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人手不足が当たり前の介護業界、採用成功の秘訣を採用定着士が解説

訪問介護施設を営む社長Aさんは、今日もため息をつきました。「今回も応募無しか…。」考えてみればここ2年間、求人を出しても応募ゼロ。

本業の集客については、利用者さんやご家族、懇意にしているケアマネさんからのご紹介が多く、困ることは無かったのですが、求人になると困り果てる状態でした。

今は職員が頑張ってくれているからいい。でも、5年先、10年先を考えると、このまま新しい人材が入って来ないと職員への負担も大きくなるし…

そんなことを考えれば考えるほど、このまま事業として衰退していくしか無いのかという不安ばかりが募ります。

そんな時に出会ったある方法を取り入れてみたところ、最初の3か月で7名の応募、うち1名を採用しました。「これだったらいけそうだ」と実感できたのでその後も継続し、10か月で介護ヘルパーの採用は4名、さらに難しい介護福祉士の採用にも成功しました。

この記事では、社長Aさんが出会ったある方法について解説します。



【社長Aさんのインタビュー記事はこちらで閲覧できます】
訪問介護事業所の採用成功事例

1.なぜ介護業界の人手不足は当たり前なのか?2つの実態から検証

介護業界の人手不足は、高齢化社会の進行による介護需要の増加と、働き手の不足によって引き起こされています。特に、肉体的、精神的に要求されるこの仕事に対する報酬や労働条件の厳しさが、新たな人材の流入を妨げています。また、有効求人倍率の上昇やweb上での求人情報の増加は、業界内での激しい人材獲得競争を示しており、せっかく出した御社の求人情報が求職者の目に触れずに埋もれてしまうことも、この問題を複雑にしています。こうした背景が、介護業界における人手不足を「当たり前」とした現状を作り出しています。

実態1:介護業界の高い有効求人倍率

介護業界の人手不足は、有効求人倍率の高さで顕著に示されています。特に、令和5年12月時点で介護職の有効求人倍率は4.20倍に達し、これは求職者1名に対し、4.2社が競合している状況を表しています。
比較すると、同月の全職業の有効求人倍率は1.23倍で、介護業界が採用において極めて困難な状況にあることがわかります。
(ハローワーク職業別労働市場関係指標(実数)・パート含む常用)

2013年以降、介護業界の有効求人倍率は顕著に上昇しています。多くの介護事業所の経営者が「少し前までは求人に反応があった」と述べることが、この変化の一端を示しています。かつては求人広告を出せば応募があった時代もありましたが、現在はそのような状況ではなく、求人に対する反応が大幅に減少しているのが現実です。この背景には、介護職への需要の増加と、働き手の不足が深刻化していることがあります。

実態2:web上での求人状況とその背後にある競争

私たちが採用支援を行う際、有効求人倍率だけでなく、web上の求人件数の多さにも注目しています。特に、求人情報の多くはウェブサイトで管理されているため、実際の競合状況と有効求人倍率が示す状況には差異があります。web上の求人件数が多いことは、競合が多いことを意味し、求職者があなたの求人に辿り着く可能性を低下させます。

例えば、大阪市平野区で介護職の求人をIndeedで検索すると、約28,000件の求人が出てきます。これを、人手不足で知られる他の業界と比較すると、営業職で16,000件、製造業で11,000件、トラックドライバーで2,000件の求人となっており、介護職の求人件数が圧倒的に多いことがわかります。

この比較からも、介護業界における人手不足の深刻さが見て取れます。有効求人倍率の高さと合わせて、web上での求人数の多さが「介護の人手不足は当たり前」という状況を生んでいるのです。

2.10年後の介護業界、人手不足はさらに進む!

