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有給休暇の消化トラブル解消!新しい方から消える有給の適切な扱い方

多くの企業では有給休暇が前年分から消化されるのが一般的ですが、新しい年度分から先に消化するルールを設定することも可能です。ただし、この方法には注意点があります。この記事では、有給休暇を当年度分から消化する方法とその注意点について、社会保険労務士が解説します。

1. 有給休暇の基本と消化順序の問題点

中小企業の社長さん、こんにちは。社会保険労務士の私から、有給休暇に関する基本的な知識をお伝えします。最近の労働者は有給休暇に対する意識が高まり、100%の有給消化や、退職時に全ての有給を使い切ることが普通になっています。

有給休暇の付与と消化に関しては、労働基準法で日数や条件が規定されていますが、消化の順序に関しては法律で明確に決まっていません。多くの会社では前年度分から消化する方法が一般的ですが、新しい年度分から消化する方法もあります。

今回は、有給休暇について新しい年度分から消化される方法について解説します。

法律による有給休暇の付与基準

有給休暇は労働者にとって重要な権利です。労働基準法では、勤務年数や勤務日数に応じて有給休暇の日数が定められています。

例えば、入社後6か月が経過し、その期間中の出勤率が8割以上であれば、10日の有給が付与されることになります。重要なのは、これが労働者の「権利」であり、会社側はこの権利を尊重し、適切に付与する義務があるという点です。

消化できなかった有給休暇の繰越

では、使われなかった有給休暇はどうなるのか?実は、有給休暇には時効があり、通常、付与された年次有給休暇は2年間有効です。具体的には、次のようなケースが考えられます。

 
・入社:2023年4月1日

・6か月経過:2023年10月1日に10日間の有給休暇付与

・1年6か月経過:2024年10月1日に11日間の有給休暇付与
→ 前年分の残日数は繰り越される

・2年6か月経過:2025年10月1日に12日間の有給休暇付与
→ 2024年分の残日数は繰り越され、2023年分の残日数は時効消滅


つまり、使われなかった有給は2年後に消滅するのです。

ただし、これは原則であり、就業規則で繰り越し期間を延長している場合もあります。会社はこのルールを従業員に明確に伝え、適切な管理を行う必要があります。

消化順序の不明瞭さとその影響

最後に、有給休暇の消化順序の問題です。法律では、どの有給を先に使うかについて明確な規定はありません。

多くの企業では、先に発生した分、つまり繰越分から消化するのが一般的ですが、新しい方(当年発生分)から消化することも可能です。

ここで重要なのは、無用なトラブルを避けるために就業規則に明確に定め、従業員にルールをきちんと説明することです。

2.繰越分と当年度分の有給休暇消化の具体例

有給休暇の管理には、繰越分と当年度分をどのように消化するかが重要です。
ここでは、有給休暇の消化に関して繰越分と当年度分をどう区別し、どのように消化していくかについて、具体的な例を通して解説します。
適切な有給休暇の管理は、従業員の権利を守るとともに、企業運営においても重要なポイントになります。

古い方(前年繰り越し分)から消化するときの具体例

まずは古い方(前年繰り越し分)から消化されるケースから見ていきましょう。
通常、就業規則に特別な定めがない限り、先に付与された有給から消化されると考えられます。一般的なケースです。

2023年4月1日に入社した社員が、1年目5日、2年目5日のみ消化した場合、2025年10月1日には23日の有給休暇を持つことになります。

・入社日: 2023年4月1日

・有給付与: 2023年10月1日に10日
      2024年10月1日に11日

・有給取得::
 2023年10月1日〜2024年9月30日の間に5日間
 → 5日間の有給休暇が次の年に繰越

 2024年10月1日〜2025年9月30日の間に5日間
 →繰り越された5日(前年分)が消化

・結果: 2025年10月1日に23日間の年次有給休暇を保有
(2023年分の10日全消化、2024年分の11日全残、2025年12日発生)

新しい方(当年度分)から消化するときの具体例

では、逆に最新の有給から消化するルールがある場合はどうでしょう?
同じ従業員(2023年4月1日入社)した社員を例に、1年目5日、2年目5日のみ消化した場合、2025年10月1日に保有する有給休暇は18日になります。

・入社日: 2023年4月1日

・有給付与: 2023年10月1日に10日
2024年10月1日に11日
・有給取得::
2023年10月1日〜2024年9月30日の間に5日間
→ 5日間の有給休暇が次の年に繰越
2024年10月1日〜2025年9月30日の間に5日間
→ 今回発生した5日(新しい分)が消化

・結果: 2025年10月1日に18日間の年次有給休暇を保有
(2023年分の残5日は時効消滅、2024年分の6日残、2025年12日発生)


このように、繰越分と当年度分の有給を適切に管理することは、従業員にとっても、企業にとっても重要です。特に中小企業では、こうした細かい管理が見落とされがちですが、従業員の権利を守り、無駄なトラブルを避けるためにも、しっかりとした有給休暇の管理体制を整えることが大切です。

