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【実例で学ぶ】内定辞退に伴う損害賠償問題:中小企業の社長が取るべき行動

3月下旬、あるSNSでの投稿が大きな話題となりました。それは、入社直前にして内定を辞退するという内容。その通知方法が、たった1通のメールであり、「他の会社とのご縁を感じたため、貴社には入社できません」というものでした。中小企業の社長にとって、このような内定辞退は深刻な頭痛の種となっています。

今回は、かつて会社員時代に採用担当者として内定辞退の連絡を何度も受けた経験を持ち、現在は社会保険労務士および採用定着士として、中小企業の人材課題解決をサポートする専門家の立場から、内定辞退の問題について深掘りしていきます。中小企業が直面するこの課題を、どのように解決し、内定辞退というピンチを成長のチャンスへと変えていけるのかについて、具体的な方法を共有していきたいと思います。

1.内定と法的な立場の解説

中小企業の社長として、新卒採用の季節は一年で最も期待と不安が交錯する時期かもしれません。特に、「内定」という言葉が持つ重みと、それに伴う法的な意味合いをしっかりと理解しておくことは非常に重要です。では、まず「内定」とは法的にどのような状態なのでしょうか。

内定とは?法的にどのような状態なのか

まず「内定」とは何かについて考えてみましょう。
内定とは、このプロセスには大きく分けて2つの段階があり、それぞれに法的な意味合いが異なります。この段階を正しく理解することは、企業と求職者双方にとって非常に重要です。

■第1段階:採用を予定している(内々定)
まず第一の段階として、「内々定」があります。これは、企業が求職者に対して、将来の一定の時点での採用を前提とした意向を示すものです。この時点では正式な労働契約は結ばれていません。この「内々定」の段階では、企業は求職者に対して具体的な労働条件や入社日などを提示し、求職者はそれを検討する時間を持つことが一般的です。

■第2段階:採用を決定している(内定)
第二の段階は、求職者が企業からの採用の意向(内々定)を受け入れ、両者間で採用に関する合意が成立した状態を「内定」と呼びます。この段階で、実質的に労働契約が成立したと言えます。ただし、実際の労働開始(入社)は将来の予定された時点であるため、契約には「始期付解約権留保付労働契約」という特性があります。

これは、契約が成立しているものの、特定の条件(例えば、大学の卒業)が満たされない場合には、契約が解除される可能性があることを意味します。

このように、「内々定」と「内定」は、求職者と企業の間で成立する合意の段階において異なる意味を持ちます。特に中小企業の社長の方々は、これらの法的な立場を正確に理解し、適切な人材採用と定着の戦略を立てることが重要です。正しい理解と適切な対応を通じて、企業と求職者双方にとって最良の結果を導き出すことができるでしょう。

内定取り消しの可能性—企業側の権利と制限

内定取り消しの可能性について、企業側が最も慎重に考慮しなければならないのは、内定後に労働契約が成立している場合の取扱いです。内定とは労働契約の始期を将来に設定しているに過ぎないため、法的には労働契約が成立している状態とみなされます。このため、企業側からの単方的な内定取消しは、原則として解雇と同等の扱いを受けることになります。

解雇には、客観的かつ合理的な理由が必要であり、社会通念上相当であることが要求されます。この基準は、実際の従業員を解雇する場合と同様ですが、内定取消しにおいては、以下のような事情が客観的かつ合理的な理由として認められることがあります。

■卒業できない:
内定者が予定していた卒業資格を得られなかった場合、予定されていた労働契約の条件を満たせないため、内定取消しが可能となります。

■前提とする免許が取れなかった:
特定の職種で必要とされる資格や免許が取得できなかった場合、その職務を遂行することができないため、内定取消しの理由となり得ます。

■会社側に虚偽の経歴を伝えていた:
内定者が履歴書や職務経歴書に虚偽の情報を記載していたことが判明した場合、これは企業との間の信頼関係が根底から揺らぐことを意味します。その結果、企業は内定取消しを検討することになりますが、その虚偽の経歴がなければ内定を出さなかったと断言できるほど、重要なものである必要があります。つまり、虚偽の情報が採用決定において決定的な影響を与えたと判断される場合に限り、内定取消しの正当な理由となり得ます。

■病気やけがで仕事ができない:
内定者が重大な病気やけがを負い、予定されていた職務を遂行できなくなった場合、企業は内定を取消すことができる場合があります。

これらの条件下では、企業側が内定取消しを検討する際には、非常に重い判断が求められます。

内定辞退の法的リスク—内定者側の視点から

内定辞退を考える際に、内定者側から見た法的な視点も非常に重要です。特に、労働契約における解約に関する法律の理解は、内定辞退の際のリスク管理において不可欠と言えます。

