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中小企業経営者必見!再雇用した定年退職者の給与と社会保険への対応策とは?

60歳以上で再雇用される従業員は、給与の減少が一般的です。しかし、社会保険料の調整は4か月遅れ、手取りは大幅ダウン。このギャップを埋めるのが「同日得喪」制度。その仕組み、対象者、メリット・デメリットを分かりやすくご紹介します。

定年再雇用における同日得喪の基本を知る

社会保険の同日得喪制度は、特に60歳以上で定年退職を迎え、それでも働き続けたいと希望する多くの労働者にとって、非常に重要な制度です。この制度は、労働者が一旦退職し、再雇用される際に給料が減少することが多い中で、手取りが減らないようにすぐに社会保険料の負担が減るように設けられたものです。この記事では、同日得喪の基本的な仕組み、それに関連する法律の観点、そして企業が直面する主な課題と解決策について解説します。

社会保険には、「同日得喪」とは全く異なる概念である「同月得喪」という制度もあります。名前が似ているために混同されがちですが、これらは全く異なる原則に基づいています。「同月得喪」は、入社した月に退職した従業員に適用されるもので、年齢は関係ありません。

【同月得喪はこちらをご覧ください】

社長必見!同月得喪(入社した月に退職)時の社会保険料とその還付のポイント

社会保険、同日得喪の仕組みとは?

同日得喪とは、労働者が雇用を失った日と同日に、新たな社会保険の資格を得ることができる制度です。これは、特に60歳以上で定年退職を迎えた後も働き続けたいと考えている方々にとって、重要な選択肢となります。この制度は、労働者が一旦退職し、再雇用で働く場合に、給料が減少することが多い中で、手取りが減らないようにすぐに社会保険料の負担が減るように設けられた特定制度です。

この制度のメリットは、給料が減少と社会保険料への反映のライムラグを最小限に抑え、労働者の負担を減らすことにあります。

通常、従業員の給与が大幅に減少すると、社会保険料は「随時改定(月額変更)」により調整され、標準報酬月額が改定されます。しかし、この随時改定システムでは、給与の減少が社会保険料に反映されるまでに4ヶ月かかってしまいます。このギャップは、給料の減少した労働者にとっては大きな負担となります。

そこで注目されるのが、60歳以上の労働者が退職後、再雇用される際に利用可能な「同日得喪」の制度です。この制度は、労働者が退職することで一旦社会保険の資格を喪失したものの、再雇用により同じ日に新たな社会保険の資格を取得することを可能にします。

これにより、新しい標準報酬月額が即座に適用され、給与の減少が直ちに社会保険料に反映されるのです。

さらに、随時改定(月額変更)の場合は2等級以上減少しなければ適用されませんが、同日即答の場合は1等級でも適用されます。


この方法では、1日のブランクもなく働き続ける60歳以上の労働者にとって、社会保険料の負担を迅速に軽減することができます。これは、労働者だけでなく、人件費の管理に慎重な中小企業経営者にとっても有益な制度と言えるでしょう。

「同日得喪」が適用される労働者の条件

「同日得喪」の制度は、60歳を超えてから退職し、その後、途切れることなく同一企業での再雇用を受ける全ての労働者に開かれています。ここで言う「退職後継続再雇用」とは、定年到達後に、1日の中断もなく同じ企業で働き続ける状況を指します。これは、60歳以上であれば定年以外も対象になります。
例えば定年時だけでなく、その後の有期労働契約の更新時にも適用されるものです。

また、企業に定年制がない場合でも、60歳を超えて正社員からパート勤務になる等で一旦退職する際には、この制度の恩恵を受けることができます。さらに、70歳に達すると、厚生年金保険の資格を失うことになりますが、健康保険には引き続き加入します。この場合でも、健康保険加入者は「同日得喪」の制度を利用することが可能です。

同日得喪の手続き方法と必要書類

再雇用された従業員がスムーズに新しい給与体系に基づく標準報酬月額に移行できるようにするためには、事業主はいくつかの重要な手続きを行う必要があります。まず、健康保険・厚生年金保険の「被保険者資格喪失届」と「被保険者資格取得届」を、再雇用の月から適用するために年金事務所に同時に提出する必要があります。

また、添付書類として「退職を証明する書類(就業規則の写しや退職辞令の写し等)」や「再雇用の事実を証明する書類(労働契約書、労働条件通知書など)」の準備が必要です。

