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10人以下の会社社長へ!就業規則がないメリット、デメリットを社労士が解説

中小企業の経営者の皆様、就業規則の作成について、どのように考えていますか?従業員10人未満の事業場では、法的に就業規則の作成義務はありませんが、その重要性は非常に大きいです。

本記事では、就業規則の作成・届出義務から、作成しない場合のメリット・デメリット、実際のトラブル事例、そして社会保険労務士からの貴重なアドバイスまで、就業規則に関する全てを網羅的に解説します。この記事を通じて、貴社の運営をよりスムーズかつ効果的にするための知見を得ていただければ幸いです。

1.10人以下の会社でも知っておきたい!就業規則の必要性と作成の基礎知識

就業規則は、従業員と企業の間のルールを明確にするための重要なドキュメントです。就業規則の作成・届出義務は、常時10人以上を雇用する事業場に設定されています。

したがって、常時10人未満(9人まで)の事業場では就業規則の届出・作成義務はありません。しかし、従業員数が10人未満であっても、就業規則を作成することが推奨されています。このセクションでは、就業規則の作成・届出義務と、常時10人未満を雇用する事業場について解説します。

10人以上の事業場と9人以下の事業場:就業規則の作成義務

労働基準法では、常時10人以上の従業員を雇用する事業場には就業規則の作成と届出が義務付けられています。この「常時10人以上」という基準には、正社員のみならず、アルバイトやパートも含まれます。つまり、従業員全体の数が10人を超える場合、就業規則の作成は法律上の義務となります。

一方で、10人未満(9人以下)の事業場では、就業規則の作成や届出は法的に義務ではありません。しかし、働く上でのルールや労働条件を明確にするため、また労働トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則の作成は非常に有効です。特に中小企業では、社長自身が労務管理の面で直面する様々な問題を事前に防ぐ手段として、就業規則の策定を検討することが推奨されます。

事業場単位での考慮:本社、支店、事務所、店舗

就業規則は、会社全体ではなく、事業場単位で考える必要があります。例えば、本社では5人、支店では6人を雇用している場合、それぞれの場所で10人を超えていないため就業規則の作成義務はありません。しかし、労働基準法や労働契約法の観点から、各事業場ごとに適切なルールを設けることが推奨されます。

「常時10人以上」と一時的な繁忙期を除く従業員数の計算

「常時10人以上」という基準には、正社員のみならず、アルバイトやパートも含まれますが、一時的な繁忙期で増員された従業員は通常除外されます。つまり、日常業務における従業員数が10人を超えるかどうかが判断基準となります。
年末年始やお盆などの繁忙期に一時的に従業員数が増える場合、その期間の従業員数は「常時」の計算には含まれません。

そのため、通常の業務期間における従業員数を基に、就業規則の作成・届出の必要性を検討することが求められます。
実際の従業員数の計算方法や考慮すべき点については、社労士に相談することで、より明確で具体的なアドバイスを得られるでしょう。

2.従業員10人未満:就業規則を作成しないメリット

従業員10人未満の事業場では、就業規則を作成する義務はありませんが、その決定にはメリットとデメリットの両面が存在します。ここでは、就業規則を作成しないことのメリットに焦点を当て、経営者が意思決定をする際の参考となる情報を提供します。

就業規則作成の手間とコスト

就業規則を作成する際には、その手間とコストが大きな考慮点になります。社会保険労務士に依頼した場合、相場としては20万円から30万円、場合によってはそれ以上かかることもあります。

また、厚生労働省が提供するテンプレートを使用して自力で作成しようとすると、時間と労力が大幅に必要になります。この作業に費やす時間は、経営そのものに割くことができる貴重なリソースです。そのため、10人未満の事業場では、就業規則を作成しないことで、これらのコストと時間を節約することが可能です。

社長の裁量で柔軟に対応可能

就業規則がない場合、社長は組織運営において高い自由度を享受できます。例えば、給料の増減、退職金の支給有無などの決定を、会社の状況や戦略に応じて柔軟に行うことができます。

これにより、変化する市場環境や従業員のニーズに迅速に対応し、会社の方針を効果的に推進することが可能になります。特に小規模な事業場では、このような柔軟な対応が経営の成功に直結することもあります。

3. 従業員10人未満:就業規則がないデメリット

就業規則がない場合、一見すると管理が楽に思えるかもしれませんが、実際には様々なデメリットが存在します。ここでは、就業規則を設けないことで生じるリスクや問題点について考察します。

法的トラブルのリスク増大

就業規則がない場合、法的なトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。その理由を以下に箇条書きで示します:

(1)高齢者の雇用問題:
高齢で仕事の能力が低下した社員に対して、適切な対応が困難になります。就業規則で退職年齢や再雇用に関するルールを設定しないと、無期限に雇用を継続しなければならない状況になる可能性があります。

(2)副業に関するリスク:
副業を認めるかどうか、そしてその範囲をどう定めるかが不明確になります。これにより、従業員の長時間労働による生産性の低下や職種によっては機密情報の漏洩といったリスクが生じる可能性があります。

(3)問題社員への対応:
問題行動を起こす社員に対して、懲戒処分を含めた適切な対処が困難になります。就業規則に懲戒の基準がないため、問題行動に対して効果的に対処することができなくなります。

(4)欠勤控除、残業代の問題:
欠勤控除や残業代の基準が曖昧になり、給与計算においてトラブルが生じることがあります。これは従業員との間での不信感を生む原因にもなり得ます。

(5)病気やケガによる雇用問題:
私傷病で労務不能となった社員の適切な対応ができず、解雇等の雇用管理が困難になります。

従業員の不安と信頼性の欠如

就業規則がない場合、従業員が感じる不安や企業への信頼性の欠如は、以下の点で顕著になります:

