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退職する社員へのボーナス、どのくらい減額できる?社労士が解説

中小企業の社長さん、退職予定者のボーナス問題に頭を悩ませていませんか?ボーナス減額の法的な基準と、法的な基準と、実務上の適切な対応方法について、社労士が分かりやすく解説します。この記事を通じて、公平かつ効果的な人事管理のヒントを得ましょう。

1.退職予定者へのボーナス(賞与)、基本の知識

中小企業の社長にとって、退職してしまう社員にはなるべくボーナス(賞与)を払いたくないという気持ちもあるでしょう。この記事では、そんな社長の感情を理解しつつ、退職予定者へのボーナスに関する基本的な知識と適切な対応方法について解説します。経営者としての正しい判断と法律的な側面、そして公平な人事管理のバランスをどう取るか、そのポイントをご紹介します。

ボーナスの法的基礎:企業の裁量とは?

労働基準法では、ボーナスの支給に関する具体的な規定は存在しません。これは、ボーナス支給は基本的に企業の裁量に任されていることを意味します。しかし、この自由度には責任が伴います。公平で透明な基準に基づくボーナス制度の運用が重要です。

退職予定者への「ボーナスなし」は違法?OK?

退職する社員へのボーナス支給について、多くの中小企業社長は「できれば払いたくない」と考えているかもしれません。しかし、ボーナスに関する労働基準法の明確な定めはありません。重要なのは就業規則にどのように記載されているかです。

多くの企業では、賞与を年2回支給し、算定対象期間を設けています。対象者は、支給日当日に会社に在籍し、算定対象期間に通常に勤務していた者としています。
具体的には、このような規定になっているかと思います。

  ・賞与の支給、:年2回(7月、12月)に支給する
  ・算定対象期間:7月分 前年12月~5月
          12月分 6月~11月
  ・対象者:支給日当日に会社に在籍し、かつ算定対象期間に通常に勤務していた者

このような規定の場合、 退職が予定されているというだけで支給しないのは違法となります。
支給日に既に退職している場合は、支給の必要はありません。

就業規則に賞与の規定がない場合は、社長の判断で特定の社員にのみ支給することも問題ありません。この場合、社長の評価に基づいてボーナスの支給を決定することになります。

退職予定者のボーナス減額、どこまでが適切?

ボーナスの根本的な意味を考えると、「評価に応じた賃金の後払い」と、「将来への期待とモチベーションの向上」のための支払いという側面があります。

退職予定者に対しては、将来への期待ができないため、ある程度の減額は可能とされています。ここでの問題は、ボーナスの「将来への期待部分」がどの程度を占めるかという点です。この部分をどう評価し、どの程度減額するかが適切な対応の鍵となります。

公平と透明性:退職予定者へのボーナス処理方法

退職予定者へのボーナス処理においては、公平性と透明性が最も重要な要素です。全ての従業員に均等に適用される明確な基準を設け、これを社内で透明に共有することが必要です。ボーナス減額や非支給の決定をする場合には、その理由を明確にし、従業員からの疑問や不満が生じないように配慮することが求められます。また、ボーナスの支給方法や基準に関する変更は、事前に従業員に通知し、理解を得ることが大切です。

2.退職予定者へのボーナス、減額可能なケースとその範囲

退職予定者へのボーナス減額について、どの程度までが許容されるのかは経営上の大きな関心事です。このセクションでは、減額が可能なケースとその範囲について、特に重要な判例を基にした具体的なガイドラインをご紹介します。ボーナスの減額を考慮している企業にとって、法的な側面と公平性を考慮した適切な対応が求められます。

どのくらい減額できる?具体例と判例

では、具体的にどれくらいまでなら減額してもいいでしょうか?
ボーナス減額の許容範囲については、ベネッセコーポレーション事件が重要な指針となります。この事件では、退職予定者のボーナスを82%減額したことが問題となりましたが、判決では以下の点が明らかにされました。

