NEWS お知らせ

出勤率が足りない社員への有給休暇:何日の付与が必要?社労士が詳解

出勤率が8割未満の従業員には、法的に有給休暇を付与する必要はありませんが、その計算方法には注意が必要です。産休、育休や有給の取得日は出勤扱いとなりますが、休日出勤はカウントされないなど、様々な特例が存在します。また、欠勤と休職期間の扱いには大きな違いがあります。これら複雑なケースについて、社労士が詳しく解説します。

1.有給休暇の基準:出勤率が重要な理由

中小企業の社長さん、社員の有給休暇についての理解は十分ですか?有給休暇の管理は、従業員の労働権を守ると同時に、会社の運営にも影響を及ぼします。特に出勤率の理解は、有給休暇の適切な管理に不可欠です。

有給休暇の発生基準日と条件

「有給休暇」と聞いて、あなたはどのようなイメージを持っていますか?

従業員にとっては、待ちに待ったリフレッシュの機会かもしれません。しかし、経営者にとって、有給休暇の管理は案外頭を悩ます問題です。特に、出勤率と有給休暇の関係は、理解しておくべき重要なポイントです。

まず、有給休暇がいつから発生するかを知っておくことが大切です。
労働基準法によれば、正社員、アルバイト、パートタイマーを問わず、従業員は入社してから6か月間継続して勤務し、所定労働日の8割以上に出勤した場合、有給休暇が付与されます。

ここでいう「所定労働日」とは、就業規則や勤務シフトで定められた勤務日のことを指します。また、この「8割」という数字が、有給休暇を計算する上での鍵を握っています。

出勤率8割以上の重要性

では、なぜ出勤率が8割以上でなければならないのでしょうか。
これは、従業員が一定の期間、企業に対して貢献しているという証として用いられます。

たとえば、1年間で所定労働日が250日あった場合、少なくとも200日(250日の8割)は出勤している必要があります。

出勤率が8割未満だと、法的には有給休暇を付与する義務は発生しません。これは、社員が十分な勤務をしていないと判断されるためです。

しかし、この出勤率には、有給休暇を取得した日や、産前産後休業や育児休業など、実際には休んでいても出勤として計算されるケースや、休職期間など所定労働日数から除外するケースもあるので、注意が必要です。出勤率の計算は、一見単純に見えても、実際には複雑な要素を含んでいます。

2.出勤率が足りない場合の有給休暇対応

社員の出勤率が基準に達していない場合、有給休暇の管理はどのように行うべきでしょうか?特に中小企業では、良い人材の確保や定着のためにも、個々の社員の状況に応じた柔軟な対応が求められます。

出勤率が8割未満の社員へのアプローチ

出勤率が8割未満の社員には、まずその背景を理解することが大切です。病気、家庭の事情、あるいはワークライフバランスの問題など、様々な理由が考えられます。ここで大切なのは、個々の事情を踏まえた上で、どのように対応するかを検討することです。短時間勤務やリモートワークの導入など、柔軟な働き方の提案も一つの解決策になります。

また、法的には有給休暇を付与する必要がない場合でも、社員のモチベーション維持や健康を考慮して、一定の休暇を提供することは良い人材管理の一環です。

足りない出勤率と有給休暇の関係

出勤率が基準に満たない場合でも、企業文化や労働環境に応じて、有給休暇を提供することは可能です。例えば、社員の健康やプライベートを重視する企業風土であれば、出勤率が低い社員に対しても、必要に応じて休暇を提供することが望ましいでしょう。

出勤率が低い社員のケースでは、個別の面談を通じて、その原因を探り、適切な支援を提供することが重要です。個々の社員の状況に対する理解と適切な対応は、組織全体の雰囲気や社員の満足度にも良い影響を与えます。

