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社労士が解説!「内々定大量取消問題」が教えてくれる中小企業の内定者対策

ある不動産ベンチャー企業が、内々定47名中21名を取り消したことが話題になりました。
当該企業はネット上では大バッシングを浴びていますが、中小企業にとってはヒントとなる要素満載です。
今回は、「内々定大量取消」の法的解釈と中小企業の内定者対対策について解説します。

■社労士が解説する、内定、内々定の取消をめぐる法的解釈

まず、内々定の取消をめぐる法的解釈について考えてみましょう。
実は、内定、内々定というのは法的に定義づけられているものではなく、会社と本人との労働契約に関する状態によります。

大きく2つの状態があります。

1 採用予定者
  まだ労働契約が成立しておらず、労働契約締結が「予定」させている者。
  内定にすることを口約束している状態等。
  いわゆる採用内々定者がこれに当たります。
  
2 採用決定者
  労働契約が成立し、その会社の従業員としての地位を取得した者。
  具体的には内定を通知し、入社誓約書を交わしている状態。
  ただし、効力の発生は卒業という条件や入社日の到来という始期の定めによる。
  いわゆる採用内定者はこれに当たります。

内定取消は解雇となる

採用内定は、採用が決定した状態で、労働契約が成立しているので、内定の取消は「解雇」に当たり、正当な理由が無ければ取消は無効(強制入社)になります。

正式な理由とは、次のようなものがあります。
1 条件付労働契約の場合で、その条件を充たさなかった場合
卒業や所定の免許・資格を取得が出来なかった場合等
2 採用取消事由を定めている場合で、その事由が発生した場合
  健康以上の発生等
3 その他不適格事由の発生
  犯罪行為を犯して逮捕、起訴される等

内々定取消は解雇にならない

一方、内々定は、あくまで採用が予定されている状態で、労働条件は成立していません。
なので、その取消は「解雇」には当たりませんので、解雇無効=強制入社の義務を負わず、金銭的な賠償で解決することになります。

■社労士が考察する!内々定大量取消を引き起こした本質的な原因とは?

以上のように内々定取消は、法的には「労働契約の解除」に該当せず、「解雇」云々という議論にはなりません。

ただし、世間からの批判は免れないことを認識しておく必要はあります。
小規模企業の場合、今回のベンチャー企業のようにネット上で大バッシングを浴びる可能性は低いにしても、口コミによるダメージは免れません。

そこで、今回の問題が起こった原因と、中小企業が今後取るべく対策について考えてみましょう。

選考から入社までの流れを整理すると

上図は採用選考から入社までの流れをファネルで表したもので、採用に至るまでには相当の離脱者が出ます。

採用選考から内々定(または直接内定)の段階では、企業側からお断りするケースもあれば、求職者側から辞退するケースもあります。

ただ、内々定から後のフローでは原則企業側からお断りすることは無く、内々定者(内定者)からの辞退のみとなります(今回のケースは例外です)。

企業側にとって、採用予定人数をもとに、辞退率(辞退者数)を予測して内々定(内定)を出すことになります。

内々定大量取消を引き起こした本質的原因は?

今回の問題については詳細がわかりませんが、enエン転職に掲載されている下記の情報をもとに、大量取消を引き起こした原因を推理します。

・設立4年目
・社員数70名 オフィス計5拠点
・2021年新卒15名入社

大量取消が今回初めてだとすると、これまでの辞退率が相当高かったのではないかと考えられます。

相当の辞退者数が出ることを予測して、軽い感覚で内々定を出した。
ところが、コロナ禍の影響もあり、思ったほどの辞退が出なかった。
労働契約締結である内定になる直前に慌てて内々定を取り消した。

 辞退率(辞退者)が高いという根本的な問題に手を打たず、数合わせという表面上の対応をしてきた。これが今回の問題の本質のように思えてなりません。

■社労士が顧問先に指導している、内定辞退防止策

では、中小企業として今後どのように活かせばいいのでしょうか?

それは、内々定や内定から入社までの辞退を出さない様に対策を打つことです。今回のケースは新卒ですが、中途採用でもやるべきことはさほど変わりません。

日頃、私が顧問先に指導しているポイントをかいつまんでお伝えします。

内々定について

中小企業では内々定という言葉は使いませんが、採用の意思が固まった時点で相手に内定を伝え、内定通知書に承諾のサインをもらう迄の間が内々定の状態と言えます。
即入社の場合は、内定通知書を飛ばし、雇用契約書やの締結になります。

内定の伝え方

内定を伝える際は、電話でなく面談をお薦めします。

ミスマッチを防ぐ面接時の評価ポイントや仕事の役割・責任等を伝えると共に、入社ま
でのスケジュールも確認しておきます。

新しい世界に足を踏み入れる際、必ずと言っていいほど躊躇します。気になる点や疑問
点はここで解消しておきます。

入社予定日になっても入社できないケースも有ります。内定通知書には入社予定日の条
件を入れておきます。また、内定通知書サインについては、回答期限を設けます。

現職の会社の引き留めにどう対抗するか

本人が意思決定をしていても、現職の会社が条件の見直し等で引き留め、断念させる
ケースが多いです。予め想定して「こういう場合はどうする?」と手を打っておくこと
が重要です。
退職交渉を支援することも大切なアプローチになります。

入社までのフォロー(特に新卒)

新卒の場合、内定から入社までの期間が長いので、内定辞退と戦力化という2つの面で
内定者フォローが必要です。
資格取得(勉強代は会社負担)、アルバイト(特に採用業務がお薦め)、研修や懇親会(リモートでも可)等の方法があります。

なお、応募から内定までの離脱を防ぐ方法は下記ご参照ください。

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■まとめ

今回は、内々定大量取消問題を取り上げ、中小企業としての対応の仕方を解説しました。
参考にしていただければ幸いです。

当社労士事務所は大阪・堺市を中心に様々な企業の人材に関する課題解決に取り組んでおります。

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