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社労士が解説する有給休暇の正しい手続き:会社が知っておくべき基本

私は、大阪で社労士事務所を開業し、主に従業員数名から30名程度までの会社の社長に人事労務全般についてのサポートをしています。

ここ数年、年次有給休暇についての相談が増えていることがら、数回にわたり有休について取り上げたいと思います。

「有休って会社にとって損!」という考えをお持ちの経営者の方も多いことでしょう。私自身も社会人になったのは、バブル期の真っ只中。有休とは、病気になった時にやむを得ずに使うものと教えられた世代でもあり、その気持ちはよくわかります。

でも、時代は変わりました。有休は取得して当たり前、そんな意識が一般的になってきています。

であれば、社長ご自身の意識も変えていただき、会社にとっても損しない。プラスになるようにするために、有休についての知識やルールについて最低限持っていただきたいと思います。まずは、有給休暇についての基本をテーマにお話しします。

■有給休暇とは何か

年次有給休暇は、簡単にいうと、仕事を休んでも給料を支給しますよ。だから安心してリフレッシュしてくださいね、という従業員にとっては特別なお休みのことです。

有給休暇の取得は、労働基準法によって規定されています。労働者は、労働基準法に基づいて、一定の勤務期間後に有給休暇を取得する権利があります。また、労働者に有給休暇を取得する機会を与えることは、法律で義務付けられています。

また、有給休暇の付与日数は、入社からの継続勤務年数と所定労働日数(所定労働時間)により、全労働日の8割以上勤務した際に発生します(詳細は上の表参照)。

さらに、2019年4月からは有給休暇の取得が義務化され、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、取得されることが義務付けられました。

会社にとっての有給休暇とは

今度は会社側から考えてみましょう。有給休暇とは、従業員が休んでも給料が発生する日のことです。それでもまだ月給制の人の場合は給料が変わらないので理解しやすいのですが、時給制のパートタイマーの方は、休みの日も給料が加算されてしまいます。その点が理解できないという方の多い理由のような気がします

一方で、適切な休息を取ることは、健康な労働環境を促進し、生産性を向上させるために不可欠ともいわれています。有給休暇を取得することで、労働者はリフレッシュし、ストレスを軽減することができます。

具体的に、有給休暇を取得させることで、会社のどのようなメリットがあるのでしょうか?

有給休暇がもたらすメリットとは

有給休暇は会社にとって損!そう思われがちですが、メリットもあります。
以下に有給休暇の会社にとってのメリットをまとめました。

1.労働者の健康状態の改善
長時間労働やストレスが蓄積されると、体調不良やメンタルヘルスの問題が発生する可能性があります。有給休暇を取得することで、十分な休息を取り、心身のリフレッシュができます。

2.従業員労働者のモチベーションや満足度の向上
仕事とプライベートのバランスを取ることができると、生活に充実感を感じることができます。例えば、お子様の参観日に両親揃って出席することができたらどうでしょう?間違いなく会社への帰属意識が高まり、モチベーションにも影響するのではないでしょうか。

3.生産性の向上
モチベーションの向上と共に、休息することで仕事に集中する力がアップし、効率的な業務が可能になります。

4.人材が集まる
私は、クライアント企業の求人募集もサポートしていますが、有給休暇が取りやすいというのは、応募者の増加にもつながっています。

このように、有給休暇は労働者と企業の双方にとってメリットがある重要な制度です。

会社側としては、これだけのメリットを享受するために、休みの日に給料を支給するという考えをするといかがでしょうか?

■有給休暇の正しい手続きと注意点

有給休暇の取得は、労働者の権利。基本的にはいつ、どのような理由で有給休暇取得の申し出があったとしても、会社は拒否することはできません。
また、正しく使っていけば会社、労働者ともにメリットがある制度ですが、それには何点か注意していただきたい点があります。

有給休暇は事前申請が原則であることを徹底する

1点目として、事前申請が原則であることを徹底していただきたいのです。
就業規則をご確認いただくと、「年次有給休暇は○日前までに会社へ申請すること」となっているかと思います。
有給休暇はいつ取得しても自由ではありますが、定められた日までに申請しないと受け付けません。ということです。

一方で、当日体調不良で休む方には、有給休暇を与えているのではないでしょうか?
当日の有給申請は本来NGで、欠勤(給料無し)とすることもできるのですが、無理に出てきなさいとも言えませんし、やむを得えない理由によって欠勤を有給休暇に振り替えているという手続きになります。

会社には有給休暇を別の日に変更する権利がある

これも就業規則に規定されているかと思います。有給休暇は労働者の権利なので、いつ取得しても拒否することはできません。ただし、その日休まれることによって事業が正常に運営できないという場合は、別に日に変更してください。という権利が会社にはあります。
これを時季変更権といいます。
ただし、時季変更権が認められるには、その日に休まれると困るというだけではなく、経営者側が代替要員の確保その他、四方八方あらゆる手を尽くしても、なお厳しいという高いハードルがあります。
とはいえ、この権利を会社側がもっているということを知っておくことは重要です。

有給休暇の基準日を統一することのデメリット

3点目に、有給休暇を付与する日(基準日)を統一することのデメリットを知っておくということです。
有給休暇の基準日は、雇入れの日から6ヵ月が経過した日。4月1日入社であれば10月1日に10日間の有給休暇が発生します。

従業員数が増えてくると、1人1人の基準日を管理するのが面倒になり、年2回の4月1日と10月1日などに統一することも考えたくなります。
その時の注意点は、法律で定められている6か月よりも不利になってはいけないということ。例えば、3月1日に入社した人の場合、10月1日では7か月になり、法律よりも不利になるので、4月1日に付与しなければならないということです。
仮に、4月に10日間有給休暇を取得して退職するということになった場合、本来支給しなくてよい10日間の給料が発生することになります。

できれば原則通りの6か月で対応していただきたいと思います。

■まとめ:何のための有給休暇なのか?

今回は、有給休暇についての基本をお伝えしました。有給休暇だけではなく、全てに関わるのですが、目的を明確にするということです。
中小企業の経営者にとって、会社は人生そのもの。会社、事業を通して実現したい姿があるかと思います。
その姿に近づくための休暇、というと話が飛躍し過ぎだと言われそうですが…。
それに向かっていくためには、従業員に頑張って成果をあげてもらわないといけません。
でも、頑張って成果をあげるためには、疲れてクタクタの状態ではダメですよね。だからこそ、しっかりと休暇をとってもらうということです。

そのような経営者の想いを日頃からしっかりと伝えていくことが、最も大切だと私は考えています。単に法律通りに運営するというだけでは、「有休って会社にとって損!」の状態になってしまいます。

当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。

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