■内定者側からの辞退と法的意味合い:
内定者が企業への入社を辞退する場合、その法的根拠となるのは民法第627条第1項です。これによると、雇用の期間に定めがない場合、労働契約をいつでも解約することができ、申し出から2週間後に契約が終了することになります。この規定は、正式な労働契約が結ばれた後の解約に関するものですが、内定と労働契約の成立を同等に考える場合、内定辞退もあこの規定に準じる形で考えることができます。

ただし、企業側から見た場合、内定者が入社直前に辞退を申し出ることは大きな問題となり得ます。特に、入社予定日が近いにも関わらず、やむを得ない事情がない場合の辞退は、企業にとって予期せぬ人員不足や採用活動の再開という形で損害を発生させる可能性があります。このような状況下では、企業が内定辞退により被った損害に対して、損害賠償を請求する可能性が生じます。

■企業側からの視点
例えば、4月1日に入社予定であったにも関わらず、3月20日過ぎになってからの辞退申し出は、企業側にとって非常に厳しい状況を招くことになります。この場合、企業は残された短期間で代替の人材を確保することが困難となり、その結果として生じる人手不足やプロジェクトの遅延などによる経済的損害について、内定者に対して損害賠償を請求することが考えられます。

しかし、このような損害賠償請求は、実際には企業と内定者との間での信頼関係の損失や社会的評価の低下といったリスクも伴うため、慎重に検討する必要があります。企業としては、内定辞退が発生した場合にも、その理由を丁寧に聞き取り、可能であれば双方にとって納得のいく解決を目指すことが望ましいでしょう。

内定辞退のプロセスを通じて、企業側が示す柔軟性や理解は、他の求職者や市場に対してもポジティブなメッセージを発信することになり、結果として企業ブランドの向上にも寄与する可能性があります。

2.内定辞退に伴う損害賠償事例の深堀り

内定辞退が引き起こす可能性のある損害賠償問題は、中小企業の社長にとって特に注意すべき課題です。採用プロセスは、企業にとって大きな投資と労力を要するため、内定辞退によって生じる損失は小さくありません。ここでは、内定辞退がもたらす損害賠償の事例と、その法的な側面について詳しく見ていきましょう。

実際の損害賠償請求事例とその結果

企業が内定辞退によって被った損害に対して損害賠償を請求するケースは稀ですが、実際にそのような事例が存在します。その中でも特に注目されるのが、「アイガー事件」です。
この事件は、内定者が入社直前に辞退し、企業が急遽代替の採用活動を行う必要が生じた場合に損害賠償が請求された典型例として知られています。

アイガー事件の背景には、内定者が入社前の研修中に担当課長から内定辞退を強要されたと主張し、会社に対して損害賠償を求めたことがありました。

これに対し、会社側は内定者の態度にやる気が感じられず、そのため指導を行っただけで内定辞退を強要したわけではないと反論しました。また、会社側は内定者が予定されていた入社日に出社しなかった行為を、信義則に著しく反するものとして、内定者に対して損害賠償を請求するという立場を取りました。

この事例では、最終的にはどちらの損害賠償請求も認められませんでしたが、この事件は内定辞退に伴うトラブルが、どのように法的な争いに発展する可能性があるかを示す良い例です。特に、内定者と企業の間でのコミュニケーションが不十分であったり、誤解が生じている場合には、予期せぬ法的な問題に発展するリスクがあります。

この事例から学ぶべき点は、内定者と企業との間で発生した問題を早期に解決し、誤解を解消するための努力が非常に重要であるということです。また、企業側は内定者に対する指導やコミュニケーションを行う際に、その方法や内容が内定者にとって適切であるかどうかを常に考慮する必要があります。そして、内定辞退の際には、可能な限り早めに、かつ誠実な理由をもって通知することが、双方にとって最良の解決策となるでしょう。

損害賠償請求:求人広告費や研修費用は認められるか?

損害賠償請求において、求人広告費や研修費用が認められるかどうかは、多くの中小企業経営者にとって気になる点の一つです。特に、内定辞退が発生した場合に、これらの費用を損害賠償として請求できるのか、法的な基準はどうなっているのか、という疑問が生じます。

■損害賠償の計算方法と直接損害
損害賠償の計算において重要なのは、「労働するという約束の不履行によって直接的に発生する損害」、つまり直接損害の考慮です。退職した社員に対して損害賠償請求した事例では、この直接損害の概念が重要なポイントとなりました。内定辞退の場合も、この直接損害の観点から損害の有無が判断されます。

【実際の事例はこちらをご覧ください】
社長必見!有期雇用契約:自己都合退職する契約社員に損害賠償できるか?

