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役員が労働保険(労災保険・雇用保険)に加入できるのはどんな時?社労士がくわしく解説

法人の役員は、原則として労災保険、雇用保険に加入することができません。ですが、労働者性がある(兼務役員)として判断される場合は労災保険、雇用保険に加入することができます。また、労働保険の特別加入制度により中小企業の社長が労災保険に加入することができます。

役員の労災保険・雇用保険の基礎知識

役員として会社を運営している方々にとって、労災保険や雇用保険の存在はご存知かもしれませんが、具体的な内容や役員としての加入条件等は明確にはわかっていない方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、役員であっても労災保険や雇用保険に加入できる場合があります。ですが、役員の加入は従業員とは異なり複雑です。

労災保険や雇用保険は、会社を運営する上でのリスクを軽減し、安心して経営に専念できる大切なものです。特に労災保険は、業務中の事故や病気によるトラブルを防ぐための重要な保険となっています。

理由は、会社の経営に関与する役員であっても、日々の業務の中で事故や病気のリスクはゼロではありません。そのような時に、役員自らが保険の対象となっていれば、安心して業務に取り組むことができます。

具体例として、ある中小企業の代表取締役が、業務中に事故を起こし長期の療養を余儀なくされたケースがありました。役員として労災保険に加入していたおかげで、医療費の補償を受けることができ、経営における大きな負担を軽減することができました。

以上のことから、役員の方々も労災保険・雇用保険の重要性を理解し、適切な保険加入を検討することをおすすめします。

労災保険、雇用保険とは?

労災保険とは、労働者が業務上の事故や病気で傷ついた際に、医療費や休業補償を支給する制度です。一般的には労災と言われていますが、正式には「労働者災害補償保険」といいます。

雇用保険は、労働者が失業した際に給付が受けられる保険制度です。労働者が職を失った時に一定期間の給付を受けることができ、再就職活動をサポートします。

役員の定義とその種類

役員とは、会社法に基づき、会社の経営に関与する立場の人物を指します。役員には、代表取締役や取締役、監査役などが含まれます。役員が労災保険や雇用保険に加入する際、特に重要となるのが、これらの役職の種類と役員の権限です。

以上、役員の労災保険・雇用保険の基礎知識についての説明でした。これらの知識を持つことで、適切な保険加入が可能となり、会社と従業員双方を守ることができます。

役員が労災保険に加入できる条件とは?

労災保険は、労働者が業務上の事故や病気で傷ついた際に、医療費や休業補償を支給する制度です。労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」となっており、アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。
会社の役員は、労働者にはならないため、原則として労災保険に加入できません。
ですが、2つのケースで加入できることができます、

労働者性のある役員は労災保険に加入が可能

役員が労災保険に加入できる1つ目のケースは、労働者性のある役員です。
役員の中でも、取締役工場長、取締役営業部長など従業員としての肩書を兼務している方というとイメージがしやすいかと思います。このような方は労働者性のあるとの判断で、労災保険に加入することができます。
ただし、労働者性については肩書ではなく、あくまで実態として業務執行権を持たないことや、一般の労働者と同様に賃金を得ていることが基準となっています。

なお、労災保険には加入手続きというものがありません。
労働保険料納付の際、役員報酬を除いた労働者としての賃金のみを対象として計算し納付することになります。

中小企業の社長は労働保険に特別加入できる

労働者性のある役員の場合、労災保険に加入することができます。
創業当初の社長と話をしていると「自分は年中無休で四六時中仕事をしている。労働者ですよ」と言われることがあります。業務執行権の話をしても「家内に使われてます」と。
お気持ちは理解できるのですが、会社の最高責任者である以上労働者性は認められず、労災保険に加入することもできません。

ですが、その代わりに業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人には、労災保険に特別に加入する「特別加入」があります。

対象は、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種となっており、中小企業の社長も労災保険に特別加入することができます。
※労働保険関係が成立していない事業所、例えば1人社長など役員のみの会社、従業員のいない個人事業主は加入できません。

中小企業とは、常時雇用する労働者数によって以下となっています。

■金融業、保険業、不動産業、小売業  50名以下
■卸売業、サービス業  100人以下
■上記以外の業種  300人以下

特別加入の難点は、労働保険事務組合を経由した手続きになる点です。
すでに労働保険事務組合を通して労働保険の事務を依頼されている会社はそのまま申し込むことができます。ですが、新たに依頼する場合は、従業員の労働保険も含めて労働保険事務組合を通すことになります。
現在の労働保険関係成立届を廃止し、新たに労働保険事務組合を通して労働保険関係成立届を提出するという手間と費用(手数料・年会費)もかかります。

特別加入の労災保険の代わりに、民間の傷害保険をを活用するのも1つの方法です。

役員が雇用保険に加入できる条件とは?

雇用保険は、労働者が失業した際や育児・介護で休業した際に給付が受けられる保険制度です。雇用保険上で「雇用される労働者」とは、雇用関係(労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係)によって得られる収入によって生活する人です。

労働者の内、雇用保険の対象となるのは以下の2つを充たした方となります。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。
・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。



会社の役員は労働者には当たらず、原則として雇用保険に加入することができません。
ですが、雇用保険も労働者性があると認められた場合、加入することができます。

兼務役員が雇用保険に加入する際のポイント

雇用保険では、株式会社の取締役など法人の役員は、原則として被保険者にはなれません。ですが、役員であっても、会社の部長、支店長、工場長等従業員としての身分を有する場合、報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められるものに限り被保険者となるとしています。

兼務役員(正しくは使用人兼務役員)といいます。

この点では、労災保険と同様と言えますが、雇用保険の場合はハローワークへの手続きが必要です。

新たに労働者性のある役員を採用する際は、雇用保険被保険者資格取得に加え、兼務役員雇用実態証明書の提出が必要です。

雇用保険に加入している従業員が、労働者性のある役員に就任した際は、兼務役員雇用実態証明書の提出が必要になります。

また、確認資料として下記の添付書類が必要です。
・労働者名簿、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿
・就業規則、給与規程、役員報酬規程
・登記事項証明書、定款、議事録
・寄付行為・総勘定元帳
・決算書の添付書類の役員報酬
・人事組織図

労働者性のある役員(兼務役員)と判断されるには、次の3点がポイントになります。
■役員報酬より従業員としての給与が多いこと
■代表権、業務執行権を持っていないこと
■就業規則の適用を受けていること

雇用保険料の申告の際は、役員報酬を除いた従業員給与を算入します。
失業給付や育児休業給付金についても、従業員給与のみが対象となります。

まとめ

労災保険は業務上の事故や病気で傷ついた際に、雇用保険は失業した際や育児・介護で休業した際に給付を受けることができる保険制度で、加入することでいざという時の安心を得られます。役員でも加入できる場合があるので、上手にご活用ください。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。



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