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従業員が急に欠勤…有給に振り替えるべき?社労士が教える対処法

従業員の急に欠勤。有給休暇に残余日数があれば、経営者の裁量で欠勤を有給に振り替えるのは問題です。では、従業員から有給への振り替え希望があった時は応じる必要があるのか?「欠勤を有給に振り替える」をテーマに社労士が解説します。

1.従業員の突然の欠勤:適切な対応が会社の信頼を守る

従業員の突然の欠勤は、会社運営にとって予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。そのため、適切な対応をとることが、会社の信頼と円滑な運営を守る上で非常に重要です。この記事では、突然の欠勤が発生した際の法的な枠組みと、実務上の対応方法について解説します。


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急な欠勤、会社側で有給に振り替えるのはOK?

従業員が突然欠勤を告げた際、社長はその状況に応じて適切な手続きを取らなければなりません。まず結論として、欠勤した日を有給休暇に振り替えるか否かは、原則として労働者の申請に基づいて決定されます。会社が一方的に決めることは違法となるため注意が必要です。たとえ欠勤控除にしなくてもいいようにとの考えであっても、会社が決めることは問題があります。

初動対応として、欠勤の報告を受けたらその理由と状況を確認し、記録に残すことが大切です。病気や家族の事情など、労働者が抱える事情によっては、事後に有給休暇の申請を受け入れる必要があるかもしれません。その際、就業規則に定められた休暇の取得規定に従い、適切な処理を行うことが求められます。

従業員から有給休暇への申請があり、それを会社が認めない限り、給料から欠勤分を控除することになります。

従業員が欠勤後に有給への振り替えを希望した時は?

従業員の急な欠勤。社長として最善を尽くしたとしても、会社側で有給休暇に振り替えることはできません。

一方で、従業員から有給休暇への振り替え希望があった場合はどうでしょうか?
ここで結論を先に申し上げますが、従業員が欠勤後に有給休暇への振り替えを希望したとしても、それを会社が認める義務はありません。

年次有給休暇は原則として労働者が請求すれば取得させなければならないものですが、「事前に」請求するという要件があります。これは、有給休暇が請求された際、その時季が事業の正常な運営を妨げると認められる場合、他の時季に有給を与えることができると労働基準法第39条第5項で規定された「時季変更権」が会社側に認められているためです。

ただし、当日の朝に突然請求された場合、会社側は代替要員を確保するための時間的余裕がなく、また始業直前での人材配置の変更も困難であるため、「時季変更権」の行使を判断すること自体、事実上不可能と考えられます。そのため、このような状況下では、使用者は年次有給休暇の請求を認める義務はないと解釈されます。

それでも、従業員が欠勤の理由を明確に伝え、それが傷病やその他やむを得ない事由である場合、会社として柔軟に対応することも考慮に入れるべきです。

そのためにも、就業規則には「突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤したときは、会社の承認により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えることができる」と明記しておくと良いでしょう。これにより、会社はそのルールに基づいた対応を取ることができ、誤解やトラブルを防ぐことができます。

特に小規模な事業所であっても、法的な枠組みを逸脱しないように注意することが大切です。従業員との信頼関係を維持しながら、公正な職場環境を維持するためには、明確なルール作りと適切なコミュニケーションが不可欠です。

2.従業員の要望に応える:有給振り替えの実務

中小企業では従業員との距離が近いため、急な欠勤や有給振り替えの要望への対応が日常的に生じます。しかし、社長として「従業員の気持ちに立った対応」を重んじつつも、法令遵守と会社の運営のバランスを取ることが求められます。

従業員からの有給振り替え要望への対応方法

従業員が欠勤後に有給休暇の振り替えを希望する場合、その要望に応じるかどうかは、会社の裁量によります。事業の運営に支障がない場合や、従業員の状況に鑑みて対応することは可能ですが、必ずしも応じなければならないわけではありません。

ただし、会社がその要望に応じるかどうかを決定する際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。

・従業員の過去の勤務態度や欠勤の理由
・欠勤による業務への影響
・他の従業員との公平性

フェアな有給振り替えポリシーを作る

従業員の有給休暇に関する要望への対応は、公平で透明性があるべきです。そのためには、以下のようなポリシーの策定が推奨されます。

・欠勤時の有給振り替えに関するルールを就業規則に明記する
・有給休暇の申請手続きを事前に徹底する
・突発的な状況に対しても、事前に定めたルールに基づいて柔軟に対応する

こうすることで、従業員とのトラブルを未然に防ぎつつ、社長としての配慮と法令遵守のバランスを取ることができます。また、従業員にとっても理解しやすく、納得感を持って働ける職場環境の構築に寄与します。

3.欠勤を有給に振り替え:こんな時どうする?

欠勤が発生した場合、会社側で対応する方法はいくつかありますが、状況に応じて適切な処理を行うことが重要です。ここでは、特に多い欠勤のケースと、それに対する有給振り替えの考え方を紹介します。

インフルエンザで欠勤した場合の対応

インフルエンザなどの病気で欠勤する場合、従業員は医療機関の診断をもとに欠勤を報告することが多いです。このとき、従業員が有給休暇を取得したいと希望すれば、会社はその請求を受け入れることが原則です。ただし、事前に申し出がない場合でも、病気が理由であれば、会社としては柔軟に対応を考えるべきです。

私用での急な欠勤時の扱い

一方で、私用による急な欠勤があった場合は、状況によっては有給休暇への振り替えを認めないという判断を下すこともあります。特に、事前の連絡がない場合や、欠勤が多い従業員に対しては、会社の方針を明確にする必要があります。しかし、家族の緊急事態などやむを得ない理由がある場合は、こちらも柔軟に対応することが望ましいです。

いずれにしても、欠勤に対する対応は、会社の方針や就業規則に基づいて一貫性を持たせることが大切です。その上で、従業員一人ひとりの状況を考慮し、人間味のある対応を心がけることが、職場の信頼関係を築く上で欠かせません。

まとめ

従業員が急に欠勤した場合、たとえ欠勤控除により給料が減額されることを避ける目的であっても、従業員の申出無くして有給休暇に振り替えることができません。
また、従業員から欠勤を有給休暇に振り替える希望があった時は、会社側としては必ずしも応じる必要はありません。
とはいえ、傷病等やむを得ない事情の場合は柔軟な対応も必要です。就業規則への整備が大切になります。




当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





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