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中小企業社長必見!Wワークと社会保険の二重加入問題を大阪の社労士が解説

中小企業の社長は、従業員からダブルワークの相談を受けることも多いかと思います。しかもメインでは他の企業で、副業の側になることほとんどでしょう。その場合、社会保険の二重加入や、それによってメイン側の会社に迷惑がかかると問題です。今回は、社会保険の二重加入が起こるケースや、二重加入による危険性や解決策までを詳細に解説します。

Wワークと社会保険

Wワーク、すなわち、複数の職に就くことは、増加の一途をたどっています。中小企業の社長のもとには、別の会社で働いている人が、あなたの会社でも副業として働きたいという相談もあることでしょう。その際、多くの人が知らない社会保険のWワークのリスクが存在します。これらのリスクの理解とその管理は必須となります。

Wワークの基本的な注意点

Wワークには注意点があり、社会保険の適用や労働契約において慎重な管理が求められます。特に社会保険が二重でかかることがあります。これは、本業と副業の双方で社会保険の対象となる可能性があるためです。社会保険がかかるだけでなく、Wワークが本業の会社にバレるリスクも存在します。

例えば、ある企業で働いているAさん(社会保険に加入)が、あなたの会社でパートタイマーとして働くケースを考えます。この場合、副業先つまりあなたの会社で社会保険の適用があると、二重加入の問題が発生します。これを防ぐためには、副業先での社会保険の加入を避ける、あるいは本業の会社にWワークの許可を得る等の手段が考えられます。

Wワークする際の注意点を把握し、社会保険の二重加入の問題を正しく理解することで、副業となる方を安心して採用することができます。

社会保険の基礎知識

社会保険の加入条件を整理してみましょう。

社会保険の対象となる方
(1)2か月を超える雇用の見込みがある
(2)フルタイム及び週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上
(3)週所定労働時間20時間以上で月額賃金8.8万円以上(学生は除く)

(1)と(2)は全ての会社に共通しますが、(3)は会社の規模(厚生年金被保険者数)によって以下の会社に限定されます。

□令和6年9月30日まで:101名以上の企業
□令和6年10月1日以降: 51名以上の企業

先ほどのAさんの場合、あなたの会社で上記の要件に当たるかどうかで判断します。
厚生年金保険被保険者数が101名(令和6年10月1日以降は51名)以上であれば週20時間、それ以下の規模であれば週30時間(正社員の所定労働時間が40時間の場合)以上が基準になります。

社員をしながらのWワークだと、ちょっと無理なレベルです。

社会保険の二重加入とは

社会保険の二重加入、これは一人の従業員が複数の会社で働くWワークにおいて、社会保険への加入が重複することを指します。社会保険の加入条件として、以前は所定労働時間が正社員の4分の3と比較的高い基準であったため、社会保険の二重加入は稀でした。
ですが、現在は週20時間以上で月額賃金8.8万円以上と基準が下がっています。
人材を雇用する場合は、社会保険の二重加入を考える必要があります。

社会保険が二重加入となった時の手続き

通常、社会保険の要件を充たす社員を雇用した際、手続きとしては日本年金機構へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出をすれば手続きは完了です。
健康保険証が送付され、あとは標準報酬月額に応じた保険料を給与から天引きするだけです。

ですが、二重加入となった場合、どちらの会社をメインにするか(どちらの健康保険証を発行するか)を選択し、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届という書類をメインとする会社から提出しなければなりません。

また、保険料の計算も複雑です。それぞれの会社の月額給与を元に標準報酬月額を算出するのではなく、2社の月額給与を合算した額で標準報酬月額を算出し、その標準報酬月額に応じた保険料を、2社の給与額で按分して算出します

A社:月額給与 250,000円
B社:月額給与:130,000円

2社合計:380,000円 → 標準報酬月額 380,000円

標準報酬月額 380,000円の保険料(大阪、40歳未満、折半する前の全額)
 ・健康保険:39,102円
 ・厚生年金保険:34,770円

保険料まではこのように出します。

次に、A社、B社の負担割合です。

健康保険:39,102円
 ・A社の負担:39,102円×25万円/38万円 =25,725円
 ・B社の負担:39,102円―25,725円 =13,377円

厚生年金保険:69,540円
 ・A社の負担:69,540円×25万円/38万円 =45,750円
 ・B社の負担:69,540円―45,750円 =23,790円

このように、社会保険の二重加入は、手続きや保険料の計算ともに複雑になります。

社会保険が二重加入となった時のリスク

社会保険の二重加入により、手続きや保険料の計算が複雑になります。
そのことでどのようなリスクが考えられるのでしょうか?

