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有給5日の取得義務、期間はいつからいつまで?中小企業社長の疑問に社労士が回答

有給休暇5日の取得義務、その期間は基準日(有給が発生する日)から1年間と定められています。しかし、基準日を前倒しする場合や分割付与する場合などがあり、その取扱いには注意が必要です。今回は、社労士が基準日のパターン別での取得期間や注意点についてわかりやすく解説します。

1.有給休暇5日の取得義務とは?

中小企業の社長さん。今回は、社長として絶対に知っておくべき「有給休暇5日の取得義務」についてお話ししましょう。

2019年の働き方改革以来、従業員が年に最低5日の有給休暇を取得することが法律で義務付けられています。この制度は、従業員のメンタルとフィジカルの健康を守り、仕事とプライベートのバランスを取るためにとても重要です。


この記事は、付与された有給休暇の内、5日の取得義務について解説しています。
有給休暇付与についてはこちらの記事をご覧ください。
【中途入社社員に有給はいつから?中小企業の経営者向けガイド】

中小企業に必須の労働法理解

特に中小企業では、この「有給5日の取得義務」を知らない場合が多いようです。しかし、法律を守らなければ、罰則を受ける可能性もあります。

従業員が10日以上の有給休暇を獲得すると、そのうち5日は必ず取得することが義務化されているんです。つまり、社長としては、従業員がこれらの休暇を計画的に取れるよう、就業規則の整備や従業員への周知が不可欠です。

有給休暇の基本ルール

さて、有給休暇の基本ルールをおさらいしましょう。

従業員が入社して6か月が経過し、かつ所定勤務日の8割以上に出勤していれば、最低10日間の年次有給休暇が付与されます。ここで重要なのは、勤続年数が長くなるにつれて休暇日数も増加すること。例えば、6年半勤務すると、有給休暇は20日になります。

そして、重要なのが「有給5日の取得義務」です。
企業は従業員に対して、付与された有給休暇のうち最低5日間は取得させる義務があります。これは従業員が自ら希望するタイミングで休暇を取れるようにするためのもので、従業員のリフレッシュやワークライフバランスの促進を図ることが狙いです。

この制度は、単に法律を遵守するためだけではなく、従業員が長期的に健康で活力を持って働ける環境を作るためにも非常に重要です。

社長としては、法律遵守はもちろん、従業員の健康と福祉を考慮した経営を心がけることが求められます。これにより、従業員の満足度が高まり、結果的に企業の生産性向上にもつながるのです。

従業員が休みやすい環境を整えることは、企業文化の育成にも寄与します。従業員一人ひとりが充実した休暇を取ることができれば、それは企業全体のモチベーション向上にも繋がります。ですから、有給休暇の管理は、単なる義務の遂行以上の意味を持つのです。

中小企業の社長さん、この機会に、従業員の休暇取得に関するルールと管理方法を見直し、より良い職場環境を目指しましょう。従業員が休暇を十分に活用できるような体制を整えることが、長期的な企業成長への道となるでしょう。

2.有給5日取得義務の対象者は?

「有給5日の取得義務」は、10日以上有給休暇が付与される従業員が対象になります。
では、10日以上付与されるのは具体的にどのような従業員でしょうか?具体的に見ていきましょう。

取得義務が発生する従業員の条件

取得義務が適用されるのは、上図の赤枠で囲んだ部分、具体的には以下の条件に該当する従業員です。

■週5日勤務の従業員(正社員、契約社員、パートタイマー):
正社員、契約社員、パートタイマーいずれの場合も、週5日勤務の従業員であれば、入社後6か月経過時点で出勤率が8割を超えると、10日間の有給休暇が付与されます。そのため、有給5日の取得義務が発生します。

■週30時間以上勤務のパートタイマー:
週4日以下の勤務であっても、入社後6ヶ月が経過し、所定の労働時間が週30時間以上のパートタイマーも、10日間の有給休暇を取得できるため、有給5日取得義務の対象となります。

■週4日出勤のパートタイマー(入社後3年半経過):
入社後3年半が経過し、直近1年の出勤率が8割を超えた週4日出勤のパートタイマーも、10日の有給休暇を取得できます。それまでの有給休暇は10日に達しない為、義務の対象外です。

■週3日出勤のパートタイマー(入社後5年半経過):
入社後5年半経過して初めて10日の有給休暇が付与されます。それまでは、10日に達しないため、この時点では義務の対象外です。

週2日以下の勤務のパートタイマーは、最高でも有給休暇の付与日数が10日に達しないため、取得義務の対象外となります。

社長が把握すべきポイント

これらの情報を踏まえ、社長としては従業員の勤務形態や勤務状況を正確に把握し、適切な有給休暇の管理を行うことが重要です。特に、従業員が有給休暇を取得しやすい環境を整え、促進することが求められます。これにより、従業員の満足度と企業の生産性の向上が期待できます。

3.有給5日の対象期間はいつからいつまで?

