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遅刻・早退を有給扱いにするのは大丈夫?社長が知るべき労務の真実

中小企業で時折採用される遅刻や早退の有給扱いという処理方法について、インターネット上で散見される様々な情報が真実を曖昧にしています。しかし、実際のところ、このような処理は法的に適切なのでしょうか?社労士の専門的な視点から、分かりやすく、かつ詳細に解説します。

1.遅刻・早退を有給扱いにするのは本当に問題ないの?社長が知るべき労務管理のカラクリ

従業員が遅刻や早退をしたとき、さてどうしますか?遅刻、早退を有給扱いにしている?その対応、もしかしたら労働基準法で言うところの灰色ゾーンか。いやいや、これは違法に近いかもしれません。ここでのポイントは、「適正な有給休暇の取得」と「遅刻・早退の適切な扱い」です。このふたつをクリアにして、従業員も会社も納得のいく職場を作りましょう。

遅刻・早退の有給扱い、会社が見落としがちなリスク

「ノーワークノーペイ」、つまり働かなかった時間には給料を支払わない。これが労働の基本です。しかし、遅刻や早退が積み重なれば、従業員の評価に響くのもまた事実。そんな時、社員のモチベーション維持のために、会社側が有給休暇を使って対応しようとすることがあります。しかしこれ、本当に大丈夫でしょうか?

遅刻を有給で処理するのは、表面的には社員思いのように見えますが、実はリスクが潜んでいます。なぜなら、有給休暇は労働者がリフレッシュするための権利。それを会社側が自己の都合で消化させるのは本来の目的から逸脱しているからです。

たとえ社員からの要望があったとしても、適切な対応は重要。遅刻・早退に対する明確なルールを就業規則に設け、従業員にはそのルールに従ってもらう。これが適切な処理の第一歩です。

本当に大丈夫?遅刻・早退と有給休暇の法律関係を見直そう

では、就業規則で定められた遅刻・早退の扱いはどのようになっていますか?多くの場合、その時間は給与から控除されると記載されているはずです。もし、それを会社側が勝手に有給扱いにしてしまうのは問題です。

年次有給休暇についても同様です。就業規則では「予め」や「2日前」に申請することが原則とされているのではないでしょうか?このルールを会社が自由に変更することは、労働者の権利を侵害する行為に他なりません。

遅刻や早退に対しては、就業規則に沿った控除を行うのが原則。しかし、これには労働者とのコミュニケーションが不可欠です。理解と協力を得るためにも、規則の背景と意図をしっかりと伝え、納得感を持ってもらうことが大切です。

2.5分の遅刻に半日有給?勤怠管理の常識を疑え!

朝の忙しい時間に社員が数分の遅刻をしただけで、半日も有給休暇を消化させるのは本当に適切だと思いますか?

勤怠管理には落とし穴があります。それは、遅刻・早退をどのように扱うかという点です。働いた分の給与を払い、働かなかった分は控除する「ノーワークノーペイ」の原則。このシンプルなルールを忘れてはいけません。

ノーワークノーペイの原則とは?

ノーワークノーペイとは、直訳すると「働かなければ給料はなし」という意味です。この原則は、労働基準法にも根ざしており、遅刻や早退によって実際に働かなかった時間については、給与の支払いを控除することができると定めています。

ただ、ここで肝心なのは、その控除を行うにあたっての透明性です。給与控除を行う根拠となる就業規則は、従業員に対して明示的に告知されていなければなりません。
もちろん、ノーワークノーペイの原則により、就業規則に規定されていなかったとしても、控除することは可能です。ただ会社側は「当たり前」と思っていることでも、従業員はそう思っていないこともあります。信頼関係という点でも就業規則に定め、告知することが重要です。

遅刻・早退に対する公正な処理、その判断基準は?

