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実例でわかる!社会保険の算定基礎(定時決定)変更後の給与反映タイミング

社会保険料改定時、いつの給与から徴収額を反映すればいいのか迷うことはありませんか?実は、御社の社会保険料徴収のタイミングが、当月の給与からなのか翌月の給与からなのかによって異なります。日頃から中小企業社長から相談を受けている社労士がくわしく解説するとともに、中小企業社長が陥りがちなミスとその解決方法もお伝えします。

社会保険の算定基礎の概要

社会保険料の計算の基礎となる報酬額を「標準報酬月額」と呼びます。この標準報酬月額の決定方法には主に2つあり、「算定基礎(定時決定)」と「月額変更(随時改定)」となっています。所得税や雇用保険料は、毎月の給与額に基づいた税率や保険料率で算出されます。そのため、給与総支給額が一定でない場合、毎月の金額は変動します。

一方、社会保険料は、被保険者(労働者)一人ひとりの給与に基づき、算出された定額の保険料を徴収する方式です。このため、給与の総支給額が変わっても、社会保険料はその定額のままとなります。

年に一度の算定基礎(定時決定)でこの定額の保険料が算出され、この保険料額はその後1年間適用されます。しかし、給与額に大きな変動があった場合、算定基礎(定時決定)に基づく保険料が現実の給与額に合わなくなることが考えられます。このようなケースを修正するために設けられているのが「月額変更(随時改定)」です。

算定基礎(定時決定)の基本的な定義

「算定基礎(定時決定)」は、毎年4月から6月の3か月間に支給された報酬月額を基に計算されます。社会保険での「報酬月額」とは、基本給や各種手当のほか、残業代や非課税の通勤手当などを含む総支給額を指します。
この3か月分の報酬月額を平均し、それを基に標準報酬月額が決定されます。例えば、報酬月額の平均が235,000円の場合、標準報酬月額は240,000円となります。給与の変動が少ない場合、標準報酬月額の改定は年に1回、「算定基礎(定時決定)」によって行われます。

算定基礎(定時決定)と月額変更(随時改定)の違い

昇進や人事異動による大幅な昇給や降給があった際、算定基礎(定時決定)での標準報酬月額が現状の給与に合わなくなる場合があります。このような場合、基本給やその他の固定給の部分が変動すると、標準報酬月額の改定が必要となります。

変動があった月から3カ月間の給与(残業手当などの変動する給与も含む)を平均し、その結果を現行の標準報酬月額と比較します。もし2等級以上の差があれば、翌月から新しい標準報酬月額が適用されます。これを「月額変更(随時改定)」と言います。

例として、Aさんが4月から昇進し、給与と残業代が増加したとします。4月、5月、6月の3か月間での総給与が、以前の標準報酬月額から2等級以上の差があった場合、7月から新しい標準報酬月額が適用されることになります。

算定基礎の変更の背景と必要性

経済の動きや業種の変化、そして多様な雇用形態の普及とともに、給与状況も変わり続けています。特に中小企業では、業績や事業展開に応じて、給与が増減することが一般的となってきました。このような現状を踏まえ、各従業員の給与実態に応じた適切な標準報酬月額を設定することが、より重要となってきました。このため、算定基礎(定時決定)と随時改定の2つの方法が導入され、それぞれの状況や変動に応じて最適な方法が選択されるようになっています。これにより、社会保険料の公平性が保たれ、企業と労働者双方にとって適切な保険制度の運用が実現されています。

このようにして、社会保険の算定基礎に関する制度は、給与の現実とともに進化し続け、企業と労働者のニーズに応えるようになっています。今後もこの制度はさらに洗練され、日本の労働環境の変化に柔軟に対応していくことが期待されます。

算定基礎(定時決定)時の標準報酬月額変更の手続き

社会保険の算定基礎に関する手続きは、企業の経営者や人事担当者にとって重要な業務の一つです。この手続きが適切に行われないと、社会保険料の計算が誤る可能性があります。この章では、算定基礎(定時決定)時の算定基礎変更の手続きについて詳しく解説していきます。

算定基礎(定時決定)届出のタイミングと手続きの流れ

1. 申請のタイミング
毎年6月中旬頃、日本年金機構から算定基礎届が送付されます。この算定基礎届には、年金機構で届けている被保険者情報が印字されていますので、自社で把握している内容と相違がないかの確認もでき便利です。