次に、従業員の有給休暇の対象期間について考えてみましょう。具体的に、有給5日はいつからいつまでに取ればいいのでしょうか?

その答えは、有給休暇発生(基準日)から1年間です。
具体的には、従業員が入社してから6か月経過した日が基準日で、その日から1年間が有給休暇の対象期間になります。ただし、基準日の設定にはいくつかのパターンがあります。

原則:基準日が入社後6か月経過した日の場合

まずは原則のパターン。比較的わかりやすいです。

例えば、

4月1日入社の場合:
基準日は同年の10月1日。翌年の9月30日までが有給休暇の対象期間です。

5月10日入社の場合:
基準日は11月10日。翌年の11月9日までが有給休暇の対象期間です。

中小企業の場合、多くはこのケースを採用しているかと思います。

基準日を統一した場合

中小企業の場合、大半が途中入社です。そうなると従業員によって基準日が異なり、管理が煩雑になるため、基準日を会社全体で統一することもできます。例えば:

4月1日入社の場合:
基準日は10月1日。翌年の9月30日までが対象期間です。

5月10日入社の場合:
基準日を10月1日に前倒し。翌年の9月30日までが対象期間です。

このケースも、それほど複雑ではないでしょう。

基準日が1年目と2年目で変わる場合

このケースでは、従業員が入社して最初の年(1年目)は通常通り入社後6か月が基準日となりますが、2年目以降は企業が基準日を統一する場合に適用されます。

・1年目の基準日
例えば、従業員が4月1日に入社した場合、
1年目の基準日は入社後6か月経過する10月1日となります。

そのため、この日から翌年の9月30日までが有給休暇の対象期間です。
この期間内に従業員は通常、5日間の有給休暇を取得する義務があります。

・2年目の基準日
会社が全従業員の基準日を4月1日に統一している場合、2年目の基準日は翌年の4月1日に変更されます。
その結果、この日から翌翌年の3月31日までが新たな有給休暇の対象期間となります。

・重複期間と取得義務
この場合、2年目の4月1日から9月30日までの6か月間(1年目の基準日から2年目の基準日までの期間)が重複します。

通常、従業員は2年間で合計10日の有給休暇を取得する義務がありますが、この重複期間のため、実際には1年半の期間で7.5日の有給休暇を取得する必要があります。

このような場合、従業員の有給休暇の取得状況を正確に把握し、適切に管理することが非常に重要です。重複期間における有給休暇の取得義務が変化するため、企業は従業員ごとの入社日や基準日を正確に理解し、有給休暇の取得計画を適切に立てる必要があります。

有給の一部前倒しで分割付与した場合の取り扱い

分割して前倒しで有給休暇を付与する場合、付与日数の合計が10日に達した日からの1年間に、5日間の有給休暇の指定義務が発生します。

この点は、従業員と企業双方にとって重要なポイントです。

例として、4月1日に入社した従業員に対して、
入社日に5日間の有給休暇を前倒しで付与し、
その後の10月1日に残りの5日間を付与するケースを考えましょう。

この場合、10月1日が付与日数の合計が10日に達した日となります。

そのため、この日(10月1日)から翌年の9月30日までが5日間の有給休暇の取得義務がかかる期間となります。

・労働者が自ら取得した有給休暇の控除
重要なのは、従業員が当該日以前に、分割して前倒しで付与された有給休暇を自ら取得していた場合、その取得した日数を5日の指定義務から控除できるということです。

上記の例で言えば、従業員が4月1日から9月30日までの間に前倒しで付与された5日間の有給休暇を全てまたは一部利用していた場合、それらの日数は5日間の取得義務期間中の有給休暇の取得日数から控除することが可能です。

このように、分割で前倒し付与した場合の有給休暇の取り扱いには特別な注意が必要です。従業員が早期に休暇を取得できるメリットがある一方で、企業側はこれらの休暇の管理において正確な記録と計算を行う必要があります。

4.有給休暇が取得できない時の適切な対応

有給休暇の取得は、労働者の権利として重要です。しかし、実際には取得が難しい場合もあります。こうした状況における適切な対処法について解説します。

有給5日取れなかった時の報告、どうする?