10年後、私たちの社会はどのように変わっているでしょうか?特に介護業界では、人手不足の問題がどのように展開していくのでしょう?リクルートワークス研究所の「WorksReport2023 未来予測2040」を基に、未来の介護業界が直面するであろう人手不足の実態について探ってみましょう。

2030年から2040年、予測される労働力不足

介護業界は、2030年から2040年にかけて、ますます人手が足りなくなると予測されています。日本が高齢化するにつれて、介護サービスへの需要は増え続けます。しかし、それに伴う労働力の供給が追いつかず、大きな課題に直面しています。

今、介護業界では既に人手不足に悩んでいますが、「リクルートワークス研究所」の「WorksReport2023 未来予測2040」によると、この状況は今後さらに深刻化します。2030年には、介護職員として約199万人が必要になるものの、予測される供給は178万人で、11%の不足が見込まれています。そして、2040年には、需要が230万人に対し、供給は172万人となり、不足率は25%に達すると予測されています。この数字からも、介護業界が直面する人手不足の問題の深刻さがうかがえます。

■2030年
 需要 199万人
 供給 178万人
 不足率 11%

■2040年
 需要 230万人
 供給 172万人
 不足率 25%

未来に向けた介護事業経営者の戦略

この厳しい現実を踏まえ、介護事業経営者は未来に向けた戦略を立てる必要があります。具体的には、働き手を引きつけ、定着させるための環境整備が急務です。これには、給与体系の見直し、労働環境の改善、キャリアパスの提供、仕事の魅力向上などが含まれます。また、介護職員の技術や知識の向上を図るための教育・研修制度の強化、ワークライフバランスの改善による職場の魅力アップも重要です。さらに、外国人労働者の受け入れ拡大や、介護技術のイノベーションによる生産性向上も視野に入れるべきです。未来に備え、経営戦略を見直すことで、介護業界の持続可能な発展を目指す必要があります。

次のセクションでは、求職者を惹きつけ、応募へと導く求人方法について、実際の成功例を用いながら解説します。

3.成功事例から学ぶ、介護事業所の求人戦略(効果的な求人の作り方)

今後、介護業界は人口の高齢化に伴い、さらに厳しい人手不足に直面することが予想されます。既に多くの介護事業所が人材確保に苦労している中、効果的な採用戦略を立て、実行することが事業の存続と発展には不可欠です。このセクションでは、成功事例をもとに、どのようにして介護業界で人材を確保し、定着させることができるかを探ります。

労働条件(給与など)の競合調査と改善策

介護事業所が直面する人手不足問題に対応するため、他社との労働条件を徹底的に比較し、自社の位置を正確に把握することが第一歩です。求職者が最も重視するのは給与の額ですが、労働条件全体が彼らの応募意欲に大きく影響します。介護業界では競合他社が多く、もし労働条件が他社に比べて劣っている場合、たとえ求人内容に魅力があっても、見向きもされない可能性があります。

実際に、私たちが求人作成にあたり重視しているポイントは以下の通りです。

・給与の金額
・賞与の有無およびその額
・残業時間
・年間休日数
・駅からのアクセスや徒歩時間

給与を市場の平均またはそれ以上に設定することは求職者を引きつけるうえで基本中の基本です。しかし、求人の魅力をさらに高めるためには、給与以外の条件の改善も必要です。例えば、通勤の便利さを示す「駅からの徒歩分数」を改善することは難ししいので、マイカー通勤の可否など代替案を検討します。

実際の成功例を挙げると、給与水準が市場平均と同等でありながらも応募が見込めなかった事業所がありました。調査の結果、駅からのアクセスが競合他社に比べて不便であることが判明し、マイカー通勤を認める方針に変更したところ、応募数が顕著に増加し、多くの優秀なスタッフの採用に成功しました。


このように、競合との労働条件を明確に比較し、自社の求人が市場においてどのように位置付けられているかを理解すること。そして、改善できる部分は積極的に改善を行い、求職者にとって魅力的な求人を作成することが、介護事業所が直面する人手不足問題を解決する鍵となります。

介護スタッフの悩みに応える採用メッセージ

求職者の立場で採用を考えてみると、転職活動する人には、必ずと言っていいほど現状に対する悩みや不満、欲求などがあることが見えてきます。そこで、求職者の悩みや不満に訴求し、当社で働くことで解決するというメッセージを送ることが有効です。

通販番組などを見ていると、すごく参考になります。

一般的に介護職員は以下のような悩みを持っています。

・身体的な負担:
介護職は肉体労働の要素が強く、重い物を持ち上げたり、長時間立ち仕事をしたりすることが多いです。これにより、腰痛や関節痛などの身体的な負担が大きな悩みとなります。

