中小企業が直面する人材獲得の課題は多岐にわたりますが、特に「若い人材が欲しい」というニーズは高まっています。しかし、単に若手人材を求めるだけでは不十分です。彼らを引きつけ、企業にとって長期的な貢献者として育て上げるためには、戦略的な求人作成が求められます。
この記事では、若手人材が何を求めているのか、どのような環境や機会を提供することで彼らの興味を引き、応募を促すことができるのかに焦点を当てます。キャリアアップの機会の提示から、柔軟な働き方の選択肢の提供、さらには魅力的な職場環境の構築まで、若手人材を惹きつけるためのポイントを詳しく解説します。
現代の若手人材は、ただ働く場所を求めているわけではありません。彼らは自分の成長とキャリアを積極的に形成できる環境、ワークライフバランスを重視し、自分らしい働き方ができる職場を選びたいと考えています。そうした若手人材のニーズに応えるために、中小企業がどのように求人戦略を練り、アプローチを改善していくべきかを、具体的な事例と共にご紹介します。
若手人材を成功裏に獲得し、企業の成長につなげるためのヒントがここにはあります。
1.若手を求める理由:求人戦略の新たな視点
未来を見据えた人材の育成
特に、今後数十年を見通した場合、若い人材の育成は、企業の長期的な成功と存続に直結します。若手社員が将来のリーダーや中核を担うことを見越して、彼らに投資することは、単に現在の業務効率を上げることだけではなく、企業が次世代にも競争力を持続させるためには欠かせない戦略と言えます。
総じて、若手社員をただの労働力としてではなく、将来の企業を支える貴重な資産として捉え、彼らの成長を支援することで、企業は長期的な発展を遂げることが可能です。これからの20年、30年という長い時間軸で見た際に、今日の若い人材への投資が、企業の持続可能な成長の基盤となるのです。
社内の雰囲気を活性化
若手社員の持つエネルギー、柔軟な思考、そして前向きな姿勢は、他の社員にも良い影響を与え、全員のモチベーション向上につながります。また、彼らが持ち込む新しいコミュニケーションツールや働き方によって、仕事の効率化や職場のコミュニケーションの改善が期待できます。
新しい風を吹き込むアイデア
時代に遅れがちな小さな会社でも、若い人材を積極的に採用し、彼らが持つ可能性とエネルギーを最大限に活用することで、企業は新たなステージへと進むことができます。若手の育成と彼らが持つ新鮮な視点は、中小企業が直面する様々な課題を乗り越え、持続可能な成長を実現するための鍵となります。
2.若手をターゲットにした求人戦略
年齢制限の設定は基本的にNG
長期勤続によるキャリア形成を目的とした場合は例外も
■35歳未満(例外事由3号イ:長期キャリア形成を図るため)
ただし、以下の要件があります。
・期間の定めのない労働契約(正社員)
・職業経験について不問とする
・育成体制、配置・処遇等、新卒者と同等の処遇にすること
このように、若手人材を積極的に採用したい中小企業の社長は、法律の枠内でうまく求人戦略を立てることが求められます。特に、若手人材の長期的なキャリア形成を真剣に考え、彼らが企業の未来を担う重要な存在であるというビジョンを持つことが大切です。このビジョンを求人戦略に反映させることで、法律を遵守しつつ、理想の若手人材を採用することが可能になります。
ただし、ここで一つ注意点があります。年齢制限を設けるということは、それだけ対象となる求職者が限定されることになり、結果的に応募者数が減少する可能性があります。
特に、求人に応募が少ないことで悩んでいる中小企業の場合、この点は非常に重要です。
若手人材の確保は企業にとって大きなメリットをもたらす一方で、求人戦略を誤ると、採用活動自体がスムーズに進まないことも考えられます。よって、年齢制限を設ける際には、そのリスクも十分に考慮し、企業の実情に合わせた適切な戦略を立てることが求められます。
このように、若手人材を対象とした求人は、法律の範囲内でかつ、企業の長期的なビジョンに基づいて慎重に行う必要があります。同時に、対象となる求職者が限定されることのデメリットも踏まえ、全体の採用戦略のバランスを考えることが重要です。中小企業の社長にとっては、若手人材の採用だけでなく、幅広い年齢層からの応募を促すための工夫も同時に求められるでしょう。
3.20代、30代若手人材市場の今
20代、30代の若手人材はどれくらいいるのか?