■採用費用や研修費用の扱い
求人広告や研修にかかった費用については、これらが直接損害にあたるかどうかが問題となります。一般的に、これらの費用は、労働契約が履行されなかった結果として直接的に生じた損害とは見なされにくいです。これは、これらの費用が労働契約の履行に先立って発生したものであり、直接的な損害とは異なる性質のものであるためです。

■名刺や社宅の解約費用
一方で、名刺や名札など、具体的な内定者のために準備された備品に関しては、損害賠償として認められる可能性があります。これは、これらの備品が直接的にその内定者のために準備されたものであり、その準備にかかった費用は内定辞退によって無駄になった直接損害と見なされる可能性があるからです。

また、借り上げ社宅の解約に伴う費用についても、内定辞退の申し入れから2週間に限り、直接的な損害として損害賠償として認められる可能性があります。

ただし、内定辞退の申し入れから入社予定日までの期間はもともと労働が予定されていませんので、入社予定日以降に実際に重なる期間に限られるということです。

例えば、内定辞退が3月21日に申し入れられたとします。この場合、申し入れから2週間後は4月4日ですが、入社予定日が4月1日である場合、実際に損害賠償を請求できるのは4月1日から4月4日までのわずかな期間だけと考えることができます。

■結論
これらの事例からわかるように、内定辞退に伴う損害賠償請求は、極めて限定的であり、多くの場合で少額にとどまる可能性が高いです。したがって、企業側としては、内定辞退が発生した際には、直接的な損害の範囲とその証明に注目し、慎重に損害賠償の請求を検討する必要があります。また、内定者との円滑なコミュニケーションを保ち、問題の早期解決を目指すことが、最終的には双方にとって最良の結果をもたらすでしょう。

入社承諾書の真の意味—ただの紙切れか?

内定時に企業側が内定者に入社承諾書のサインを求めるのは一般的な手続きです。

この承諾書には、「正当な理由なしに入社を辞退しません」という誓約事項が含まれていることが多くあります。しかし、法的な観点から見ると、民法の規定が優先されるため、入社予定日まで2週間以上の余裕があれば、内定者はいつでも辞退することが可能です。

また、直前の辞退に伴う損害賠償請求が認められたとしても、その範囲は極めて限定的で、しかも少額に留まることが一般的です。

このような背景から、入社承諾書に法的な拘束力がない、あるいは「ただの紙切れ」とみなされがちですが、この考え方には注意が必要です。入社承諾書にサインをしてもらうこと自体に、重要な意義があります。

まず、サインをもらうことで、内定者と企業間で入社の約束が形式的にも確定されることになります。これによって、内定者が入社意思を改めて明示することで、両者の間での合意がより明確になります。

さらに、サインをしてもらう行為は、心理的な拘束力を生み出します。内定者は、自身のサインによって一度は入社を約束したという事実を意識し、軽はずみにその決断を変更することに対して、ある程度の抵抗感を持つことになります。結果として、内定辞退の可能性を減少させる効果が期待できます。

したがって、入社承諾書は「ただの紙切れ」と単純に片付けることはできず、企業と内定者との間での約束を形式化し、内定辞退を抑制する効果を持つ重要な文書と言えるでしょう。

内定時に、入社承諾書という書面を交わさずに口頭での約束のみであるという企業は、まずは書面を交わすことから始めていただきたいと思います。

損害賠償請求の判断基準—損害賠償請求するメリット、デメリット

損害賠償請求をするかどうかの判断は、企業にとって簡単なものではありません。メリットとしては、実際に被った損害の一部または全額を回収できる可能性がありますが、前述しましたように極めて限定的で少額になると考えられます。

また、デメリットも考慮する必要があります。損害賠償請求は、企業のブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性がありますし、法的な手続きには時間とコストがかかります。

このように考えると、内定辞退に対する損害賠償請求は、メリットよりもデメリットがはるかに大きいと考えざるを得ません。内定辞退に関する事例が極めて少ないのもそのためでしょう。

ただし、その内定辞退が会社にとってデメリットを踏まえても看過できないものである場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

最後に、内定辞退は企業が人材を採用する過程で直面する可能性のある多くの課題の一つに過ぎません。このような問題に対処するためには、採用プロセスの初期段階から、内定者とのコミュニケーションを密に取り、明確な合意形成を目指すことが重要です。また、労働市場や法律環境の変化にも敏感に対応し、柔軟かつ公平な採用方針を維持することが、長期的な企業成長にとって不可欠であると言えるでしょう。