・精神的なストレス:
利用者やその家族とのコミュニケーションがうまくいかないこと、認知症の利用者のケアの難しさ、終末期のケアなど、精神的にも大きな負担を感じる場面が多くあります。

・給与の低さ:
介護職の給与水準は一般的に低めであり、その割に仕事の負担が大きいため、経済的な不安を感じている人が多いです。

・キャリアパスの不明確さ:
将来のキャリアに対する展望が見えにくいと感じる人もいます。スキルアップや昇進のチャンスが限られていることも、キャリア形成における悩みの一つです。

・ワークライフバランスの悪さ:
長時間労働や休日出勤が多いため、プライベートの時間が確保しにくく、家族や趣味の時間が取れないという悩みがあります。

・職場内の人間関係:
介護施設や在宅介護の現場では、スタッフ間のコミュニケーションが重要ですが、それが原因で人間関係のトラブルを抱えることもあります。

例えば、調理や掃除などの生活援助中心の介護事業所がありました。「身体的負担の少ない介護」を採用メッセージに盛り込んだことで、複数の腰痛を抱える介護職員が応募してきました。

応募者の中には、以前他の介護施設で働いていたが、重労働が原因で腰痛が悪化し、仕事を続けられなくなった方がいました。しかし、当社が提供する身体的負担が少ない業務内容に魅力を感じ、再び介護職への挑戦を決意しました。実際に当社に入職した後、腰痛の症状が改善し、以前と同じように介護の仕事に情熱を持って取り組むことができるようになったという声をいただきました。

重要なのは、介護職員が抱える問題や不安に対して、御社がどのように対応し、解決策を提供できるかを明確にし、そのポイントを採用メッセージに反映させることです。

求人への注目を集めるための戦略:求人媒体のクセを知る

介護事業所が人手不足に対応するためには、まず優れた求職者に自社の求人情報を見てもらう必要があります。そのためには、どの求人媒体を利用するかを慎重に選び、求人広告をいかに魅力的にするかが鍵を握ります。

競合他社との条件を比較検討し、自社の強みを明確に打ち出すことで、求職者の悩みを解決できるポイントを前面に出すことが重要です。しかし、それにはまず、求職者に自社の求人を目にしてもらうことが先決です。

求人媒体を選択する際には、その媒体が持つ「クセ」を理解することが重要です。求職者が検索時に目にする情報は、主に求人のタイトル、掲載されている写真、そして給与情報です。
これらの情報が、求職者が求人をタップ(クリック)するかどうかを決める重要な要素となります。求人媒体によっては、これらの情報の表示方法に特徴があり、その特徴を活かして求人情報を作成する必要があります。

例えば、求人タイトルには、具体的で魅力的な表現を用いることが推奨されます。また、写真については、実際の職場の様子やスタッフの笑顔など、働く環境の良さを伝えるものを選ぶことが大切です。可能な限り写真にキャッチコピーとなる文字を入れるのも効果的です。給与情報は明確にし、可能であれば業界平均を上回る魅力を提示することで、求職者の関心を引きます。

このように、求人媒体の特性を理解し、求職者の視点に立った魅力的な求人広告を作成することで、多くの優秀な介護スタッフの応募を促すことができます。

4.人手不足が当たり前の介護業界、採用戦略の決め手はPDCAサイクル

ここまで、介護業界が直面する深刻な人手不足問題を克服するための採用戦略や求人作成のテクニックについてお話ししてきました。でも、ここで一息ついてしまうのはまだ早いです。魅力的な求人を丹念に作成しても、それが直接応募に結びつくとは限りません。ここで登場するのが、採用プロセスの最終ポイントにして、もっとも重要な戦略――PDCAサイクルの活用です。

PDCAサイクル、すなわちPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)のサイクルを採用プロセスに適用することで、応募者の反応を細かく分析し、何がうまくいって何がうまくいかないのかを明確にします。そして、その情報を基に、求人のアプローチやメッセージを絶えずブラッシュアップしていくことが、成功への鍵を握ります。