算定基礎(定時決定)のための申請は、毎年7月1日から7月10日の間に行うことが基本となっています。具体的な日程は、所轄の年金事務所らの通知を確認してください。

2. 必要な書類の準備(添付書類は不要ですが、現状での照合や算定基礎届作成の為に必要です)
・賃金台帳(または給与明細)
・前年度の算定基礎時の年金機構からの通知
・前年7月以降の月額変更時の年金機構からの通知
・従業員の変動情報(入退社、昇進など)

3. 申請の流れ
日本年金機構に郵送または所轄の年金事務所に、必要な書類を提出します。その後、事務所での確認作業が行われ、問題がなければ算定基礎が確定し、通知書が送られます。

社労士の役割とアドバイス

社労士は、社会保険や労働保険の専門家であり、企業の人事労務に関するアドバイザーとしての役割を持っています。算定基礎(定時決定)時の算定基礎変更の手続きにおいても、その知識と経験が活かされます。

1. 必要な書類のチェック
申請の際に提出する書類の不備や漏れを防ぐために、事前にチェックを行います。

2. 正確な算定基礎の計算
社労士は、給与の詳細なデータをもとに、正確な算定基礎を計算します。

3. 手続きのアドバイス
申請の流れや注意点、そして最新の法改正情報などを提供し、スムーズな手続きをサポートします。

給与変更時の注意点とチェックリスト

1. 注意点
・提出する書類に不備がないか、事前にしっかりとチェックすること。
・従業員の情報変更があった場合、それを正確に報告すること。
・算定基礎の変更があった場合、適切なタイミングで申請を行うこと。

2. チェックリスト
・給与明細のコピーは揃っているか?
・前年度の給与支給状況の一覧は正確か?
・新しく入社した従業員の情報は含まれているか?
・昇進や昇給、退職などの変動情報は正確に反映されているか?

算定基礎(定時決定)時の算定基礎変更は、多くの企業で行われる重要な手続きです。正確かつスムーズに進めるためには、しっかりとした準備と、必要な情報の確認が欠かせません。特に変動が多い中小企業や、新しく事業を立ち上げたばかりのスタートアップ企業では、この手続きの複雑さや重要性を認識していない場合があります。そのような時、社労士のサポートを受けることで、間違いのない適切な手続きが行えるのです。

また、コロナウイルス感染症の影響でテレワークを導入した企業も増えています。このような新しい働き方の中でも、社会保険の手続きは欠かせません。給与計算の基礎となる情報が変わった場合や、新たな手当を設けた場合など、変更があった際には迅速に対応する必要があります。

最後に、社会保険の算定基礎(定時決定)や月額変更(随時決定)手続きは法律に基づくものです。万一出し忘れなどで算定基礎(定時決定)や月額変更(随時決定)をしなかったら、遡って適用を受けることになります。従業員から保険料の追加額を徴収したり、逆に取り過ぎていた場合は返金するなどの事務処理の手間や従業員からの信用を損なうことにもなります。
また、場合によってはペナルティが科せられることも考えられます。
そ企業の経営者や人事担当者として、法律を遵守し、正確な手続きを心がけることが大切です。

給与への反映タイミングとその実例

算定基礎(定時決定)や月額変更(随時決定)により標準報酬月額が改定された後、非常に重要になるのが給与への反映タイミングです。
社会保険料の徴収タイミングにおいては、当月徴収と翌月徴収の2つのパターンが考えられます。このタイミングを誤ってしまうと、社員の給与計算に誤差が生じ、後々の修正作業やトラブルの原因となることがあります。

定時決定後の給与反映の一般的なタイミング

例として、9月に標準報酬月額の改定があった場合、当月徴収を行っている会社では9月の給与から新しい報酬月額が反映されます。一方、翌月徴収を採用している会社の場合、10月の給与から新しい報酬月額が適用されます。

このような差異が生じる背景には、給与計算のシステムや経営方針、また従業員の数や業種など、様々な要因が影響しています。しかし、最も重要なのは、自社がどの徴収タイミングを採用しているのかを正確に把握し、それに基づいて正確な給与計算を行うことです。

これまで多くの経営者と接してきましたが、当月徴収か翌月徴収かをしっかりと把握されずに計算されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その状態で年金事務所問合せをしても、正しい回答を得ることができません。まずは自社が当月徴収か翌月徴収かを正確に把握するところからスタートしていただきたいと思います。

当月徴収か翌月徴収かを把握するポイント

社会保険料の徴収が当月徴収か翌月徴収かわからないという方へ、把握する方法をお教えします。
「4月1日に入社した方の社会保険料は、いつ徴収しますか?」です。
給与が月末締めの翌月20日支給の会社は、5月でなければ徴収できません。まぎれもなく翌月徴収です。

