には、従業員がすぐに完全な勤務体制に戻れないことが多いため、休職中に発生した有給休暇を復職後の緩やかな職場復帰期間に利用することが望ましいです。

このように有給休暇を活用することで、従業員は復職後の適応期間に必要な休息を取り、徐々に通常の勤務状態に戻ることができます。企業は、復職する従業員のニーズを考慮し、フレキシブルな有給休暇の管理を行うことが重要です。

Q: 休職中に病気が完治し、有給休暇を使って海外旅行に行きたいと申し出た従業員がいます。どう対応すべきですか?

A: 休職中の有給休暇は原則として利用できません。休職の目的が療養であれば、その目的に合致しない利用は認められません。従業員には休職の目的を再確認し、必要に応じて復職後の有給休暇利用を案内することをお勧めします。

Q: 長期休職から復帰した従業員が、復帰後すぐに有給休暇を申請しました。これは許可するべきですか?

A: 復職後に有給休暇を申請する場合、基本的には従業員の申請に基づきます。ただし、復帰前に従業員と計画を立て、業務のスムーズな再開ができるよう調整することが望ましいです。

有給休暇の理由が体調不良などの健康上の問題に関連する場合、従業員の状態を考慮して、必要に応じて再度の休職を検討することも重要です。

まとめ

本記事では、休職中の従業員への有給休暇の付与や利用に関するさまざまな疑問に対して、具体的なガイドラインを提供しました。出勤率の計算方法から復職後の有給休暇の管理まで、実務上の課題に対処するための重要なポイントを詳しく解説しました。これらの情報を活用して、職場での有給休暇管理をより効果的に行うことができれば幸いです。


【関連記事はこちら】

休職期間の設定で悩む経営者へ:最大期間(上限)の決め方を社労士が解説

2回目の休職社員、期間はどう考える?通算規定等、社長のチェックポイント

有給取得率の計算方法:100%を超えるってどんな時?社労士が解説

傷病手当金待期期間中や受給期間中にに有給休暇を取るメリットとデメリットは?

お知らせ一覧に戻る

CONTACT
お問い合わせ

採用・定着・人事労務など
お気軽にご相談ください

※個人の方からのお問い合わせは
 受付しておりません。ご了承下さい。