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雇用保険の加入:勤務先掛け持ち(20時間未満・20時間以上)の場合は?

パートやアルバイトを雇用する際、所定労働時間などの労働条件によって雇用保険加入の要否が異なります。特にダブルワークをする労働者の場合、雇用保険に二重で加入する必要があるのかなどの頭を悩ませることもあるでしょう。今回の記事は、ここ数年で急激に増加しているダブルワーク時の雇用保険について、大阪の社労士がくわしく解説します。

勤務先掛け持ち(ダブルワーク)と雇用保険の基本

近年、多様な働き方が増加してきた中で、ダブルワークという働き方が一般的になってきました。これと同時に、雇用保険という重要な制度も、私たちの生活に深く関わるものとなっています。ここでは、ダブルワークの基本的な定義と雇用保険の概要、そして両者の関係について解説します。

ダブルワーク(Wワーク)とは?

ダブルワークとは、一人の労働者が2つ以上の雇用関係にあることを指します。理由として、生活費の増加やキャリアアップを目指して、多くの人が複数の仕事を持つようになりました。例えば、平日に正社員として会社勤務をしながら、土日にアルバイトやフリーランスの仕事をするといったケースが考えられます。また、パートやアルバイトを掛け持ちでしているケースなど、ダブルワークは多様な働き方を実現する手段として注目されています。

雇用保険とは?

雇用保険とは、失業等のリスクに備えて給付を受けるための制度です。理由として、働いている人が突然の失業などで収入が途絶えたときに、一時的な生計の支援や再就職のための支援を受けることができるようにするためのものです。具体例として、会社の経営悪化によるリストラや、個人の健康上の理由での退職時など、雇用が不安定になった場合に保険給付を受けることができます。このように、雇用保険は労働者の生活を守るための重要な制度となっています。

掛け持ち(ダブルワーク)と雇用保険

ダブルワークをしている労働者も雇用保険の対象となる可能性があります。
理由として、ダブルワークの一つが20時間以上の勤務となっている場合、その雇用先からの雇用保険の加入資格が生じるためです。

具体例として、平日に正社員としてフルタイムで働き、週末にパートタイムのアルバイトをしている場合、正社員としての雇用先から雇用保険に加入することになります。ダブルワークを行っている場合でも、雇用保険の加入や給付に関しての権利と義務を正しく理解し、適切な手続きを行うことが求められます。

掛け持ち(ダブルワーク)時の雇用保険:20時間以上と20時間未満

ダブルワークが一般的になる中、雇用保険の加入に関しても多くの疑問や誤解が生じています。特に、二重加入の問題は、ダブルワークを行う労働者を受け入れる企業にとって疑問も多いのではないでしょうか。

雇用保険加入の条件

ダブルワークの場合でも、雇用保険への加入条件は通常の労働者と同じです。

労働者の内、次の2つを満たす方が雇用保険の加入対象となります。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。
・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。


平日に正社員として会社勤務をしながら、土日にアルバイトやフリーランスの仕事をする場合は、あまり雇用保険の二重加入という問題にはなりません。

フリーランスの仕事であれば、労働者とはいえませんので雇用保険の対象とはなりません。
また、土日にアルバイトをする場合も、週20時間以上になることはほぼ無いでしょう。

ですが、2か所の職場でパートやアルバイトとして働く場合、どちらも20時間以上になることは充分に考えられます。
その場合、両方の会社で雇用保険の加入(二重加入)することになるのでしょうか?

2か所の職場でそれぞれ20時間以上働く場合、雇用保険の加入はどうなる?

結論として、雇用保険は「主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ」加入することになり、二重加入することはできません。理由として、雇用保険は1人の労働者に対して1つの保険番号が割り当てられる制度であり、複数の雇用先からの加入は許されていないためです。


例えば、A社で先に雇用保険被保険者となっている場合、B社で雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出しても、保留状態になります。A社で資格喪失手続きをしない限り、B社で被保険者の資格を取得することができません。

2か所の職場どちらも週20時間未満の場合、雇用保険の加入はどうなる?

雇用保険は「主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ」加入することになり、どちらも20時間以上であっても二重加入することはできません。

では、どちらも週20時間未満で、合算して20時間以上になる場合はどうでしょうか?
あくまで雇用保険の考え方は「主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」での勤務実態で考えるため、どちらも週20時間未満の場合は、たとえ合わせて週20時間であっても雇用保険に加入することはできません。

65歳以上は週20時間未満でも雇用保険に加入できる制度がある

ここまでの話をまとめますと、掛け持ち(Wワーク)で、どちらも労働時間が週20時間以上となるケースであっても、二重加入にはなりません。
雇用保険は「主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ」加入できることになっているからです。

一方で複数の職場で掛け持ちをし、合計すると週20時間以上の労働時間になることもあります。ですが、1つの職場で20時間以上の労働時間がなければ雇用保険に入ることができません。

ところが、2022年1月1日に新設された「雇用保険マルチジョブホルダー制度」により、一定の条件を満たした場合、65歳以上の方は、2か所の職場での労働時間を合わせて20時間以上になると雇用保険に加入することが可能になりました。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者とは?

マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の適用対象者の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

(1)複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
(2)2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(3)2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

雇用保険マルチジョブホルダー制度は、本人がハローワークで手続き

65歳以上の高齢者を雇用する場合、自社での労働時間が20時間未満の場合でも雇用保険に入ることが可能な雇用保険マルチジョブホルダー制度があります。
人を採用した時の手続きがますます複雑になりそうです。
ですが、この制度による加入手続きは本人がハローワーク窓口で行うことになっています。
会社から本人に確認する必要まではありません。
本人から依頼があれば、手続に必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)をしてあげてください。

まとめ

人材を採用する際、社会保険とともに雇用保険も重要な手続きです。中でもダブルワークの場合は複雑になります。今回の記事を参考に正しい手続きを行っていただければ幸いです。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。



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