(1)労働条件の不透明性:
就業規則がないと、従業員は自分の労働条件が不安定であると感じることがあります。

(2)不公平感の発生:
従業員間で労働条件が不均一になる可能性があり、これが不公平感や不満を生む原因となります。

(3)企業文化の希薄化:
就業規則は企業文化を形成し、従業員に一体感を与える役割も果たします。その不在は、組織の結束力を弱めることにつながります。

4.就業規則がない会社での対応:具体的な事例とその教訓

就業規則がない会社では、様々な問題が発生することがあります。実際の事例を通じて、トラブルがどのように発生し、どのように対処されたのかを見ていきましょう。

事例紹介:トラブルとその解決策

ある中小企業では、就業規則がないために、以下のようなトラブルが発生しました。

(1)給与計算の不一致:
問題の発生:従業員との間で給与計算方法について意見が分かれ、これが労働トラブルに発展しました。特に欠勤控除や残業代の計算に関しては、インターネット上の情報が多く、それぞれが都合の良い解釈をすると、深刻な問題に発展することもあります。場合によっては、退職者が続出するなどの深刻な結果を招く可能性もあります。

解決策:会社は給与計算の基準を明確に設定し、これを従業員に周知しました。具体的には、就業規則に給与計算方法を詳細に記載し、従業員全員が理解しやすい形で共有することで、同様のトラブルを未然に防ぐことができました。これにより、給与に関する誤解を防ぎ、社内の信頼と安定を確保することが可能になりました。

(2)労働時間の不明確さ:
問題の発生:勤務時間のルールが不明確であったため、残業時間の管理が曖昧となり、従業員からの不満が生じました。
解決策:この問題は、労働時間と残業に関する明確なガイドラインを就業規則に設定し、従業員に周知することで改善されました。具体的には、正確な始業・終業時刻、残業申請の手続き、残業の上限時間などを規定し、全従業員がこれらの情報を正しく理解し遵守することで、労働時間に関する問題を解消しました。

就業規則の有無による労働紛争の違い

就業規則がある場合とない場合では、労働紛争の発生や対処に大きな違いがあります。
就業規則がある場合、多くの労働紛争は事前に防ぐことが可能です。規則により、労働条件や懲戒処分などの基準が明確になり、従業員との間での誤解を防ぐことができます。

一方、就業規則がない場合、労働条件や職場のルールが不透明であるため、紛争が発生しやすく、また懲戒処分もできず解決が困難になります。

5.社会保険労務士が語る:就業規則作成の重要性とそのメリット

就業規則を作成しないことのデメリットは非常に大きいと社会保険労務士は考えます。特に、中小企業においては、出来る限り縛られない形で、社長の自由度を最大限に保った就業規則の作成が推奨されます。ここでは、そのような観点から就業規則の作成の重要性と、効果的な作成方法について探求します。

就業規則作成のポイント

就業規則を作成する際には、以下のポイントが重要です。

労働基準法の遵守と社長の自由度のバランス:
就業規則は労働基準法を遵守しつつ、社長の裁量を可能な限り保つように作成することが肝要です。このバランスを取ることで、企業の柔軟な運営と法的な安全性が確保されます。

10人未満の会社でも実践できる簡易な就業規則の例

10人未満の中小企業でも、実用的かつ効果的な就業規則を作成することは可能です。以下に簡易な就業規則の例を示します。

(1)労働時間と休憩:
始業・終業時刻と休憩時間を明確に記載します。実際の業務に合わせて、必要に応じて時間の調整が可能であることを明記することで、柔軟な労働環境を実現できます。

(2)給与体系:
基本給、残業手当、その他の手当を具体的に定めます。給与体系は明確にすることで、従業員との信頼関係を築くことができます。初期段階では「基本給は従業員の勤務成績や態度を考慮して給与を決定する」など緩やかな規定から始めることも可能です。

(3)昇給:
昇給に関しては、具体的な時期を設定することが理想的ですが、当初は「昇給は必要に応じて行う」という形で柔軟に対応することも可能です。

(4)賞与:
賞与に関しても、支給の具体的な基準や時期を設けるのが望ましいですが、初期段階では「賞与は会社が必要と認めた場合に支給する」という条件で始めることができます。

(5)休日と休暇:
週休日、祝日、有給休暇の取得方法を明確に規定します。特に有給休暇に関しては、取得手続き「2日前までに所定の書面で」などと具体的に定めることで、従業員の休暇取得を円滑に行うことができます。

(6)懲戒規定:
業務上の規則違反に対する懲戒処分の基準を明確に設定します。具体的な懲戒基準を設けることで、職場の秩序と公正性を保つことができます。特に懲戒処分は、就業規則の条項に
無い事由で処分できないので注意が必要です。

就業規則に関するまとめ

(1)就業規則の作成と届出義務
・10人以上の事業場:就業規則の作成と届出が法的義務。
・9人以下の事業場:法的義務はないが、トラブル防止のため作成を推奨。

(2)就業規則がない場合のメリット
・作成の手間とコストが不要
・社長の裁量による柔軟な意思決定。

(3)就業規則がない場合のデメリット
・法的トラブルのリスク増大。
・従業員の不安と信頼性の欠如。

(4) 実際の事例と対応策
・給与計算の不一致や労働時間の不明確さに関するトラブル。
・就業規則を設け、明確な基準を従業員に周知することで解決。

(5)社労士からの就業規則作成のアドバイス
・労働基準法を遵守しつつも、社長の自由度を保つバランスが重要。
・10人未満の会社でも実践できる簡易な就業規則の例を提供。


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