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社会保険の加入義務:学生アルバイトで週30時間以上の場合はどうなる?

学生は社会保険(健康保険・厚生年金)加入の対象外。そう思っておられる中小企業経営者は多いです。なぜなら、昼間学生が働く場面で、雇用保険は原則適用除外となっているから。ところが、学生であっても一定の条件を満たすと社会保険加入義務が発生します。社会保険と雇用保険の対応の違いやその理由について、社労士が解説します。

学生と社会保険の基本理解

日本の社会保険制度は、全ての国民をカバーする目的で設立されています。しかし、学生という特定のステータスを持つ人々には、どのような影響が及ぶのでしょうか。この記事では、会社経営者が学生アルバイトを雇用する際の社会保険(健康保険・厚生年金)加入義務について考えてみます。

学生の雇用形態と特徴

学生が働く場合、主にアルバイトやパート、インターンシップなどの形態が考えられます。これらは正社員とは異なり、働く時間や期間、給与などの条件が異なるため、社会保険の取り扱いも変わってきます。

特に、アルバイトは学業との両立を前提としているため、週の労働時間が短く、給与も比較的低めに設定されていることが多いです。一方、インターンシップは、学業に関連した職業経験を積む目的で行われることが多く、期間や時間、報酬などがアルバイトとは異なる場合があります。

アルバイト、パート、インターンシップの違いとは

ここで、アルバイト、パート、インターンシップの違いについて押さえておきましょう。まずパートとアルバイトですが、実は法的な違いはなく、いずれも「短時間労働者」となります。イメージ的には継続した仕事がパート、一時的な仕事がアルバイトというところです。学生の場合、継続して働く場合もあくまで本業である学業を支えるという意味でアルバイトと呼ぶことが多いようです。

ここでは、アルバイト、パート、インターンシップを以下と定義します。

 
【アルバイト】
一般的に短期間や短時間での雇用を指すことが多いです。学生や主婦、リタイアした高齢者など、さまざまな年齢層が取り組む働き方です。給与は時給や日給が一般的で、長期的な雇用保証がないのが特徴。

【パート】
主に主婦や中高年の方が中心になって取り組む働き方として知られています。アルバイトとは異なり、継続的な雇用を前提としていることが多く、時給制だけでなく、月給制を採用している場合もあります。

【インターンシップ】
学生や新卒者が企業や団体での職業経験を積むためのプログラムです。短期間のものから長期間にわたるものまで様々ですが、専門的なスキルや業界知識を習得することを目的としています。給与が支払われる場合もあれば、無給の場合もあります。その違いは、インターンシップの内容が「労働」と判断されるか、されないか。
以下の基準を満たせば「労働」と判断され、労働基準法に基づいた給与の支払いが必要です。
(1) 会社と本人との間に指揮命令関係があること
(2)その作業によって得られる利益・効果が、会社(使用者)に帰属すること

学生に適用される社会保険の種類

学生アルバイトを雇用する際、大きく4つの保険の適用を考える必要があります。

■労災保険
正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト等、雇用形態を問わず対象となります。
インターンシップの学生も、労働者である限り労災保険の対象となります。

■雇用保険
31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、1週間の所定労働時間が 20 時間以上であれば本来は雇用保険の対象となります。ですが、昼間学生は原則として雇用保険の適用除外で加入することはできません。
(一部例外があります)

労災保険、雇用保険を労働保険と言い、以下の健康保険と厚生年金保険を社会保険と言います。

■社会保険(健康保険・厚生年金保険)
一部例外を除き、健康保険と厚生年金保険はセットになっています。学生の場合も社会保険の加入条件を満たすことで、健康保険と厚生年金保険の加入義務が発生します。
雇用保険とは大きく異なるところです。

学生として働く際の社会保険の取り扱いは複雑ですが、正確な情報をもとに適切な手続きを行うことで、未来の生活設計やキャリアプランにも影響を及ぼすことが考えられます。したがって、学生自身、また雇用する側としても、しっかりとした知識を持つことが求められます。


