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社労士が経営者の悩みに直撃!社員が評価制度導入に反発する

このところ何回かにわたり人事評価制度について解説しています。経営者からの相談で多いのが評価制度の話をすると社員に反発された、というお悩みです。
今回は社員に反対された場合どうするのかを考えてみたいと思います。

■評価制度 社員が反発する理由は2つ

人事評価制度を導入する際、なぜ社員に反発されるのでしょうか。
私が経験した中では主に2つの理由が考えられます。

お金=悪の価値観

まず1つめ。
評価基準には、どうしても売上、利益、稼働率、歩留まり率等の指標が入ります。
製造業や小売業、商社の方たちは特に問題無いのですが、医療・福祉・介護関連で働く方にはこうした指標を毛嫌いする方が多いようです。
「私たちは儲ける為に仕事をしているのではありません!」
お金=悪という価値観があるようです。

私が子どもの頃から、時代劇でしばしば見かけた場面。
悪代官と悪徳商人(桔梗屋とか越前屋という名前が多かったような記憶があります)が結託して、善良な庶民を苦しめる。
冷静に考えると笑い話のようにパターン化された設定ですが、貧=清、富=濁、という価値観が刷り込まれているのだと思います。

他人に評価されたくない

次に2つ目
他人に評価されたくない。
このように考える人が多いようです。
では「評価しない」ことを望んでいるのかといえば、決してそうではありません。

私は人事評価制度の導入研修でよくこんな質問をします。
「これまで一緒に仕事をしてきた中で、最悪だった人を1人思い浮かべて下さい」

どんなところが最悪だったかを出していただいた後、
「当社は評価はしません。あなたとその方は給料や全てにおいて差は有りません」
そう社長から言われたらどう思うかを聞いてみます。

「それは困ります!」
皆さんそう答えられるんですね。
更に深く聞いていくとわかるのですが、どのような評価をされるのか不安。
ということです。

■「お金=悪」の価値観への対応は、ゴールを具体化すること

「私たちは儲ける為に仕事をしているのではありません!」
次に続く言葉として
「患者さん(利用者さん)や家族を笑顔にするのが私たちの仕事です」
とても立派な言葉ですが、抽象的でよくわかりません。

このような方への対応として、
「お金、儲けがあるから継続して施設を運営していけるし、あなたへの給料も払えるんですよ」そのように説得される経営者も多いです。
それも正解ではありますが、私は抽象的な言葉を具体化してみます。

「あなたの思い描く姿が実現すると、具体的にはどうなりそうですか?」
「最も理想的な患者さん(利用者さん)を思い浮かべて下さい。患者さん(利用者さん)全員がそうなると、どうなりそうですか?」


この質問にはなかなか答えもらえません。
そんなこと考えたこと無い、という反応です。

そこから何とか導き出した答え(ゴール)を次に紹介します。

歯科医院、介護施設、保育園で実際に設定したゆるーいゴール

私はこれまで多くの業種で人事評価制度作りをサポートしてきましたが、介護施設、歯科医院、保育園では売上や利益、稼働率等の指標は敢えて出さずに、次のようなゆるいゴール設定をしています。

・家族からの感謝の手紙   ○通
・治療から予防への移行率  ○%
・差し入れを持参してくれる人 ○人
・入園 第一志望      ○人
・見学者  ○人


「笑顔にする」という抽象的なゴールを、定量化できる指標に置き換えたものです。
いずれも実現すると、売上や稼働率等の経営指標にも影響すると思いませんか。

売上や稼働率などの経営指標を掲げると反発が予想されるようでしたら、このようなゆるいゴールを設定するところから始めてもいいかと思います。

大切なことは、まずはみんなで向かっていく為のゴールを設定することではないでしょうか。

■他人に評価されたくないへの3つの対応

「他人に評価されたくない」の真意は、どのような評価をされるか不安ということ既に説明しました。
それを払拭するには、制度への信頼と評価者への信頼、2つの信頼感を醸成することです。
その方法として3つ考えられます。

1 評価基準を具体的にする
2 評価者に対して教育・訓練をする
3 上司(評価者)と部下で評価の摺り合わせをする

評価基準を具体的にする

1点目は評価基準を具体的にすることです。
評価基準が曖昧、抽象的だと制度自体への信頼感が薄れます。

よくある例として、
・積極性 … 目標や課題に対し積極的に取り組んでいる
・責任感 … 与えられた仕事は責任を持って対応している

このような評価の着眼点をよく見かけますが、どのような状態であれば「積極的」といえるのか、また「責任感」を持っていると言えるのかは個人の解釈によって大きく異なります。

部下は「目標や課題を放り出さずに取り組んだのでOK」
上司は「目標や課題に対し未達成だったのでNG」

この他にも、よく使われるこれらの表現が入っていると要注意です。
・できる限り○○する
・しっかりと○○する
・迅速に○○する
・最大限に○○する

私は、ピンポイントの場面に絞り超具体的に表現するようにしています。

積極性であれば
『自分の目標や課題について上司や同僚と話し合い、どういう解決策があるかを明確にし、行動計画を立てて取り組んでいる』

責任感であれば、
『クレームが発生した場合、すぐに上司および経営者に報告し、すぐに顧客に謝るとともに最善の対応を1日以内に取る』

このようにすると、個々の解釈による差はかなり減少することができます。

評価者に対して教育・訓練をする

評価基準を明確にしても、評価者の価値観、考え方により評価にバラつきが生じます。
それをできる限り抑える為に、評価者訓練をします。

評価者訓練の内容について、参考までに私が実際に行っている例を挙げます。
(1)評価の目的
 評価は、部下を育成し成果に導くためにあることを理解していただきます。
(2)目標設定の仕方
 個人の目標設定について、主に次の2点を理解していただきます。
①経営理念、経営目標を達成するための個人目標であること
②成果につながりやすい目標設定の仕方
(3)評価の原則とルール
 評価者による評価のバラつきを最小限にする為、評価時の注意点、ルールや陥りやすいエラーと回避策について学んでいただきます・
(4)評価、フィードバック面談の演習
  ①モデルケースを例に実際に評価をしていただいた上でポイントを解説します。
  ②部下に対してフィードバック面談する際の注意事項を開設した上で、面談の演習をしていただきます。

上司(評価者)と部下で評価の摺り合わせをする

どれだけ評価基準を明確にしても、また評価のバラつきが出ないよう教育や訓練をしても、人が評価する以上、誰が評価しても同じ結果には絶対になりません。
そこで大切なのはフィードバックです。

・普段から部下を観察し、気になることがあれば記録する
・好ましい行動は都度承認・称賛する
・好ましくない行動は軌道修正を支援する


このように普段から上司と部下とが関わり合い、期末の評価時には部下の自己評価とその理由を聞きた上で、上司の評価とその理由を伝える。
そうすることで「自分のことを見てくれている」となり信頼感が醸成されます。

■まとめ

今回は、評価制度の導入ついて社員に反発される場面について解説させていただきました。

当社労士事務所は大阪・堺市を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。
大切なことは「社員が動く」ことにポイントを置くこと。
今回の「ゆるいゴール」もその発想からです。

ご参考になれば幸いです。

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