3.内定辞退率上昇の背景と企業の対応

近年、内定辞退率の上昇は多くの企業が直面する課題の一つとなっています。特に中小企業では、この問題によって採用活動や人材確保に大きな影響が出ています。ここでは、内定辞退率の上昇背景と企業が取るべき対応策について見ていきましょう。

内定辞退率の上昇とその背景

採用市場での企業と求職者のパワーバランスを振り返ると、バブル経済の数年間を除いて、高度成長期の1970年代から長い間企業優位の時代が続いていました。
しかし、2014年から2015年頃を境に、求職者優位の時代へと移行しました。これにより、企業側にとっての内定辞退リスクが高まる傾向にあります。

就職みらい研究所が行った「就職プロセス調査」によれば、2024年卒の内定辞退率は63.6%に上っています。

これは、2023年卒での65.8%、2022年卒での61.1%、さらに2021年卒での57.5%と比較しても、年々上昇傾向にあることを示しています。

特に、2013年卒の内定辞退率が45.8%だったことを鑑みると、内定辞退がより一般的な現象へと変化していることが明らかです。

このように、求職者優位の時代の到来とともに、内定辞退率の上昇は、企業にとって避けられない課題となっています。これに対応するためには、企業がより魅力的な職場環境を提供し、求職者とのコミュニケーションを強化するなど、新しい採用戦略を模索する必要があるでしょう。

内定辞退されるリスクと企業の備え

内定辞退率の上昇は、企業側にとって複数のリスクをもたらします。採用活動の再開や代替人材の確保にかかるコストの増加、業務の遅延などが考えられます。これらのリスクを最小限に抑えるためには、内定者とのコミュニケーションを密にすること、内定後のフォローアップを強化することが重要です。

また、求職者のニーズや価値観を理解し、企業文化や働き方をアピールすることも有効な対策となります。これにより、内定者が他の選択肢に目を向ける前に、企業の魅力を再認識させることができます。

内定辞退された際のベストプラクティス

内定辞退された場合、まずは冷静に対応することが大切です。内定辞退の理由を聞き出し、今後の採用活動や人材育成に生かすべきフィードバックを得ることができれば、企業側にとっても貴重な学びとなります。

また、内定辞退が発生した際には、迅速に代替の採用活動を行うことが求められます。そのためには、採用プロセスを柔軟に保ち、常に複数の候補者を確保しておくことが有効です。

最後に、内定辞退率の上昇は避けられない傾向にあるとしても、企業が採用戦略と人材管理の質を高めることで、内定辞退による影響を最小限に抑えることが可能です。

次のセクションでは、内定辞退のを最小限に抑える具体的対策について解説します。

4.内定辞退を防ぐための総合的な戦略と具体的対策

内定辞退率の上昇に対応するため、企業は採用から定着に至るまでのプロセス全体を見直し、具体的な対策を講じる必要があります。特に中小企業では、資源の限りがある中で効果的に内定辞退を防ぐ戦略を立てることが求められます。

労働条件の改善とその課題

労働条件の向上は、内定辞退を防ぐ上で最も直接的かつ効果的な手段の一つです。近年、特に大手企業を中心に賃金の大幅な引き上げが行われています。これは、優秀な人材の獲得が一層困難になってきている現状に対する対策として、賃金アップという切実な手段が取られていることの表れです。

また、現代のビジネスパーソンの間では、ライフワークバランスへの関心が高まっています。この点を踏まえると、残業時間の削減もまた、魅力的な労働条件を整えるための有効な策と言えるでしょう。

実際に、総合転職エージェント・ワークポートが20~40代のビジネスパーソンを対象に行った「残業に関する意識調査」では、「残業をしたくない」と回答した割合が77.8%にも上り、「手当が出ても残業をしたくない」という声も62.5%に達しています。

このデータからも、働き手の多くが働き方の質を重視していることが窺えます。同様に、有給休暇を取得しやすい環境を整えることも、労働条件の改善として重要なポイントです。

【詳しくはこちらから】
ビジネスパーソンの「残業」に関する意識調査(エージェント・ワークポート)

しかし、こうした改善策は、資源に限りがある中小企業にとっては実現が難しい側面もあります。大手企業に比べて、賃金を大幅に引き上げることや、残業時間の大幅な削減、休暇取得の促進など、短期間で大きな改革を行うことは現実的ではないかもしれません。