有給休暇が取得できなかった場合、労働基準監督署への報告が求められることがあります。この報告は、以下の点を考慮する必要があります。

罰金のリスク:
有給休暇5日分が取得できなかった場合、労働者1人につき最大30万円の罰金が科せられることがあります。

虚偽報告の問題:
罰金を回避するために、虚偽の報告をすることを頭によぎることもあるかもしれません。

福岡・久留米の建設会社の例では、労働基準監督署の調査時に虚偽の報告を行ったため、担当課長が書類送検されました。

虚偽の報告は絶対ダメ!正直な報告の重要性

労働基準監督署への報告においては、正直な報告が非常に重要です。労働新聞に掲載されていた久留米労働基準監督署のコメントは示唆に富んでいます。

初回の報告:
年休取得は義務化されてから日も浅く、正直に報告してもらえれば、最初は即座に司法処分にはしない。改善を求める是正勧告が行われることが多い。

虚偽報告のリスク:
虚偽の報告は信用を損ね、悪質と判断される可能性があり、その場合は司法処分を避けられない。

有給休暇の取得は労働者の基本的権利です。しかし、取得できない場合は正直な報告が最も適切な対処法となります。是正勧告を受ければ、改善することが可能です。会社としても、労働基準監督署との信頼関係を築くために、真実を伝えることが重要です。

年5日の有給休暇、うまく取得させる方法

従業員に年5日の有給休暇を取得させることは、法的にも企業の責任となっています。しかし、実際には従業員が自発的に休暇を取らないことも多いです。

こうした場合、会社はその従業員に対して、最終的には取得時季を指定する権利と言って、会社側から具体的な日を指定して休暇の取得を促すこともできます。
具体的にには、以下の方法で進められてはいかがでしょうか。

有給休暇取得の促進策

有給休暇を取得しない従業員に対して、企業はどのように対応すべきでしょうか。まずは、従業員の希望を尊重しつつ、休暇の取得を促すことが大切です。以下のような方法が考えられます。

取得促進の通知:
社内でのアナウンスやメールを通じて、有給休暇の取得を促す。

事前の計画:
休暇の取得計画を立て、従業員に提案する。

勤務体系の見直し:
従業員が休暇を取りやすい勤務体系の導入を検討する。

実際の事例を参考に

他の企業がどのように有給休暇の取得を促しているか、具体的な事例を見てみましょう。成功事例を知ることで、新たな取り組みのヒントが得られるかもしれません。

フレックスタイム制の導入:
柔軟な勤務時間を設け、従業員が自分のライフスタイルに合わせて休暇を取りやすくする。

有給休暇取得推進キャンペーン:
期間内に有給休暇を取得した従業員に対して特典を設ける。

上司のロールモデル:
管理職が積極的に有給休暇を取ることで、従業員にも良い影響を与える。

従業員が自ら有給休暇を取得することは、彼らの健康や仕事へのモチベーションに直結します。企業は、法的な責任を果たすとともに、従業員の福利厚生を向上させるためにも、積極的に有給休暇の取得を促進すべきです。

まとめ:経営者の視点で見る、有給休暇の適切な管理

企業経営において、従業員の有給休暇管理は重要な課題です。
経営者としての責任と法令遵守の観点から、この問題をどのように捉え、対処すべきかをまとめてみましょう。

社長としての責任と対策

経営者として、従業員の権利を尊重し、健全な労働環境を提供することは大きな責任です。有給休暇の適切な管理には以下のような対策が必要です。

従業員の意識向上:
有給休暇の重要性について従業員への教育を強化し、積極的な休暇取得を促す。

法令に基づいた管理体制:
労働基準法等の法令に則った休暇管理システムの整備。

柔軟な休暇取得の促進:
従業員が休暇を取りやすい環境を作るため、柔軟な勤務体系の導入や休暇取得の推進。

法令遵守の重要性

有給休暇の管理においては、法令遵守が不可欠です。適切な休暇管理は法的リスクを減らし、企業の信頼性を高めます。

法的責任の認識:
労働基準法に基づく有給休暇の取得義務を理解し、遵守する。

違反時のリスク回避:
法令違反による罰金や信用失墜のリスクを回避するための適切な対策を講じる。

定期的な法令の確認と更新:
法律の変更に伴い、休暇管理の方針を定期的に見直し、更新する。

経営者としての責任と法令遵守は、健全な企業経営の基盤です。従業員の権利を守り、法令を遵守することで、企業の持続可能な発展を支えます。



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