・退職予定者と非退職予定者の賞与額に差を設けること自体は不合理ではない。
・将来に対する期待部分が、82%を占めるのは認められない。
・将来の期待部分は、非退職予定者の賞与額の2割の範囲を限度とするのが相当。


この判決に基づくと、ボーナス(賞与)の2割程度の減額までであれば、一般的に許容範囲と考えられます。しかし、減額を行う際は、このケースを参考にしつつも、自社の具体的な状況や従業員の貢献度を考慮することが重要です。

減額時の注意点

ボーナス減額を行う際には、特定の従業員に不公平にならないように注意が必要です。また、減額の理由は明確にし、従業員に適切に伝えることが重要です。減額の決定は、労働基準法を含む法律に違反しないようにし、就業規則と一致するように行う必要があります。

3.ボーナス減額の実務上の考え方と対応

退職予定者へのボーナス減額はデリケートな問題です。法的な問題をクリアするのはもちろんのこと、企業経営への影響も考えながら実務上の対応をしていく必要があります。このセクションでは、ボーナス減額の適切な実務上の対応方法について解説します。

ボーナス減額の適切な範囲と判例

ボーナスの減額を考える際、その根底には「評価に応じた賃金の後払い」と「将来への期待」の2つの大切な意味があります。特に退職予定者に関しては、彼らの将来への期待はもはや見込めないため、ボーナスの減額を検討することは妥当とされています。

この減額の範囲については、ベネッセコーポレーション事件などの過去の判例が示す通り、一般的には20%とされています。しかし、この決定を下す際には、従業員への影響や企業の公平性を考慮し、透明な基準に基づいて行うことが重要です。また、このような措置が社内の士気にどのような影響を与えるかも考慮に入れる必要があります。

社内の反応と公平なコミュニケーション

ボーナス減額を行う際、在籍社員の反応は非常に重要です。
特に退職予定者がボーナスを受け取る際、2割の減額は本人にとって大きな影響を与える可能性があります。
「ボーナス、めちゃ減らされた」と周囲に言われることで、社内の雰囲気にも影響を及ぼす恐れがあります。
また、退職を早めに伝えると損をすると感じる社員が出る可能性もあります。
これは、ボーナスを受け取ったその日に退職を伝え、翌日から有給休暇を使うといった行動につながるかもしれません。
もちろん、このようにボーナスをもらってすぐ辞めると言ったからと言って、 返還を求めることはできません。

このような状況を避けるためにも、公平かつ透明なコミュニケーションが不可欠です。

個別評価に基づくボーナスの調整

社労士としての経験から、社長には退職予定者へのボーナスを一律に減額するのではなく、個別の評価に基づいて対応することをアドバイスしています。

たとえば、これまで会社のために頑張った社員には、その努力と貢献を認め、ボーナスを上乗せすることも一つの方法です。このような対応は、本人にとっても、社長や会社に対する良い印象を残すきっかけになり、他の社員にも良い影響を与える可能性があります。

一方、評価の低い社員には、問題にならない範囲で減額を大きくすることも必要です。このアプローチは公平性と透明性を保ちつつ、各社員の貢献度に応じた適切なボーナス調整を可能にします。

まとめ

今回は、退職予定者へのボーナス減額に関する法的な側面、公平性と透明性の重要性、具体的な対応方法について解説しました。

法的な基準や判例を参考にして、企業は個々の社員の貢献度に応じたボーナスの調整を考慮することが望ましいでしょう。公平かつ透明なコミュニケーションを通じて、社内のモラールと信頼を維持することが重要です。

この記事を通じて、退職予定者へのボーナス処理に関する具体的なアプローチを提供することで、中小企業経営者が適切な人事管理を行うための一助となれば幸いです。




当社労士事務所は主に20名以下の小規模企業様の採用、定着、人事労務の問題解決に取り組んでおります。




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