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学生の社会保険加入義務の実態

それでは具体的に学生アルバイトの社会保険加入条件について見ていきましょう。

社会保険加入義務の基準とは

社会保険には健康保険と厚生年金があります。加入基準は大きく2通りあります。

【社会保険の適用事業所】
対象:一部の例外を除く全ての法人、従業員5人以上の個人の事業所
社会保険の加入基準
・2か月を超える雇用の見込みがある
・正社員(フルタイム勤務)、所定労働時間が正社員(フルタイム勤務)の4分の3以上


ここには、学生であることの特例はありません。正社員の所定労働時間が週40時間であれば、週30時間以上勤務する人であれば、学生であっても社会保険の被保険者となります。


【特定適用事業所】
対象:厚生年金被保険者が101人以上の事業所(2024年10月以降は51人)
社会保険の加入基準(社会保険上の短時間労働者)
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額給与が8.8万円以上(年間106万円以上)
・学生でないこと


101人以上の会社に勤めてた場合、一般の従業員であれば上記の条件を満たせば社会保険の加入義務が発生します。ですが、学生は適当除外となっていることから、所定労働時間が正社員の4分の3というラインが学生アルバイトにとっての社会保険の基準となります。

雇用保険との違い、社会保険であっても社会保険上の短時間労働者にはならない等、学生アルバイトの社会保険に関する制度は複雑です。

学生アルバイト社会保険加入の適用例

例えば、週5日、1日6時間勤務し、月給が150,000円の学生アルバイトAさんは、原則として健康保険と厚生年金の加入が必須となります。ここでは正社員の所定労働時間が出てきませんが、法定労働時間は週40時間(MAX)なので、30時間以上働く学生アルバイトは社会保険の加入基準を満たします。

週4日、1日6時間勤務の学生アルバイトBさんの場合はどうでしょうか?正社員の所定労働時間が週40時間だとしたら、4分の3は30時間になります。Bさんの場合、週24時間なので、たとえ特定適用事業所(101人以上)であったとしても社会保険の被保険者にはなりません。

中小企業社長としての対応策

中小企業の社長として、学生アルバイトを雇用する際には、社会保険の加入義務やその他の雇用上の規定を正しく理解し、適切に対応する必要があります。ここでは、そのための具体的な対応策を考えてみましょう。

学生アルバイトとのコミュニケーション方法

学生アルバイトは、社会人としての経験が浅いため、社会保険などの制度について詳しく知らないことが多いです。そこで、以下のようなコミュニケーション方法をとることで、円滑な関係を築くことができます。

(1)オリエンテーションの実施
入社時に、社会保険の加入義務や給与計算の基礎などを説明するオリエンテーションを実施することで、誤解や不安を解消します。
(2) Q&Aセッション
学生アルバイトが持つ疑問や不明点を解消するためのQ&Aセッションを定期的に開催し、気軽に質問できる環境を作ります。
(3) オープンドアポリシー
学生従業員が直接上司や社長に質問や相談ができるような体制を整えることで、コミュニケーションを円滑にします。

社労士と連携し、正確な手続きを

社労士との連携も、雇用に関する法律や規定の適切な理解・適用のために欠かせないものです。以下のように、社労士との連携を深めることで、トラブルを防ぐことができます。
(1) 社労士の紹介
信頼できる社労士を探すために、業界団体や知人からの紹介を活用します。
(2) 定期的なミーティング
社労士と定期的にミーティングを設定し、企業の状況や変更点、新たな法律や制度の情報などを共有します。
(3) 手続きの代行・チェック
雇用契約の作成や給与計算、社会保険の手続きなど、専門的な作業は社労士に代行・チェックしてもらい、ミスを防ぎます。

学生アルバイトの雇用に際しては、正確な情報と適切な対応が求められます。社労士との連携を深めることで、安心して従業員を雇用し、事業の発展を目指すことができます。

まとめ

学生アルバイトの雇用に関連する社会保険の手続きや法律の適用は、中小企業社長にとっては複雑に感じられる場面もあるでしょう。ですが、学生アルバイトと信頼関係を築くことで、将来正社員として採用することにつながる可能性もあります。
仮に、正社員として迎えることができなかった場合も、取引先であったり顧客になる可能性は充分に考えられます。将来を描きながら学生アルバイトと接していただければと思います。



当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。


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