遅刻や早退が起きた際、その処理方法が公正かどうかが問われます。
まず最初に行うべきは、正確な勤怠記録の取り扱いです。計算が楽な勤怠管理システムがあれば良いですが、タイムカードでも十分です。重要なのは、控除を行う際の根拠となる記録の正確性と、その記録に基づいた公平な処理です。

そして、遅刻や早退の時間を有給休暇で補填するのは、労働者からの申し出があったときに限ります。この際、有給を利用する時間帯には業務を行わないよう厳守しましょう。

たとえば5分の遅刻があった場合、半日や1日の有給休暇を消費するのは不合理です。
もし時間単位で有給を取得できる制度があれば、こうした小さな時間の調整も可能になります。

ただし、就業規則で有給の事後承認の取り扱いが定められているかを確認することが先決です。

要するに、遅刻・早退の有給扱いは、社員の意志を尊重し、一方的な適用を避けるべきなのです。社長、勤怠管理においては、従業員と会社双方の権利と義務を遵守し、公平かつ透明性のあるルール作りが必要不可欠です。

最後に、遅刻や早退に対する対応には「柔軟性」と「ルールの明確性」のバランスが求められます。厳しすぎる処罰は従業員の士気をそぎ、あいまいなルールは給与計算の不公平を生み出す原因となります。適切なバランス感で、職場の信頼と生産性を高めましょう。

ただし、ここで注意したいのは、控除する際にはその根拠となる就業規則が必要です。「働かなければ給料はなし」は、会社側からすると当たり前でも、その規則は事前に労働者に、その明示しておく必要があります。社員が知らないうちに控除されては、信頼関係にひびが入る原因にもなりかねません。

従業員の理解と合意を得るために

遅刻・早退の処理方法を決定する際は、従業員とのコミュニケーションを密に取り、理解と合意を得ることが不可欠です。会社の考え方や処理方法の理由をしっかりと伝え、従業員からのフィードバックを得ることで、お互いにとって納得のいくルールが作れるでしょう。

また、時には従業員のライフスタイルに合わせた勤務形態を提供することで、遅刻や早退の発生自体を減らすことも考えられます。フレックスタイム制や在宅勤務の導入など、時代に合わせた働き方の提案も重要です。

労働法規との適合性をチェック

最後に、勤怠管理のルールは労働法規との適合性を常にチェックし、最新の法改正にも対応していく必要があります。法律は変わるものです。たとえば、労働時間の定義や、時間外労働に対する規制が更新された際には、それを受けて就業規則を見直すことも大切です。

そして、忘れてはならないのが「労働者の健康と福祉」です。社員が心身ともに健康でいられるよう、適切な労働環境の提供が企業の義務です。遅刻や早退を減らすためにも、社員一人ひとりの状況を理解し、サポートすることが重要になります。

勤怠管理の基本に立ち返りつつ、従業員とのコミュニケーションを大切にすることで、信頼と効率の高い職場環境を作り上げましょう。社員が安心して働ける場所が、企業成長の基盤となるのですから。

3.社員から「遅刻・早退を有給にしてください」、これってアリ?

「朝、ちょっと寝坊しちゃったから、今日の遅刻は有給で!」なんて社員からの提案、社長ならどう対応しますか?遅刻や早退をスマートに解決しようという社員のアイデアには一理あるものの、これがいざ実務になると色々と問題が発生するんですよね。

遅刻や早退を避けるための社員からの有給扱い要望、その真意とは?

社員が「有給を使って遅刻や早退をカバーしたい」と言い出したら、ちょっと待った!
その提案には、どんな意図があるのか見極めが大事。もちろん、従業員がリフレッシュできるようにと設けられた有給休暇の本来の意味を思い出しましょう。

遅刻や早退は、あくまでも稀なケースとして扱うべきで、有給休暇は計画的に使うもの。ここを間違えると、勤怠管理がグダグダになってしまうかもしれません。

有給休暇の事前申請と事後承認、その微妙なバランス

有給は通常、事前に申請するもの。急な体調不良などの「やむを得ない事情」があった時のみ、事後承認という形を取るのが一般的です。就業規則を確認していただくと、そう定められていると思います。

でも、遅刻や早退を有給でチャラにしようとすると、これがどうも微妙なんですよね。会社としては、事前申請を基本としつつ、事後承認のルールもきちんと明確にしておく必要があります。ルールを曖昧にしておくと、後々給与計算や労務管理で混乱を招く原因になりかねませんから。

