NEWS お知らせ

基本給のみで良い?残業代、歩合給など有給休暇の給料計算を社労士が解説

有給休暇を取得した時の給料計算、月給制の場合は、月給の固定額を支払えば諸手当も含まれていることになります。でも、残業代(時間外手当)やインセンティブ(歩合給・出来高払い)など変動制の諸手当はどうしていますか?この記事では、有給休暇の給与計算について解説します。

■有給休暇の基本理解

年次有給休暇は、従業員が健康と安全を確保するために重要な制度です。有給休暇を適正に実施することで、労働者のモチベーション向上や生産性の向上が見込ます。

有給休暇は、具体的には、6ヶ月以上継続して勤務し、その間に80%以上出勤した社員に対し、少なくとも10日間の有給休暇を与える義務があります。パートタイマーの場合も、所定労働日数により有給休暇を付与しなければなりません。

【有給休暇の基本についてはこちらで解説しています】

社労士が解説する有給休暇の正しい手続き:会社が知っておくべき基本

■有給休暇時の給与計算

有給休暇を取得した時の給料の計算については、大きく次の3通りあります。

1 通常の賃金から算出する方法
2 平均賃金から算出する方法
3 標準報酬日額から算出する

今回のテーマ、基本給以外の諸手当について、計算に含めるか含めないかは、1つめの通常の賃金から算出する方法を選択している場合に押さえるべきポイントになります。

ちなみに、平均賃金から算出する方法では、平均賃金には通勤手当、皆勤手当、時間外手当を含む全ての手当が対象となります。

標準報酬日額から算出する方法は、標準報酬月額をもとに計算するので、通常の基本給や諸手当は考える必要がありません。

中小企業社長必見!パート・アルバイトの有給休暇給料計算のポイント

■有給休暇「通常の賃金」は基本給のみ?諸手当は対象となるのか?

では、有給休暇取得時の給与計算の際、最も一般的な「通常の賃金」から算出する場合、基本給以外の諸手当、通勤手当、皆勤手当、時間外手当などの扱いはどうなるのでしょうか?
まずは「通常の賃金」とは何かを考えてみましょう。

通常の賃金とは? 有給休暇の計算に含めるかを判断する2つの根拠

有給休暇を取得した際「通常の賃金」から算出する方法を採る場合、就業規則ではこのような規定になっているかと思います。

『年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。』
                      (厚生労働省 モデル就業規則)

とはいえ、通常の賃金とは、具体的にどの手当が当たるのかを法的に定めたものはありません。次の2つの根拠をもとに判断することになります。

1つ目は、法律の条文です。
労働基準法附則第136条では、有給休暇についてこのように定めています。

「使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」

有給休暇を取ることによって、給与面で不利にならないようにするということです。
ざっくりとした表現ですが、その日にいつも通り(所定労働時間)勤務していたとしたら、本来もらえるべき賃金は支払う必要がある。減額するのは適切ではないということです。

2つめは、裁判例です。

ある会社で、有給休暇を取得した際に「皆勤手当」を不支給としました。裁判所の判断は、「実費補償的性格の手当でない限り、年休制度の趣旨に反する」とし、皆勤手当の不支給は不合理としました。

こちらもざっくりとしているのですが、その手当が「実費補償的性格」のものであるかどうか
が判断のポイントになります

固定額の給料・手当は、有給休暇を取ることで減額はできない

そう考えると、基本給以外の営業手当、家族手当、住宅手当、固定残業手当などの手当は、その日の所定労働時間勤務していたらもらえる給料になります。計算から除外するのは適切ではないと考えられます。

やや判断が難しいのは皆勤手当。文字通りの意味では、全て出勤した時の手当という意味になりますが、減額することは有給休暇を取ることで不利な取り扱いをしていることになります。さらに、裁判でも不都合とされていますので、皆勤手当も給料の計算に入れる必要があります。