厚生労働省のデータによると、20年前の2004年1月には、求職者数は2,149,650人と記録されていましたが、直近の2024年1月の数字は1,807,579人と、約16%もの減少を見せています。
この数字を年代別に見てみると、より顕著な変化が見られます。
20年前は29歳までの求職者が全体の28.7%を占め、34歳までを含めると42%、さらに39歳までを含めると半数以上がこの年代でした。当時は30代前半までを「若手」と考えるのが一般的でした。しかし、現在では29歳までの割合が17.7%に下がり、34歳までが26.6%、39歳までが35.5%と、顕著に年齢層が高くなっています。
このように、求職者全体が減少する中で、特に40歳未満の若手人材が全求職者の約35%しかいない現状は、中小企業の経営者が「若手人材が欲しい」と願う上で、重要な課題となっています。このデータは、今後の採用戦略を考える上で、「若手人材が欲しい」という従来の考え方を見直し、より現実に即したアプローチが必要であることを示唆しています。
若手人材の新定義:対象年齢の拡大と若さの本質
(1)若い人の年齢を上げる
若手人材と聞くと、多くの人は自動的に20代から30代前半を思い浮かべるかもしれません。しかし、人生および職業生活の期間が延長している今日、この年齢範囲を再考する時が来ています。現在、定年は60歳ですが、希望すれば65歳まで、あるいは2021年4月からは70歳まで働くことが可能です。
これを踏まえると、40代前半であっても、十分に若手と見なすことができ、さらには25年以上のキャリアを築くことが可能です。これからの中小企業にとって、40代前半の人材も積極的に若手として採用を検討すべき対象です。
(2)年齢ではなく考え方や言動で若さを判断する
若さは年齢だけでなく、エネルギー、柔軟性、新しい知識や技術へのオープンネスといった資質にも表れます。これらは年齢を問わず、個人の特性や姿勢によって異なります。
たとえば、40代、50代でも新しい技術への学習意欲が高く、固定観念にとらわれずに物事を考えることができる人は、まさに中小企業が求める「若手」人材の条件を満たしています。逆に、若年であっても新しいことに対する学習意欲が低い、変化に抵抗がある人は、求める若手人材とは異なるかもしれません。
以上のように、若手人材の定義を年齢だけに限定せず、考え方や行動、能力で見ることが重要です。これにより、より幅広い人材から企業に合った真の「若手」を見つけ出し、採用する機会が広がります。中小企業が今後持続的に成長していくためには、こうした柔軟な思考で若手人材を定義し、積極的に採用活動を行っていくことが鍵となるでしょう。
4.若手を惹きつける求人のコツ
しかし、これらの点を踏まえたとしても、若手人材を実際に引き付けるためには、彼らにとって魅力的な求人を作成することが欠かせません。そこで、若手を集める際の求人のポイントをいくつかご紹介します。これらのポイントを心がけることで、より多くの若手人材からの応募を促すことができるでしょう。
成長やキャリアアップの道を具体的に示す
例えば、「定期的なスキルアップ研修の提供」とは、具体的にどのような研修があり、それが従業員のどのような成長につながるのかを明確にします。また、「キャリアパスの明示」では、入社後の昇進ルートや目指すべきポジション、そのために必要なスキルや経験を具体的に示し、若手人材が目標を持って働けるように配慮します。
さらに、昔ながらの根性論やパワハラは今日の若手には受け入れられません。しかし、それと同時に、ゆるすぎるホワイト企業もまた、彼らが求める成長の場としては不十分です。
彼らは「働きやすさ」も重視しますが、それ以上に「成長できる環境」を望んでいます。例えば、ゆるホワイトと言われる企業でも、明確なキャリアパスが示され、定期的なフィードバックや挑戦の機会が与えられるならば、若手人材にとって魅力的な職場となり得ます。
また、自己成長をサポートする企業文化やメンターシップ制度の有無も大きなポイントです。メンター制度を通じて、若手人材が経験豊富な先輩社員から直接学び、アドバイスを受けることができる環境は、彼らにとって非常に価値が高いと言えます。これらは、彼らが企業に期待する「成長とキャリアアップの機会」を具体的に示すものであり、優秀な若手人材を惹きつけるためには欠かせない要素です。
柔軟な働き方の選択肢を広げる
現代の若手人材は、単に働くだけではなく、仕事と私生活のバランスを重視しています。彼らにとっては、柔軟な働き方ができる企業は非常に魅力的です。
そのため、求人においてフレックスタイム制度の導入、リモートワークの選択肢、有給休暇の取得しやすい環境など、多様な働き方が可能であることを明示することは、彼らの注目を集める重要な要素となります。
特に、リモートワークの普及により、勤務地にとらわれずに仕事ができるようになったことは、働き方改革の大きな一歩と言えるでしょう。これにより、仕事と家庭や趣味とのバランスを取りながら、より充実した生活を送ることが可能になります。
また、フレックスタイム制度を利用することで、自分のライフスタイルや生活リズムに合わせた勤務が可能となり、仕事の効率化だけでなく、メンタルヘルスの維持にもつながります。
これらの働き方の選択肢を提供することで、若手人材にとって魅力的な職場環境を作ることができます。中小企業でも、総合商社の事例に学び、自社に合った働き方改革を進めることで、優秀な若手人材を惹きつけ、定着させることが可能になるでしょう。働き方改革は、従業員にとっても企業にとっても、多くのメリットをもたらします。
働く環境の魅力を前面に
中小企業が若手人材を獲得するためには、彼らが何を求めているのかを理解し、それを求人情報に反映させることが重要です。キャリア成長の機会、柔軟な働き方、魅力的な職場環境の提供を通じて、若手人材にアピールすることで、より多くの応募を得ることが期待できるでしょう。
まとめ
キャリアアップの機会を明確に示し、若手人材の成長意欲に応えること。激務や長時間労働のイメージを払拭し、フレックスタイムやリモートワークなど柔軟な働き方を提供すること。これにより、仕事と私生活のバランスを重視する若手人材のニーズに応え、彼らが望む「成長と働きやすさ」を兼ね備えた職場を実現することが可能です。
中小企業の社長が、若手人材を惹きつけ、長期的に企業に貢献してもらうためには、これらのポイントを意識した求人作成と職場環境の整備が欠かせません。時代の変化とともに求職者のニーズも変わっていることを理解し、柔軟な思考で対応することが、中小企業がこれからも繁栄していくための鍵となるでしょう。
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