3.出勤率の計算:有給休暇に影響する要素

有給休暇の管理において、出勤率の正確な計算は重要です。出勤率は、実際の勤務状況だけでなく、さまざまな特例も考慮に入れる必要があります。

休んでいるのにもかかわらず、出勤日として計算されるケース

以下のケースでは、実際には休んでいるものの、有給出勤率の計算上は出勤日として計算されます。

遅刻や早退した日:
休みではありませんが、遅刻や早退をした日も、出勤率の計算では通常の出勤日として扱われます。

有給休暇を取得した日:
有給休暇を使用した日は、出勤率の計算上、出勤したことになります。

産前休業、産後休業、育児休業、介護休業:
これらの休業も、出勤日としてカウントされます。

業務上の病気やケガによる休業:
労働者が業務上の理由で休業する場合も、出勤日として扱います。

これらのケースを考慮することで、実際の出勤状況よりも高い出勤率が計算されることがあります。

所定労働日数に含まれないケース

一方で、以下のようなケースは労働日数としてカウントせず、出勤率の計算からも除外されます。

休職期間:
休職中は、全労働日数から除外されます。

休日出勤した日:
会社の定める休日に出勤した日も、全労働日数には含まれません。

使用者の責に帰すべき事由による休業:
会社の責任による休業日は、全労働日数に含まれないことがあります。

正当なストライキや争議行為による休業:
ストライキなどの労働争議による休業も、全労働日数からは除外されます。

公民権の行使のための休日:
公民権行使のための休日も、全労働日数には含まれません。

これらの特例を考慮に入れることで、出勤率の計算はより複雑になりますが、正確な出勤率の把握が可能になります。結果として、有給休暇の適切な管理につながるのです。

4.有給休暇の出勤率:間違いやすい複雑なケース

有給休暇の出勤率を計算する際、経営者が直面するのはしばしば複雑で間違いやすいケースです。特に中小企業では、これらのケースへの適切な対応が、良い人材の確保や定着に重要な役割を果たします。

休日出勤と有給休暇の扱い:休日出勤しても有給の出勤率はノーカウント?

休日出勤について、多くの従業員や経営者は疑問を抱くかもしれません。特に、出勤しているにも関わらず、有給休暇の出勤率にはカウントされないことが違和感を生む原因となります。

休日は、本来、従業員に労働義務が無い日です。そのため、休日出勤した日は所定労働日数には含まれず、出勤率の計算上ではカウントされないのです。この点は、従業員への説明時に混乱が生じないよう、明確にする必要があります。

では、休日出勤による振替休日はどうなるのでしょうか?
この場合、振替休日は元々の休日と置き換わります。つまり、休日出勤した日は通常の労働日としてカウントされ、振替休日を取得した日は休日として扱われます。結果として、振替休日を取った場合は、休日出勤した日は出勤日として正しくカウントされることになります。

このような複雑なケースでは、従業員に対して透明で理解しやすい説明を行うことが、労働者との良好な関係を維持する鍵となります。

休職期間と有給休暇の計算:休んでいるのにノーカウントっておかしくない?

休職期間中の有給休暇の取り扱いについては、経営者や従業員にとって理解しにくい部分があります。

休職期間は、全労働日数に含まれないため、休職中や休職から復帰した従業員の有給休暇は、休職期間を除外した上で所定労働日数と出勤日数に基づいて計算されます。


しかし、これには違和感を覚える人もいるでしょう。
通常、休職はケガや病気などの理由で発生します。同じ理由で休んでいても、欠勤と休職では扱いが異なります。

欠勤の場合、労働義務があるにもかかわらず出勤しなかったと見なされ、所定労働日数からは除外されません。

しかし、休職の場合は労働義務が免除され、所定労働日数にも含まれません。これにより、同じように休んでいても、その意味が全く異なることになります。

このような複雑な状況を理解し、適切に対応することは、経営者にとって重要な課題です。休職期間の扱いについては、従業員への説明を丁寧に行い、混乱や誤解を避けるための配慮が求められます。

まとめ:有給休暇の複雑なケースへの理解と対応

有給休暇の管理においては、出勤率の計算や休職期間の扱いなど、複雑で理解しにくいケースがしばしばあります。経営者としては、これらの複雑な事例に適切に対応することが重要です。

休日出勤や休職期間の扱いは、従業員の権利と企業の義務のバランスを取る上で特に注意が必要です。これらのケースに対して、法的な要件を遵守しつつも、従業員の事情に配慮した対応を行うことが求められます。また、従業員に対する透明でわかりやすい説明を行うことで、不要な誤解や不満を防ぐことができます。

有給休暇の適切な管理は、従業員の満足度を高め、良好な労働環境の維持に寄与します。経営者として、これらの複雑なケースへの理解を深め、柔軟かつ公正な人事管理を心掛けることが、企業の成功に繋がるのです。


【関連記事はこちら】

基本給のみで良い?残業代、歩合給など有給休暇の給料計算を社労士が解説

有給を休日にあてるのは違法?中小企業社長が知るべき法律の真実

中途入社社員に有給はいつから?中小企業の経営者向けガイド

有給5日の取得義務、期間はいつからいつまで?中小企業社長の疑問に社労士が回答

お知らせ一覧に戻る

CONTACT
お問い合わせ

採用・定着・人事労務など
お気軽にご相談ください

※個人の方からのお問い合わせは
 受付しておりません。ご了承下さい。