通勤手当はどうでしょうか?「実費補償的な性格の手当」と言えます。
ですが、定期代相当額で支給している場合、減額することは有給休暇を取得することで不利益な取り扱いをすること当たる可能性があります。通勤手当も含めて支給するのが適切と考えられます。

一方で、出勤した日数によって実費を支払うとしている場合は、まさに「実費補償的な性格の手当」で、有給休暇を取得した時に支払わなくても不利益な取り扱いをしたことにはならないとの判断が妥当でしょう。

以上と簡単にまとめますと、月給の固定額にあたる手当は、欠勤控除せず本来の給与額を満額支給するのが適切となります。

■有給休暇を取得した際、月給の変動額に当たる手当の取扱いは?

月給の固定額に当たる手当は、有給休暇取得の際の給料計算に含めるため、欠勤控除せずにそのまま支給することになります。それだけなら月給制の場合、有給休暇による給与計算はする必要がありません。

では、時間外手当、夜勤手当(深夜手当)、インセンティブという変動的な手当は、有給休暇取得時の給料計算をしなくていいのでしょうか?

残業手当、夜勤手当(深夜手当)

残業手当や夜勤手当(深夜手当)は、その日にいつも通り(所定労働時間)勤務しているだけでは発生しない手当にと考えられます。なので、有給休暇を取得した時も特に計算することなく、本来の月給を減額せずに支給すれば問題ありません。

ただし、その日の所定労働時間が、もともと深夜労働の時間帯に当たる場合は、月給を減額せずに支給するだけでなく、その時間帯分の夜勤手当(深夜手当)をプラスすることになります。

インセンティブ給(歩合給・出来高払い)、有給取得時の計算方法

さらに複雑なのはインセンティブです。インセンティブは、歩合給や出来高払いとも呼ばれています。

インセンティブ(歩合給・出来高払い)は、変動給ではありますが、本来の所定労働時間に勤務している中で発生する手当になります。
月給の固定額を減額せずに支給するだけでは、有給休暇取得日に勤務していたとしたら発生するであろうインセンティブ(歩合給)は支給されないことになってしまいます。インセンティブ(歩合給)に当たる額を計算して給料に加算することになります。

有給休暇を計算する際、インセンティブ(歩合給)はこのように計算します。

■1時間当たりのインセンティブ=その月のインセンティブ÷その月(給与計算期間)の総労働時間

例をあげて計算してみましょう。

有給休暇を取った日が含まれる月(給与計算期間)
・所定労働時間:160時間
・残業時間:40時間
・総労働時間:200時間(160時間+40時間)
・インセンティブ(歩合給):20万円

 1時間当たりのインセンティブ  20万円÷200時間=1,000円


有給休暇を取得した日の所定労働時間が8時間であった場合、本来の月給(減額せずに支給)に、8,000円(1,000円×8時間)のインセンティブを加えた額が有給休暇の給料となります。

■まとめ

有給休暇の計算は、月給制の従業員の場合は、減額せずに支給すればほとんどの場合問題はないのですが、その日の所定労働時間が深夜労働の時間に当たる場合は、深夜手当(夜勤手当)を計算して支給することが必要になります。
さらに複雑なのはインセンティブ(歩合給)です。もし計算に入れていないことが発覚した場合、過去にさかのぼって計算して支給しなければならないだけでなく、会社と従業員との信用・信頼関係にも影響してきます。
今回の記事を参考にしていただけたら幸いです。

当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。




【関連記事はこちら】

社労士が解説する有給休暇の正しい手続き:会社が知っておくべき基本

中小企業社長必見!パート・アルバイトの有給休暇給料計算のポイント

繁忙期でも有給休暇は拒否できない?大阪の社労士が経営者の疑問に回答

お知らせ一覧に戻る

CONTACT
お問い合わせ

採用・定着・人事労務など
お気軽にご相談ください

※個人の方からのお問い合わせは
 受付しておりません。ご了承下さい。