社会保険の適用:同日得喪の手続きがもたらす影響

「同日得喪」という手続きは、従業員と経営者の双方に影響を及ぼします。このプロセスには、社会保険の変更が含まれ、その変更は企業の人事労務管理に一定の影響を与える可能性があります。以下では、社会保険の変更がどのように進行するのか、それが経営者や従業員にもたらすメリットとデメリット、そしてこの手続きをスムーズに進めるための適切な計画と準備の重要性について解説します。

社会保険変更の手続きの流れ

社会保険の変更プロセスは、従業員が退職し、再雇用される際に始まります。従業員が一度退職すると、通常、社会保険の資格を失います。しかし、「同日得喪」の手続きを利用することで、新しい雇用契約が開始される同じ日に新しい社会保険の資格が得られます。
このプロセスは、社会保険料の計算基準となる標準報酬月額の変更を可能にし、給与が減少した場合でもすぐに新しい月額が適用されるため、従業員の手取り額の大幅な変動を防ぐことができます。

経営者と従業員にとってのメリットとデメリット

「同日得喪」の制度は、経営者と従業員の双方にメリットをもたらします。経営者にとっては、社会保険料の負担が軽減され、人件費の管理がしやすくなるというメリットがあります。また、従業員にとっては、給与の減少が即座に社会保険料に反映されるため、収入の大幅な減少を未然に防ぐことができるという点が大きな利点です。

しかし、この制度にはデメリットもあります。会社側のデメリットは手続きが複雑さです。従業員にとってのデメリットは、健康保険と年金の受給額に影響が出る可能性があることです。
具体的には、傷病手当金の支給額が標準報酬月額に基づくため、これが下がれば支給額も減少します。また、社会保険料が減ることで、将来受け取る年金も下がる可能性があります。これは、生活保障と将来の資金計画に直接関わる問題であり、従業員自身が慎重に検討する必要があります。

「同日得喪」は任意の手続きであり、これらの利点と欠点を十分理解した上で、従業員自身の判断によって選択されるべきです。経営者としては、従業員にこの制度の全貌を透明に伝え、十分な情報提供のもとでの同意を得ることが重要です。

給与減少の実態:定年退職者と中小企業経営者のジレンマ

中小企業では、経営資源が限られているため、経営者は従業員の給与に関する難しい決断を迫られることがよくあります。特に、定年退職者を再雇用する際の給与設定は、企業の財務状況と従業員のモチベーションのバランスを取るデリケートな問題です。このセクションでは、給与カットがもたらす経済的影響、従業員のモチベーションの維持方法、そして経営者としての責任について詳しく解説します。

給与カットの背後にある経済的理由

給与の大幅なカットは、従業員にとって困難な状況をもたらしますが、中小企業経営者にとっても避けられない決断であることがしばしばです。経済的に厳しい時期や業績が低迷しているとき、企業は経費削減を迫られ、その結果、人件費のカットが選択されることがあります。

しかし、給与の減少は、従業員の生活水準やワークライフバランス、さらには職場でのパフォーマンスにも影響を与えるため、この決断は慎重に行われる必要があります。企業は、給与減少の影響を最小限に抑え、従業員が十分な生活を送れるようにするための補償策を検討するべきです。

従業員のモチベーションを維持する方法

給与は従業員が仕事に対して抱くエンゲージメントの大きな源泉です。そのため、給与の削減は、やる気の喪失というリスクを伴います。この問題を克服するために、経営者は従業員が仕事に対する熱意を失わないよう、様々な策を講じる必要があります。

具体的には、経験豊富な従業員に対して、新入社員のメンターや社内マニュアルの作成など、その知識を活かす役割を割り当てることが一つの方法です。これにより、彼らは自分の仕事が会社にとって価値あるものであると感じ、モチベーションの維持につながります。

また、キャリア向上の機会を提供したり、職場の環境を改善したりすることで、従業員の満足度を高めることも可能です。成果を適切に評価する文化を築くことは、従業員が目標に向かって努力する意欲を高めます。さらに、経営者自身が給与削減の背景や会社のビジョンについてオープンにコミュニケーションを取ることは、従業員の理解を深め、信頼関係を構築する上で不可欠です。

まとめ

今回は60歳以上のシニア社員が、定年再雇用等で給料が減少した時の社会保険の同日得喪について解説しました。
メリットとしては、給与の減少が即座に社会保険料に反映されることです。
一方で、傷病手当金の支給額が減少したり、将来受け取る年金額が下がるというデメリットもあります。メリット・デメリットを従業員に伝えることで制度を適切に活用していただきたいと思います。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。


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