(1)現在働いている会社にWワークがバレる
社会保険の二重加入は、手続きや保険料の計算ともに複雑になります。
それだけならいいのですが、間違いなく現在会社にWワークしていることがバレます。

先ほどのAさんのように、現在社員として働いている会社をメインにする場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」は、今働いている会社から提出してもらわなければなりません。

仮に、あなたの会社をメインにする場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」はあなたの会社から提出するのですが、今働いている会社の健康保険証は返納することになります。

社会保険の二重加入となった時点で、今働いている会社に報告をしなければ、話がややこしくなる可能性があります。

(2)現在働いている会社に事務負担を負わせる
現在働いている会社にWワークすることの了承をもらいました。バレるという問題は回避できました。でも、もう1つの問題があります。

複雑な事務負担を負わせるということです。
先ほどの例のように、保険料の計算は2社の月額給与を合算して標準報酬月額を出し、さらに保険料を給与金額によって按分するという複雑な計算になります。

これらを熟知している人でなければ計算が困難です。
関連会社でない限り社会保険の二重加入は避けるのが無難です。



Wワークの多様なケース

Wワークによる社会保険の二重加入は、自社だけならともかく、もう一方の会社にも事務的な負担をかけてしまいます。様々な形態が存在し、それぞれ異なる点に注意が必要です。ここでは、Wワークによる社会保険の二重加入について、その多様なケースについて解説いたします。

社員がパートでWワークする場合

先ほど例にあげたAさんのように、現在別の会社で社員として勤務(社会保険加入)しながら、御社でのWワークを希望するケースです。

あなたの会社の規模が、厚生年金保険被保険者数が101名(令和6年10月1日以降は51名)以上であれば週20時間、それ以下の規模であれば30時間(正社員の所定労働時間が40時間の場合)以上が基準になります。
社員として働いている場合は、現実的には二重加入になるほどの時間は入れないでしょう。

パートが別のパートでWワークする場合

現在別の会社でパートとして働いている人が、あなたの会社でもパートタイムの仕事を希望するケースです。
この場合は、社会保険の二重加入になる可能性が充分にあります。
現在の職場の規模や働き方(週の所定労働時間)や社会保険に加入しているかどうかを確認した上での対応が必要です。

現在の職場で社会保険に入っていない場合も、規模によっては今後対象になる可能性もありますので、ご本人とよく話をした上で採用することが重要です。

社員が起業する場合

あなたは、現在ある会社で社員として働いています。今後新たに起業を考えているとすれば、このケースになります。

起業する場合、個人事業主としてスタートするのか、会社を設立し代表取締役に就任するのかによって大きく異なります。

個人事業主は社会保険の対象となりませんので、社会保険の二重加入の問題はありません。
今の職場での社会保険のみで事業をスタートすることができます。個人事業主は一般的には国民健康保険、国民年金に加入しなければならないのですが、今の職場で社会保険に加入している限りは、国民健康保険、国民年金に入る必要もありません。
また社会保険の保険料は、今の会社で受けている給料の金額だけが対象になるので、個人事業主としての収入がいくらになっても、保険料には影響されません。
ある意味最も効率的なやり方とも言えます。

会社を設立し代表取締役になった場合、無報酬であれば社会保険に加入できないので二重加入の問題は起きません。役員報酬を少しでも受けている場合は、社会保険の加入義務が生じ、二重加入となってしまいます。
社会保険の二重加入となった場合は、勤務している会社の給与担当の方に事務の負担をかけることになるので、あらかじめ伝えておくことが重要です。

なお、非常勤役員であれば社会保険に加入する必要はないのですが、代表取締役が非常勤とはなり得ませんので、役員報酬が発生する場合は二重加入となってしまいます。

役員が別の会社の役員をする場合

一つの会社で役員を務めながら、別の会社でも役員を務めるケースです。社長が別の会社でも社長になったり、別の会社の役員に就任することがよくあるケースです。

同時に2社の社長(代表取締役)になる場合、どちらからも役員報酬を受けると二重加入になります。手続きや給与事務が複雑にはなりますが、どちらも自社になるので問題にはならないでしょう。

1社で社長(代表取締役)、もう1社で役員に就任する場合はどうでしょうか?
どちらも役員報酬を受けているとした時、社長(代表取締役)である会社では社会保険加入義務があります。一方の役員である会社では、非常勤役員であれば社会保険加入義務はないので、二重加入にはなりません。

非常勤役員であるとする具体的な判断基準は、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

人手不足が進む今後、Wワークの人材を採用することも充分に考えられます。その際、新たに採用する人が、今の職場で困らないような配慮も必要になってきます。この記事を参考にしていただけると幸いです。


当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。



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