遅刻や早退を有給扱いした時に起こる不整合

かりに、従業員からの希望があって、遅刻を有給休暇扱いしたとしましょう。
それならいいかも、と考えてしましがちですが、これも問題があります。

有給休暇は、労働者がその日または特定の時間帯に労働義務を負わず、それでも給与を受け取ることができる制度です。しかし、5分間の遅刻を理由に半日や1日分の有給休暇を適用すると、労働義務の免除という有給休暇の本来の意味に反する矛盾が生じます。

その時間帯に実際に働いていた場合、労働に対する対価として給与を支払うのが原則であり、有給休暇を適用することは論理的に不整合です。

したがって、遅刻や早退が生じた際は、その実働時間に見合った適切な処理を行い、有給休暇は実際に働いていない時間帯にのみ適用することが肝要です。このようにすることで、労働と給与の公平性を保ちながら、有給休暇制度の正しい運用を守ることができます。

給休暇の事前申請と事後承認の扱い

有給休暇は労働者に与えられた貴重な権利であり、その本質は労働義務からの一時的な解放です。有給休暇の時間内に労働を行うことは、この基本原則に反する行為と言えます。

では、実際に働いた時間、例えば3時間55分をどう扱うべきでしょうか?有給休暇中に労働をしたという矛盾を解消するために、働いた時間を無視するわけにはいきません。そうした場合、労働の対価としての給与が支払われなければ、不払い賃金という別の問題が生じてしまいます。

したがって、遅刻や早退を有給休暇で補填するというアプローチは、法的な整合性を欠く行為であると言えるでしょう。実際に働いた時間に対する公正な報酬を確保しつつ、有給休暇の正当な使用を促進するためには、これらの事柄を明確に区別し適用することが必要です。

4.まとめ「遅刻・早退を有給扱いに」結局どうすればいいの?

遅刻や早退を有給扱いにするのは、会社側からするのはNG。かといって、従業員からの希望があっても様々な矛盾があるため問題あり。では、結局どうすれば良いのでしょうか?
最後に、遅刻・早退時の対応策としての3つのアプローチを提案します。

原則通り遅刻・欠勤控除し指導を強化する

遅刻や早退があった場合、まずは「ノーワークノーペイ」の原則に基づいて、給与からの控除を考えるべきです。ただし、この控除は計算方法も含めて就業規則に控除の計算方法も含めて規定し、の定めに則って行うことが望まれます。

遅刻や早退が繰り返される場合には、個別の指導を徹底し、就業規則に基づく懲罰を検討することも重要です。これにより、ルールの遵守を促し、他の従業員への影響も考慮した上で、適切な職場環境を維持することができます。

有給休暇の時間は働かせない(有給と仕事の時間をダブらせない)

遅刻や早退を有給休暇で補填する場合、就業規則に事後承認の規定があるかを確認する必要があります。
事後承認が可能であっても、有給休暇の時間帯に実際に休んでもらう。言い換えると、有給休暇の時間と仕事の時間をダブらせないことが求められます。

例えば、午前中に遅刻した場合はその日の午前中を有給休暇にして(出勤せず)休んでもらうなど、規定に基づいた明確な取り扱いが必要です。

しかしこの方法には、たった5分間のために午前中休むという不合理さが伴うため、状況に応じた適用が求められます

時間単位の年次有給休暇制度の導入

最も柔軟性があり、現代の労働環境にマッチするのが時間単位での有給休暇制度の導入です。遅刻や早退の時間に応じて有給休暇を取得できるようにすることで、従業員のワークライフバランスを支援し、無理なく勤務形態に適応できるようになります。

ただし、有給休暇を取得した場合は、遅刻や早退の事実が消えるため、勤怠に関する懲罰は適用されない点に注意が必要です。

これらの方法を踏まえ、各企業は自社の事情に合わせた勤怠管理のルールを設定し、公正かつ柔軟な職場環境を実現することが求められます。



当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。





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