給与が20日締めの当月末日支給の会社はいかがでしょうか?4月の給与で徴収しているのであれば当月徴収、5月の給与で徴収しているのであれば翌月徴収です。

当月徴収か翌月徴収かを把握していないと二重聴取や徴収漏れも

当月徴収か翌月徴収によって、給与への反映タイミングが異なるのは算定基礎(定時決定)や月額変更(随時決定)だけではありません。
入社時や退職時は、きっちりと把握していなければ二重徴収や徴収漏れが起きる可能性もあります。

【当月徴収(給与20日締め、末日支給】
給与20日締め、当月末日で当月支給の入社、退職時の徴収タイミングを考えてみましょう。

まずは入社時です。4月21日(締日)以降の入社だと4月末日に給与は支給されません。その場合、5月に支給する給与から2か月分を徴収することになります。
5月給与で社会保険料の徴収が1か月分だとしたら、1か月分徴収漏れになります。

退職時はどうでしょうか?
3月31日退職の場合、社会保険料は3月分までかかりますが、3月分の社会保険料は3月支給分の給与から徴収されるので、4月の給与では徴収しません。
もし4月給与でも社会保険料を徴収してしまうと、二重徴収になってしまいます。


【当月徴収(給与20日締め、末日支給】
給与20日締め、当月末日で翌月徴収だとどうでしょうか?

入社日が4月1日でも4月21日(締日)でも、4月の社会保険料は5月の給与からです。
もし4月給与での社会保険料を徴収してしまうと二重徴収となります。

退職時はどうでしょうか?
3月31日退職の場合、社会保険料は3月分までかかります。3月給与で徴収する社会保険料は2月分ですから、3月分は4月の給与から徴収します。
4月の給与で徴収しないと社会保険料の徴収漏れになります。

このように、当月徴収か翌月徴収かを正確に把握していないと様々なケースで支障が出ます。まずは自社が当月徴収か翌月徴収かを把握し、それに基づいた処理をすることが重要です。

算定基礎変更後の給与計算のポイント

給与計算は、企業における重要な業務の一つであり、算定基礎が変更された後は特に注意が必要となります。誤った給与計算をしてしまうと、従業員の不満や法的トラブルが発生するリスクもあるため、変更後の正確な給与計算の方法や従業員への伝達についての知識を持つことが大切です。

正確な給与計算のためのステップ

(1)変更内容の確認
算定基礎が変更される前に、変更内容を詳しく確認しましょう。具体的な変更点、変更の背景や理由などをしっかりと理解することが第一歩となります。

(2)新しい計算方法の確立
変更内容に基づき、新しい給与計算方法を確立すします。必要であれば専門家や社労士に相談し、計算式や手順を明確にしましょう。

(3)システムやツールの更新
使用している給与計算システムやツールによっては、更新やカスタマイズが必要となる可能性があります。早めにアップデートや調整を行い、新しい算定基礎に対応したシステムを使用することで、ミスを防ぎましょう。


(4)計算の確認
給与計算システムやツールの結果が正確に反映されているか確認します。

(5)定期的な確認と更新
現状年1回、3月(納付は4月)に健康保険料率が改定されます。その他にも制度が改定されることのあるので、年金事務所から送付される保険料の通知に同封される書類等で、定期的に確認し必要な場合は再度更新や調整を行います。

従業員への変更内容の伝達と説明方法

(1)伝達のタイミングを計画
算定基礎が変更されることを従業員に伝える際、十分な前もっての通知を行うことが大切。驚かせないため、適切なタイミングを計画しましょう。

(2)明確な資料の作成
従業員に変更内容を理解してもらうために、明確かつわかりやすい資料を用意します。給与明細に記載することも有効です。

(3)質疑応答の時間を設ける
伝達後、従業員からの質問や疑問に対応するための時間を設ける。オープンにコミュニケーションを取ることで、信頼関係を築くことができます。

給与計算は、従業員の生活に直接影響する非常に重要な業務です。算定基礎の変更は大きな影響を及ぼす可能性があるため、十分な準備と対応が必要となります。正確な計算、従業員への十分な説明により、スムーズでトラブルのない給与計算を実現しましょう。

まとめ

給与計算は、従業員の生活に直接影響する非常に重要な業務です。算定基礎の変更は大きな影響を及ぼす可能性があるため、十分な準備と対応が必要となります。正確な計算、従業員への十分な説明により、スムーズでトラブルのない給与計算を実現しましょう。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。



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