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有給を休日にあてるのは違法?中小企業社長が知るべき法律の真実

有給を土曜や日曜などの休日にあてることはできないか?社長がそう考えていたとしたら違法の可能性が高いです。逆に、従業員から休日に有給申請があった場合は拒否できるのか?それとも権利だから認めなければならないのか?有給休暇と休日の関係を社労士がくわしく解説します。

1.有給休暇基本ガイド - 休日に有給をあてることの法的視点

社会保険労務士の西野です。今回は、多くの従業員と経営者が疑問に思っている「有給休暇を休日にあてること」に関する法的視点について解説します。

多くの企業では、土日や祝日を休日としていますが、それらの日に有給休暇を充てることは、実は法的に複雑な問題を含んでいます。
法律上、有給休暇は労働者が要求した場合、原則として会社はこれを拒否できない権利です。しかし、労働者が休日に有給休暇を申請することは、法的にどうなのでしょうか?

この記事では、有給休暇の基本概念、休日に有給をあてるケースでの法的解釈、さらに労働法における有給休暇の位置づけについて、わかりやすく解説していきます。それでは、詳細を見ていきましょう。

有給休暇とは:基本的な権利と義務

「有給休暇」と聞くと、何を思い浮かべますか?実は、これは働く人々に与えられた大切な権利の一つです。

有給休暇については労働者が要求した場合、会社はこれを拒否できないと定めています。つまり、休みたいときに休めるのが、有給休暇の基本的なルール。ただし、これには一定の条件があり、使用方法についても会社と従業員の間で認識を合わせる必要があります。

休日に有給をあてるケースの法的解釈

では、「休日に有給をあてる」とはどういうことでしょうか。これは、土曜日や日曜日などの休日に、有給休暇を利用しようとするケースを指します。

しかし、ここで注意が必要です。労働法では、休日は元々労働義務がないため、原則としてこの日に有給を使うことは想定されていません。したがって、休日に有給を「使う」という行為は、法的に認められていない可能性が高いのです。

労働基準法における有給休暇の位置づけ

労働法において、有給休暇は労働者の健康と福祉を守るための重要な制度です。これにより、労働者は必要な休息を取ることができ、長期的な健康維持に寄与します。しかし、その適用にあたっては、会社と従業員間の適切なコミュニケーションが不可欠です。特に、休日に有給をあてる場合は、法的な解釈や会社のルールに十分留意する必要があります。

2.違法か?会社が休日に有給を取らせるシナリオ

社会保険労務士として多くの経営者の相談に乗ってきた経験から言うと、休日に有給休暇を取らせることは、多くの企業で頻繁に起こり得るシナリオです。しかし、このようなケースには法的な問題が伴う可能性があり、慎重な対応が求められます。

経営者として、業務の都合で休日に従業員に有給を取らせたいと考えることは自然なことかもしれません。しかし、法律上は有給休暇は労働者の権利であり、労働者の請求する日に取らせるものです。
会社が一方的に日を指定して有給を取らせることは、違法となる可能性が高いのです。これは休日だからというものではなく、平日であっても同じです。

また、休日は元来労働義務がないため、ここに有給を充てるのは原則として認められていません。

なお、会社主導で有給休暇取得日を指定できるケースとして、次の2つがあります。付与する「計画的付与」は、労働者の福祉や業務効率化のための手段として利用されることがありますが、これには労働者の同意が不可欠です。経営者としては、従業員との十分な合意形成を行い、法律に則った有給休暇の管理を心がける必要があります。

さらに、労働者の権利と会社の責任のバランスを保つことが重要です。有給休暇は労働者の大切な権利であり、経営者としてはこれを尊重しつつ、業務の円滑な運営も考慮する必要があります。適切なコミュニケーションと理解を通じて、法的にも問題のない有給休暇の管理を行うことが、経営者の重要な責務です。

会社が有給取得日を指定できるケース➀:有給休暇の計画的付与(計画年休)

まず、有給休暇の「計画的付与」(または計画年休とも呼ばれます)があります。これは、事業主が1年間の有給休暇の時季をあらかじめ指定する制度で、従業員の福祉の向上と業務の効率化を目的としています。

厚生労働省の調査によると、計画的付与制度を導入している企業では、導入していない企業に比べて有給休暇の平均取得率が8.6%高いとされ、有給休暇取得の促進に有効であることが示されています(平成20年調査)。

しかし、この制度を導入するには、単に会社が一方的に決定するのではなく、労使協定の締結が必要です。また、計画的に指定する日数に加え、従業員が自由に利用できる日数として最低5日以上を残すことが求められます。

会社が有給取得日を指定できるケース②:年5日の有給休暇を取らない従業員

年次有給休暇が10日以上ある労働者に対して、法律では毎年最低5日の有給休暇の取得が義務付けられています。これにより、会社側にも労働者に5日以上の有給休暇を取得させる責任が生じます。

しかし、従業員が自発的に休暇を取らない場合、会社は取得時季を指定する権利があります。この際、労働者の希望を尊重し、その意見を聴取した上で、有給休暇の取得時季を決定することが重要です。

3.休日に有給を申請する社員:法的な対応方法

これは、ある社長からの実際の相談です。
社員Aさんは普段あまり有休を使わないと思っていましたが、ある日突然、休日に有休を請求してきたのです。
社長が「この日はもともと休日だよ。休日に有給って変じゃない?」と問いかけると、
Aさんは「休日に有給を取るのが何が悪いんですか?有給は権利ですよね?」と反論しました。

社長はこの状況に困惑し、法的な観点で自信が持てずに相談してきました。
休日は本来労働義務がないため、有給休暇の取得がそもそも成立しないというのが法的な原則です。しかし、労働者からの強い要望に対して、どのように対応すれば良いのでしょうか?

