NEWS お知らせ

傷病手当金:出勤と欠勤を繰り返す社員はいつまで支給されるのか?

健康保険の傷病手当金、出勤と欠勤を繰り返す社員の場合、支給期間はどうなるのでしょうか?出勤をしている日は、原則として支給を受けることができません。ですが、支給期間の上限である1年6か月にはカウントされません。この記事では、傷病手当金の基本からわかりやすく解説します。

傷病手当金と出勤・欠勤の繰り返し:基本知識

社労士の私が、中小企業の社長に特にお伝えしたいことがあります。それは、従業員が病気やケガで出勤と欠勤を繰り返す場合の傷病手当金の基本知識です。この制度は社員の健康と生活を守る大切なサポートとなります。では、傷病手当金って具体的に何なのか、そしてどんなときに支給されるのか、一緒に見ていきましょう。

傷病手当金とは何か:定義と対象

結論として、傷病手当金は、病気やケガにより仕事を休む必要がある社員が経済的な支援を受けるための制度です。この支給金は、社員が財政的な不安なく療養に集中できるよう、3日間の待機期間を経た後に支給が開始され、その後最大で1年6ヶ月の期間、給与の補填として受け取ることができます。

2022年1月の改正により、この制度がさらに使いやすくなりました。
これまで、同一の病気やケガによる休業で、途中での出勤があったとしても、支給開始日から数えて1年6ヶ月の支給期間が設けられていました。

しかし、改正により通算して1年6ヶ月となり、途中で出勤があった場合、その期間を1年6か月にはカウントしないことになりました。
社員が一時的に復職しても再度休む必要が生じた際も、安心して傷病手当金を受け続けることが可能になったのです。

出勤と欠勤を繰り返す社員の立場

社員が病気やケガで出勤と欠勤を繰り返す場合、その社員は精神的にも経済的にも不安定になりがちです。ここで大切なのは、期間や頻度に関わらず、社員が適切な支給を受けられるよう会社がサポートすること。例えば、ガンのような病気で治療と仕事を両立させながら休職と復帰を繰り返すケースでは、社員と会社が密にコミュニケーションを取り、状況に応じた対応が必要です。

半日出勤やまだら出勤:具体例と対応

時には、病気やケガがあっても、社員が療養を続けながら半日だけ出勤したり、病状に合わせて不規則に出勤する「まだら出勤」を選択することがあります。このような場合、傷病手当金の支給にどのような影響があるのでしょうか。

傷病手当金は、社員が「労務不能」である日にのみ支給されるため、半日やまだら出勤をした日は、労務不能と認められず支給の対象外となります。

この制度の適用に際しては、社員個々の状況に応じた適切な対応が求められます。そのため、社長や人事担当者は、傷病手当金に関する最新の情報を常に把握し、社員とのコミュニケーションを密に取りながら、柔軟な対応を心がけるべきです。社員が安心して療養に専念し、健康を取り戻した上での職場復帰を目指すことが、最終的には企業にとってもプラスとなります。

傷病手当金の申請と受給:必要な手続きと期間

社員が病気やケガで長期間休むとき、経済的な心配も大きいですよね。そんな時に役立つのが傷病手当金です。でも、実際には申請から受給までの手続きや期間がよく分からない…。そこで今回は、傷病手当金の申請と受給に必要な手続きとその期間について、わかりやすく解説します!

まずは基本から:協会けんぽと傷病手当金の支給条件

傷病手当金は、健康保険に加入している社員が、病気やケガで仕事を休んだ時に受け取れる支援金です。この給付は、協会けんぽ(または健康保険組合)を通じて行われます。

支給の条件としては、社員が「労務不能」になっていること、すなわち、病気やケガで全く働けない状態が必要です。加えて、給与の支給がない、もしくはあっても傷病手当金より少ない場合に差額が支給されます。

なお、「労務不能」であることは医師の証明によります。体調不良で仕事ができる状態でないからと、通院せずに自宅で療養しているだけでは傷病手当金が支給されません。

体調を崩して休むことは誰にでも起こりうること。しかし、驚くほど頻繁に、社員が通院せずに自宅でじっと療養しているケースに出くわします。これは、うつ病などのメンタルヘルスの問題で特に顕著です。病状が初期段階の場合、医療機関を訪れること自体が思いつかないことも少なくありません。

欠勤の報告を受けた際には、ただ状況を確認するだけでなく、労務管理の側面からも、傷病手当金の観点からも、社員が適切な医療を受けるよう促すことが大切です。これは単に給付金の問題を超え、社員の健康と職場復帰の可能性を左右することに他なりません。

申請の流れと必要書類:休業と傷病手当金の受給

傷病手当金を受け取るためには、以下のステップを踏みましょう。

医師の診断書の取得:
まず社員が医師から「労務不能」であるとの診断を受けます。

申請書の記入:
次に、協会けんぽから提供される傷病手当金支給申請書に、必要事項を記入します。
傷病手当金支給申請書は、4枚で1セットですが、4枚目(療養担当者記入用)は医療機関で記入してもらいます。