3. 新しい方から有給休暇を消化する際の留意点

今回は、ちょっと変わった有給休暇の消化方法、「新しい方から消化する」というケースに焦点を当てています。この方法は、従業員の有給休暇の消化を効率的に進めるために有用ですが、いくつか注意すべき点があります。これから、その留意点について詳しく見ていきましょう。

労働基準法における消化順序のガイドライン

有給休暇の消化方法、「新しい方から消化する」というケースについて話してみましょう。

労働基準法では、有給休暇の消化順序について明確な規定はありません。
つまり、会社側が自由にルールを設定することができるんです。

ただし、この自由度が高い分、従業員の理解と納得が不可欠になります。

会社ごとの消化順序の決定方法

会社によっては、新しい有給から消化するルールを設けている場合があります。

これは、たとえば有給休暇が多く残っている従業員の場合、新しい有給を先に使ってしまうことで、古い有給が時効にならないようにするためです。

決定する際は、従業員の意見を聞くことや、就業規則に明記することが重要。透明性がカギです!

従業員への透明な説明と適切な対応

最後に、従業員に対する説明です。新しい有給から消化するルールを導入する場合、従業員が納得できるような説明が不可欠。どうしてこのルールが必要なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかをしっかりと伝えましょう。

有給の繰り越しを減らすためなんて理由で導入すると、従業員の理解を得ることができません。例えば、その年に発生した有給休暇は、その年のうちに使って欲しいという社長の想いを伝えた上で、従業員へ理解と協力を求めることで、トラブルを避け、スムーズな運用が可能になりますよ。

4.有給休暇の消化トラブルを防ぐための実務対策

実は、私が相談を受ける内容の中で、有給休暇の消化トラブルは最も多い案件の1つです。ここでは、そんなトラブルを未然に防ぐための実務対策について、具体的な方法や例を交えながらご紹介します。適切な有給管理で、従業員の満足度もアップさせましょう!

有給休暇の管理と記録の重要性

従業員とのトラブルはできる限り避けたいですよね。有給休暇の消化トラブルを避けるためには、有給休暇の日数、消化状況、残日数などをきちんと記録することが非常に重要です。このような記録を管理することで、従業員との誤解を防ぎ、トラブルを避けることができますよ。

従業員とのコミュニケーションの改善

次に、従業員とのコミュニケーションの改善です。有給休暇に関するルールや変更点を定期的に従業員に伝えましょう。また、従業員が有給を取りやすい環境を作ることも大事です。オープンなコミュニケーションを心がけ、従業員の意見や懸念も聞き入れることが重要です。

トラブル回避のための具体的対策と例

最後に、トラブル回避のための具体的対策です。有給休暇の取得を奨励するキャンペーンの実施や、シーズンごとに有給の取得状況をチェックすることが効果的です。

また、有給休暇の取得計画を事前に立てることで、業務の円滑な運営と有給休暇の適切な消化のバランスを取ることが可能です。

職場の雰囲気を良くするためにも、社長が積極的に有給休暇の消化を奨励する姿勢を示すことが大切です。

5.中小企業の社長が取るべき有給休暇管理のステップ

有給休暇管理は従業員の満足度を高める重要な要素です。ここでは、効率的かつ公平な有給休暇の管理方法について、具体的なステップをご紹介します。ポリシーの明確化から効果的な推奨方法、法律遵守まで、一緒に見ていきましょう。

有給休暇ポリシーの明確化

職場の雰囲気を良くし、業務を効果的に進めていくためにも、まずは有給休暇ポリシーを明確にしましょう。
有給休暇ポリシーとは、企業が従業員に対して定める有給休暇に関する規則や方針のことを指します。これには、有給の付与方法、取得のルール、繰り越しや消滅に関する規定などが含まれます。従業員が有給休暇を理解しやすく、公平に取得できるよう、これらのルールを明確にし、従業員に伝えることが大切です。透明なルールで、従業員の信頼を得ましょう。

効果的な有給休暇の推奨と促進

次に、有給休暇の推奨と促進についてです。従業員に有給を取得してもらうために、キャンペーンやインセンティブを考えてみましょう。例えば、定期的に有給取得状況をチェックし、取得を奨励するメールを送るのが効果的です。

経営者としては、有給休暇の管理に頭を悩ませることもあるかもしれません。しかし、積極的に有給の取得を奨励することは、従業員のモチベーションや満足度を高め、結果として企業全体の生産性向上に繋がる重要なステップです。

法律遵守と従業員の満足度のバランス

最後に、法律遵守と従業員の満足度をバランス良く保つことが重要です。労働基準法を守りつつ、従業員が有給を取りやすい環境を作ることで、従業員のモチベーションや満足度を高めましょう。

まとめ

今回は、「新しい方から有給休暇が消える」方法についてお伝えしました。
これにより、有給休暇の繰越しを減少させることが可能ですが、従業員の納得と理解が最も重要です。

就業規則の変更は従業員の同意なしには無効になる可能性がありますし、従業員の心が離れることも懸念されます。

法的に問題がない場合でも、新しい方からの消化方法を採用する会社はまだ少なく、従業員には慎重に説明する必要があります。

有給休暇を適切に消化してもらうための変更であることを伝え、従業員の理解を得る手順を取ることをお薦めします。



当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





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