例えば、ある期間公開した求人に対する応募数が期待に満たなかった場合、求人のタイトルや内容、提示されている条件など、どの要素が応募者の興味を引くのに十分ではなかったのかを検証します。

このようにしてPDCAサイクルを採用プロセスに組み込み、継続的に改善を行っていくことで、最終的にはより多くの質の高い応募者を引きつけ、かつ、彼らを長期にわたって定着させることが可能になります。採用はゴールではなく、新たなスタートです。応募者との出会いから始まる長い関係を、PDCAサイクルを通じて確実なものにしていきましょう。

応募を集める求人への最終ポイントはPDCAサイクル

求人募集して応募者を集める最重要戦略は、PDCAサイクルの適用です。多くの企業は、求人を公開したら後は結果を待つだけの状態ではないでしょうか?

ところが、介護業界のみならず中小企業で採用に成功している企業は、求人公開後に単に結果を待つだけでなく、求人プロセスを継続的に見直し、改善することでより多くの応募を獲得しています。

求人公開はスタートラインに過ぎず、応募者の反応を分析し、内容を調整することで、より魅力的な求人に仕上げることが可能です。

例えば、新人営業員が現場に出た際に成果が出なければ、その理由を分析し、改善策を講じるのと同じです。この継続的な改善プロセスにより、企業は応募者のニーズに合った求人を作成し、成功へと導くことができます。

新人営業社員が、現場でもまれPDCAを繰り返しながら売れる営業社員に成長していくように、求人も公開後に反応を見ながらPDCAを回して反応が取れる求人、言い換えると「売れる求人」に仕上げていくことが重要です。

求人情報が効果的であれば入社後の定着率も向上

応募者が実際に職場に加わった後、その新入職員をいかにして定着させるかが次なる課題となります。

求職者が何を求めているかを理解し、そのニーズに応える求人広告の作成は、応募数を増やすだけでなく、面接のドタキャンを防ぎ、最終的には定着率の向上にもつながります。

冒頭の訪問介護事業所社長は、過去に求人広告を出せば反応が得られた時代もありましたが、求職者の悩みや期待に対する理解と対応を求人で明確に示すことで、より意欲的な応募者を集めることが可能となりました。入社後も、彼らが期待した通りの職場であることを確認し、さらにはそれを超える魅力を提供することで、長期的に働き続ける動機付けとなります。

採用から定着までの一連のプロセスにPDCAサイクルを適用し、継続的な改善を行うことで、介護業界のような人手不足が顕著な分野でも、企業は優秀な人材を確保し、その人材を長く留めることができます。

まとめ

今回の記事を通じて、介護業界における人手不足問題への対策として、効果的な採用戦略についてご紹介しました。しかし、この問題は介護業界に限ったことではありません。人手不足に直面しているさまざまな業種・職種においても、同様の戦略が成功へと導く鍵となり得ます。

このような実践的な知識やノウハウは、電子書籍「小さな会社の求人3つの仕掛け」でさらに詳しく解説しています。この書籍では、訪問介護事業所の事例に加えて、保育士、看護師、歯科助手、営業、トラックドライバーといった、人手不足が深刻な業種・職種での成功事例を紹介しています。これらの事例は、実際に成功を収めた小さな会社や事業所によるものであり、以下のような様々な背景を持つ組織が含まれています:

社員20名の運送業(トラックドライバー)
代表1名の行政書士事務所(営業)
新設の重症心身障がい児童施設(看護師・保育士)
職員10名の保育園(保育士)
社員6名の歯科医院(歯科助手)
社員20名の障がい者自立支援センター(介護職)

これらの事例からは、具体的な戦略や工夫、それらの効果について学ぶことができます。それぞれの事業所が直面した課題とその解決策、採用から定着に至るプロセスで実施されたアクションの詳細は、多くの経営者や人事担当者にとって貴重な学びとなるでしょう。

「小さな会社の求人3つの仕掛け」は、これからの人手不足に対応するための実践ガイドとして、あなたの事業運営に役立つこと間違いありません。


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【社長Aさんのインタビュー記事はこちらから】
訪問介護事業所の採用成功事例


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