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学生アルバイト:週20時間以上で雇用保険加入義務はあるのか?

学生アルバイトの雇用保険加入義務について悩んでいる中小企業の経営者や人事担当者へ。学生アルバイトの雇用保険は、一般の労働者の加入条件とは異なり、雇用保険の加入対象とはなりません。ですが、学生の中でも雇用保険の加入対象となるケースもあり非常に複雑です。本記事では、雇用保険の基本から実際の適用例まで詳しく解説します。

中小企業が知るべき雇用保険の義務

中小企業は、日本経済の大きな柱の一つとしての役割を担っています。このような事業の中心として、中小企業経営者は雇用保険に関する義務やリスクを正確に理解しておく必要があります。以下で、中小企業が知っておくべき雇用保険の義務について詳しく解説します。

雇用保険の加入義務とは

雇用保険は、労働者の雇用の安定や生計の保護を目的とした制度です。労働者が失業した時、育児や介護で休業して賃金を得ることができない時の生活補償的な意味合いがあります。
農林水産業の一部を除き、労働者が雇用されるすべての事業場において、雇用保険への加入が原則として義務付けられています。

労働者の内、次の2つを満たす方が雇用保険の加入対象となります。
 
【雇用保険の加入対象】
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。
 ・期間の定めがなく雇用される場合
 ・雇用期間が31日以上である場合
 ・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。

加入しない場合のリスク

中には雇用保険に入りたくない、と考える経営者の方もいるかもしれません。ですが、届出をしなかった場合、雇用保険法第83条第1項により、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると定められています。
更に、従業員が失業した際に給付が得られなくなるというリスクもあります。事業の信頼性や従業員の福利厚生の観点からも、雇用保険への適切な加入は極めて重要と言えるでしょう。

昼間学生は原則週20時間以上でも雇用保険対象外

近年、アルバイトやパートとして働く学生が増加しています。その中で「学生も雇用保険に加入できるの?」という疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。結論から言いますと、原則として昼間学生は雇用保険の対象となりません。ですが例外もあり複雑です。ここでは、学生と雇用保険の関連性について解説します。

学生が雇用保険の対象にならない理由

一般の労働者は、雇用関係が継続する見込みであれば、1週間の所定労働時間が 20 時間以上で雇用保険への加入義務が生じます。ですが、昼間学生は通常、雇用保険の加入資格がありません。
というのも、雇用保険第6条により昼間学生は雇用保険適用除外とされているからです。
※夜間学生は一般の労働者と同条件で雇用保険加入義務が発生します。

また、雇用保険の代表的な保険給付に、労働者が失業した際の失業給付があります。雇用保険上の「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることです。
昼間の学生は、本業が学業なので、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態とは言えない、ということもあるでしょう。

学生が例外的に雇用保険に加入できる2つの条件

しかし、以下の2つ内いずれかを満たしている場合、雇用保険の対象となります。

 【昼間学生でも雇用保険に加入できる条件】
1.卒業見込み証明書を持ち、卒業後も同じ会社で働く予定であること
2.学校を休学中であること



昼間学生である太郎さんは、卒業後もアルバイト先のA社での正社員としての採用が決まっており、卒業見込み証明書を持っています。採用が決まっているので31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、1つ目の条件は満たします。2つ目の条件である所定労働時間が週20時間以上であれば雇用保険の対象となります。

ちなみに、太郎さんのアルバイト先がA社、B社で週の所定労働時間が合わせて20時間の場合は、雇用保険被保険者とはなりません。雇用保険の加入条件である週20時間は、あくまで1つの会社での所定労働時間です。

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実際の適用例と注意点

雇用保険の適用には多くのルールや例外が存在します。特に学生や中小企業においては、どのように適用されるのか、具体的な事例を知ることで理解を深めることができます。また、雇用保険の義務を怠った場合のリスクや罰則についても、具体的に理解しておくことは非常に重要です。

学生アルバイトの雇用保険事例

昼間の学生アルバイトの次郎さんは、飲食店で週25時間勤務しています。彼は卒業後もこの店で働く意向であり、卒業見込み証明書を提出したため、雇用保険の加入対象となりました。一方、週20時間の学生アルバイトである花子さんは、原則として雇用保険の対象外ですが、休学中のため、彼女も加入が可能となりました。このように学生アルバイトの場合、働く時間や学生の状況によって雇用保険の適用が異なります。

義務違反時の罰則とその対応策

雇用保険法第83条によれば、事業主が雇用保険への届出を怠った場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると定められています。
また、従業員が失業した際に給付が受けることができないというリスクもあります。
これらを回避するために、事業主は雇用保険の加入義務をきちんと理解し、適切な手続きを迅速に行うことが必要です。特に新しく事業を開始する際や、従業員の数が増減したときなど、雇用保険の加入状況を再確認することをおすすめします。

自社の雇用保険の加入状況を照合するには、雇用保険適用事業所情報提供請求書をハローワーク窓口で提出することで、自社の雇用保険事業所情報や個々の被保険者の情報を出してもらうことができます。

正しく加入するためのステップ

まずは、対象となる従業員の加入資格の確認が必要です。31日以上の継続した雇用が見込まれ、週20時間以上勤務する場合は、昼間学生など適用除外でなければ、雇用保険の加入義務があります。
雇用保険の加入は、管轄するハローワーク窓口で『雇用保険資格取得届』を提出します。添付書類は不要ですが、初めての被保険者資格取得届を行う場合は、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿が必要です。

まとめ

今回は学生アルバイトの雇用保険加入について取り上げました。昼間学生は、原則として雇用保険の対象にはなりません。ですが、卒業見込み証明書を持ち、卒業後も同じ会社で働く予定である場合と、学校を休学中の場合は雇用保険に加入することができます。また、夜間学生は一般の労働者と同じ対応になります。複雑にはなりますが、正しく対応することは労働者の利益を守ることでもあり会社の信用にもつながります。特に学生アルバイトは、将来御社の取引先や顧客にもなり得ますので、適切に対応をいただきたいと思います。


当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。


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