必要書類の提出:
診断書と申請書、その他必要な書類を協会けんぽに提出します。

協会けんぽの審査:
協会けんぽで書類が審査され、条件を満たしているか確認されます。

支給決定と受給:
審査を通過すると支給が決定され、指定された口座に傷病手当金が振り込まれます。


この申請プロセスには、3日間の待機期間があり、その後最長で1年6ヶ月の支給が可能です。ただし、2022年の改正により、この期間は通算で1年6ヶ月となりました。これにより、病気が再発したり慢性的に続いている場合でも、柔軟に支給を受けることが可能です。

【協会けんぽ:健康保険傷病手当金支給申請書はこちらから】

出勤と欠勤を繰り返すケースで傷病手当金がもらえない場合

では、出勤と欠勤を繰り返している場合はどうなるのでしょうか。
例えば、社員が数日間働いてまた数日間休むというパターンが続いた場合、傷病手当金の受給に影響が出る可能性があります。

まず基本的に、傷病手当金は「労務不能」であることが前提です。つまり、一定期間、まったく働けない状態である必要があります。社員が部分的にでも働いている場合、その日は労務不能とは見なされず、傷病手当金の支給対象外となります。

傷病手当金の支給には、特に支給期間の上限に関して注意が必要です。同一の疾患による支給は、最初の支給が開始されてから通算で1年6ヶ月が限度です。ここでポイントとなるのは、途中で出勤があったとしても、実際に傷病手当金を受給していた日数の合計が1年6ヶ月であることです。これにより、従業員は体調を見ながら無理なく職場復帰を目指すことが可能です。

さらに、新たに入社した社員については、前職で受けていた傷病手当金の期間も通算して考慮される点に留意が必要です。これは、転職により健康保険が変わった場合でも、傷病手当金の支給期間は引き継がれるためです。

したがって、新入社員が以前の職場で傷病手当金を受けていた場合、その期間も含めて1年6ヶ月の計算を行う必要があります。

従業員の健康状態や過去の傷病手当金の受給状況については、適宜確認を行い、不明な点があれば本人に尋ねるなどして情報を明確にしておくことが望ましいです。これにより、将来的なトラブルを避け、従業員が安心して治療に専念できる環境を提供することができます。

傷病手当金を受けて働く社員への対応:人事と会社の視点

傷病手当金の考え方は、療養のため労務不能になった方の健康と生活を守るための制度です。会社として、社員が手当金をもらいながら、円滑に職場復帰できるようにサポートする必要があります。ここでは、会社に求められる対応について解説します。

時短勤務や週末の出勤を組み合わせた傷病手当金の活用法

傷病手当金を受けながらも、社員が働ける状況にあるとき、会社はどのように対応すれば良いのでしょうか。例えば、社員が完全な回復には至っていないが、数時間の時短勤務や週末のみの出勤が可能な状態だとします。

この場合、会社としては、社員の健康と療養を第一に考えつつも、その能力を活かせる方法を模索する必要があります。

時短勤務や週末の出勤は、社員が徐々に仕事に復帰するためのステップとして有効です。

これにより、社員は療養を続けながらも、職場とのつながりを保ち、仕事へのモチベーションを維持することができます。ただし、この場合、傷病手当金の支給条件に適合するかどうか、健康保険のルールを再確認することが肝心です。

傷病手当金受給後の社員の職場復帰とその課題

傷病手当金を受給していた社員が職場に戻る際、会社としても社員としても多くの課題に直面することがあります。復職初日から全てが以前と同じ、というわけにはいきません。社員の体調や能力、また職場の環境に合わせた復帰プログラムの構築が必要になるでしょう。

例えば、復帰初期は短時間勤務を設けたり、負担の少ない業務から徐々に本来の業務へシフトしていくなどの配慮が求められます。また、社員の不安を取り除くためにも、定期的な健康チェックやカウンセリングの提供が役立ちます。

まとめ

今回は出勤と欠勤を繰り返す社員の傷病手当金を受けるための基本知識と、円滑に職場復帰するための会社の対応について解説しました。お役立ていただけますと幸いです。


当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





【関連記事はこちら】

傷病手当金待期期間中や受給期間中にに有給休暇を取るメリットとデメリットは?

中小企業社長必見!休職中の従業員へのボーナス支給!傷病手当金への影響は?

“入社直後の従業員が病気に!中小企業社長のための傷病手当金ガイド”

お知らせ一覧に戻る

CONTACT
お問い合わせ

採用・定着・人事労務など
お気軽にご相談ください

※個人の方からのお問い合わせは
 受付しておりません。ご了承下さい。