休日に有給は成立しないので拒否できる

休日に有給を申請する社員に対しては、実は法的に拒否することができます。休日はもともと労働義務がない日なので、有給休暇を取得する理由が成立しません。

従って、社員が休日に有給を申請しても、企業は法的な根拠に基づいてこれを拒むことが妥当です。重要なのは、このような場合には、社員に対して法的な理由を丁寧に説明し、理解を求めることです。

仮に休日の有給申請を認めると、それが買取に当たる可能性があり、別の問題を生じる恐れがあります。

4.休日の有給申請を認めると有給買取の問題が?

休日に有給休暇を申請する社員への対応は、企業にとって複雑な問題です。法的には休日の有給は成立しないとされており、拒否するのが妥当です。
逆に、これを認めることは買取に該当する可能性があります。この記事では、休日に有給を認めるリスク、有給買取の法的問題、そして適切な有給休暇の管理方法について掘り下げていきます。

休日に有給を認めるリスク:有給休暇の買取とみなされる?

休日に有給を認めることは、法的なリスクを伴います。休日は労働義務がない日であり、この日に有給を取得することは原則として成立しません。

休日に有給を認めると、労働義務のない日に給料を支払うことになり、これは実質的に有給休暇の買取とみなされる可能性があると考えられます。

行政通達(昭和30年11月30日 基収第4718号)では、
「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条(年次有給休暇)の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じる、または請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」とされています。

休日の有給休暇が直接的に買取にあたるとはされないものの、リフレッシュという本来の有給休暇の目的から逸脱する可能性があり、与えられた有給休暇の大部分を休日にあてると買取とみなされる可能性があると考えられます。

なお、有給休暇の買取について、次の3つのケースのみ認められています。

有給休暇の買取が例外として認められる3つのケース

有給休暇の買取が認められる3つのケースは以下の通りです:
(1)法律で定められた日数以上の有給休暇:
例えば、入社半年の社員の場合、有給付与日数10日ですが、12日付与していたら、2日分は問題ありません。
(2)消滅時効を過ぎた有給休暇:
結果的に2年の時効が経過して消滅する有給については買取が認められています。
(3)退職時に残った有給休暇:
退職により権利が行使不能になった場合の買取は認められています。

適切な有給休暇の管理方法

ここまでは、有給休暇を休日にあてることについて解説をしましたが、次に重要なのは、企業が日常的に適切な有給休暇の管理を行うことです。この管理には、労働者の権利を尊重し、法律を遵守することが不可欠です。

企業は就業規則や労働時間の管理システムを通じて、有給休暇の取得を適切に管理し、労働者が自由に休暇を取得できる環境を提供することが望ましいです。また、従業員に対して有給休暇の意義や取得方法についての解説を行い、誤解を防ぐ努力も重要です。

5.健全な職場環境のための有給取得推進

会社にとって重要なのは、健全な職場環境を築くことです。この目標を達成するためには、有給休暇の積極的な取得を推進することが不可欠です。従業員が健康でモチベーションを保つことは、生産性の向上に直結し、企業全体の発展に寄与します。

有給取得の推進:健康とモチベーションの維持

有給休暇の積極的な取得は、従業員の健康とモチベーションを維持する上で欠かせません。休息を取ることで、ストレスを軽減し、仕事の効率を高めることができます。企業は、従業員が気軽に休暇を取れるような環境を整えることが重要です。

人材獲得と維持のための有給政策

優秀な人材を惹きつけ、維持するためにも、有給休暇の取得を奨励することが不可欠です。特に最近は、求職者が企業を選ぶ際に有給休暇取得率を重視する傾向があります。充実した休暇制度は従業員の満足度を高め、企業の魅力を向上させます。これは、人材の定着率を高め、生産性の向上にも寄与する重要な政策となります。

労働者の健康と法的義務

従業員の健康を保つことは、企業にとっての法的義務です。適切な休暇制度を設け、有給休暇の取得を促進することで、従業員の仕事とプライベートのバランスを支援し、働きやすい環境を提供することが可能です。これにより、従業員の健康を保ち、企業の全体的な生産性を向上させることができます。

まとめ:違法にならない有給休暇の取り扱い

違法にならない有給休暇の取り扱いには、法律遵守と従業員の権利尊重が不可欠です。中小企業では、有給休暇の適切な管理が重要で、良好な労働環境の実現に向けた努力が求められます。社会保険労務士としては、法律に基づいた管理と、従業員が気軽に休暇を取得できる環境作りが企業の発展に欠かせないとアドバイスします。


当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





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