このように、労働条件の改善は内定辞退率を下げる有効な手段ではありますが、中小企業ではその実現に向けた課題も多いことを認識し、長期的な視点で取り組む必要があるでしょう。

内定辞退を防ぐための採用戦略【志望度を高める採用選考の工夫】

内定辞退率を低減させるためには、採用プロセスを通して求職者を企業のファンに変える戦略が鍵を握ります。特に中小企業においては、企業の魅力や将来像を直接伝えるために、社長が面接の初期段階から積極的に関わることが推奨されます。

面接プロセスにおいては、面接官が自らを開示し、企業の価値観や目指す未来、求める職種の具体的な役割などを詳細に説明することで、企業と求職者との深い相互理解を促進します。

伝統的な面接が求職者の能力や適合性を厳しく評価する場であるのに対し、このアプローチは企業の人間性やビジョンを前面に出し、求職者にポジティブなイメージを植え付けることを目指します。

このような面接のアプローチは、求職者に通常の面接では感じることのできない安心感や魅力を与え、結果として従来の採用プロセスの枠を超えたファン作りに繋がります。そのためには、面接の進め方についての原稿作成や面接官のトレーニングが必要となりますが、この取り組みは短期間で実現可能であり、結果的に内定辞退率の顕著な低下に寄与することが期待されます。

【求職者を企業のファンにする面接:具体的方法はこちらから】
社労士が解説する、採用面接の進め方・質問内容

内定者のエンゲージメントを深めるフォローアップ方法

内定辞退を未然に防ぐためには、内定者との関係をただ維持するだけでなく、彼らの企業へのエンゲージメントを積極的に高めていく必要があります。その鍵は、内定者が内定を受けてから入社するまでの間に、企業への帰属意識と熱意を育むことにあります。

一般的な取り組みとしては、内定者研修や懇親会が挙げられます。これらは、入社前に企業の理念や文化、必要なスキルなどを伝える貴重な機会であり、同時に、他の内定者や既存の社員との絆を深める場となります。こうした交流は、内定者が企業との一体感を感じることに寄与し、結果として内定辞退の可能性を減少させます。

超おススメ、内定者に採用業務のアルバイトは効果絶大

内定辞退を減らし、組織への強い帰属意識を育むために、内定者に採用業務を体験してもらうアプローチは、特に中小企業において効果的な戦略です。アルバイトとして一般的な業務を経験することも価値がありますが、採用業務への参加はその価値をさらに高めます。

特に、先輩社員へのインタビューやその内容を記事にする活動は、内定者が企業文化を深く理解し、自らもその一部と感じることができる貴重な機会です。この取り組みを通じて内定者は、企業の価値観や働きがいを実際の社員の声から学び、企業公式の説明や研修を超えた生きた情報を得ることができます。

このような経験は、内定者が自社の一員であるという実感を深め、外部からの見方では得られない独自の視点を持つことを可能にします。また、コミュニケーションスキルの向上や将来のリーダーとしての素養を育む絶好の機会ともなります。

内定者が採用業務に参加することで、企業文化や組織の方向性を深く理解し、自らがその一部として貢献できることに意義を見出します。このようにして、内定者と企業との間に強固な絆を築き、長期的な定着へと繋げることができるのです。中小企業では特に、一人ひとりの採用が将来に大きな影響を及ぼすため、この創造的なアプローチは、新しい人材との関係構築において非常に有効です。

まとめ

内定辞退は、特に中小企業にとって大きな打撃を与える問題です。しかし、今後も優秀な人材の確保が一層困難になっていく中で、この問題に積極的に取り組むことは、企業にとって非常に有益な方向に導く可能性があります。内定辞退をただの問題と捉えるのではなく、それをチャンスに変え、企業の成長につなげる機会として捉え直すことが重要です。

労働条件の改善や採用プロセスの見直し、内定者へのフォローアップの強化など、様々な対策を講じることで、内定辞退率を低減し、企業の魅力を高めることが可能です。特に、社長自らが面接に関わることで求職者を企業のファンに変える戦略や、内定者に採用業務への参加を促すことで、彼らの企業文化への理解を深め、帰属意識を醸成する取り組みは、長期的な人材定着への強力な推進力となります。

このように、内定辞退を防止するための戦略的な取り組みは、企業の持続的な成長に寄与するものです。優秀な人材を惹きつけ、定着させるためには、企業文化の魅力を最大限に伝え、内定者との関係構築に注力することが不可欠です。内定辞退という挑戦を、企業成長のためのチャンスに変えていくことで、中小企業はこれからの時代を生き抜く力をつけることができるでしょう。



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