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経営者必見!就業規則変更に従業員が同意しない場合の対処法を社労士が解説

就業規則の変更は、中小企業経営において避けて通れない道です。特に従業員の同意が得られない場合、経営者は大きな不安を感じることでしょう。この記事では、そんな経営者の悩みを解消するための具体的なアドバイスを提供します。従業員とのコミュニケーション方法から法的手続きまで、スムーズな変更実施のためのポイントを紹介します。

1.就業規則は会社の決定でOK!従業員の同意は不要です

就業規則の変更は、企業運営において時に必要不可欠です。特に中小企業では、柔軟な対応が求められることも多いですよね。しかし、従業員の同意がなくても大丈夫なのでしょうか?ここでは、その疑問にお答えします。

就業規則変更の法的権限と範囲

まず、就業規則は会社が労働条件やルールを定める重要な文書です。労働基準法によれば、就業規則の作成は使用者の義務であり、変更も基本的には会社の裁量に委ねられています。ただし、変更内容が労働契約法や労働基準法を下回る場合は無効となるため、法律の枠組み内で行う必要があります。これは、従業員に不利益をもたらすような変更を避け、公平な労働環境を保持するためです。

同意は不要でも周知は義務!円滑な職場環境のために

就業規則の変更において、従業員からの個別の同意は原則として必要ありませんが、周知は義務です。就業規則は労働基準法に基づく労働者の労働条件を定める「規則」であり、変更があった場合、その内容を従業員に知らせることが法的に要求されています。周知を怠ると、変更が効力を持たないこともあります。

この義務を果たすためには、変更内容を従業員に明確に説明し、理解してもらうことが重要です。義務とは別の問題として、円滑な職場環境を保つためにも、このプロセスは必要不可欠です。特に、変更内容が労働者にとって不利益になる可能性がある場合は、その合理性や必要性をしっかりと伝え、納得感を得るための努力が求められます。

10人以上の従業員を持つ事業所の届出要件

10人以上の従業員を持つ事業所では、就業規則の変更時に労働基準監督署への届出が必要となります。この届出には、従業員代表による意見書の提出が求められます。
通常、この意見書は「異議なし」として提出されることが多いですが、異議が含まれていたとしても、それが届け出自体を妨げるものではありません。

2.就業規則の不利益変更における対応と基準

就業規則の変更は企業の決定で行えるものの、従業員に不利益をもたらすような変更、いわゆる「不利益変更」は、原則としては許されません。

ただし、特定の条件下でその合理性が認められた場合、変更が可能になることもあります。ここでは、不利益変更が認められる要件と、企業が取るべき対応について詳しく解説します。

不利益変更とは何か?その定義と例

不利益変更とは、従業員にとって労働条件が悪化するような就業規則の変更を指します。

例としては、
・賃金の減額
・労働時間の延長
・休日数の削減
などが挙げられます。

これらの変更は、従業員の生活や労働環境に直接的な影響を及ぼすため、極めて慎重な対応が求められます。企業は、変更の必要性と労働者への影響を十分に検討し、その合理性を慎重に評価する必要があります。

合理性の評価基準

不利益変更を行う場合、その合理性が重要な評価基準となります。合理性を判断する材料として、以下の点が考慮されます。

(1)変更の必要性:
企業の経営状況や業務の必要性に基づく変更である場合、合理性は認められやすいです。

(2)労働者が受ける不利益の程度:
変更により労働者が受ける不利益が大きいほど、合理性の評価は厳しくなります。

(3)変更の相当性:
社会的な状況の変化や代替措置の提供なども合理性の評価に影響します。

例えば、企業の経営状況の悪化や業務の必要性による変更であれば、その合理性は認められやすいです。しかし、労働者の権利や福祉を不当に害するような変更は、法的な問題を引き起こすリスクが高く、非常に注意が必要です。

また、変更によって労働者が受ける不利益が大きくなるほど、個々の従業員との合意も合理性の重要な判断基準となります。

特に、賃金体系の変更や勤務時間の調整などは、労働者の生活に深刻な影響を与える可能性があるため、個々の従業員との合意が不可欠となります。

企業は、変更の影響を最小限に抑えるための措置を検討し、従業員とのコミュニケーションを通じて理解と合意を得る努力をすることが求められます。

3.従業員が同意しない場合の対応策

就業規則の変更に対して従業員が同意しない場合、どのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、効果的なコミュニケーション方法や、説明会と個別面談の重要性、そして合意形成に向けたアプローチについて解説します。

効果的なコミュニケーション方法

就業規則の変更に際しては、従業員との効果的なコミュニケーションが非常に重要です。変更の背景や目的、影響について明確かつ分かりやすく説明することで、従業員の理解と協力を得ることが可能になります。

具体的には、わかりやすい言葉を使って、変更の必要性や利点を伝えることが重要です。また、従業員からの質問に対しては、正直かつオープンに答えることで、信頼関係を築くことができます。

説明会と個別面談の重要性

就業規則の変更を行う際には、全体の説明会と個別の面談の両方が効果的です。説明会では、変更の概要とその理由を全従業員に伝えることができます。

一方で、個別の面談では、従業員一人ひとりの疑問や懸念に対応することが可能です。このような二段階のアプローチにより、従業員の理解を深め、不安や誤解を解消することができます。

合意形成へのアプローチ

従業員が就業規則の変更に同意しない場合、合意形成に向けたアプローチが必要です。まず、従業員の意見や懸念を丁寧に聞き出すことから始めます。従業員が変更に対して持つ疑問や不安を理解することが、信頼関係を築く第一歩です。

その後、変更の必要性や合理性を説明し、従業員の理解を促します。このプロセスでは、どれだけ粘り強く、かつ公平に話し合いを行うかが非常に重要になります。従業員が納得するまでの努力は、変更の合理性を支える重要な要素となります。

しかし、注意が必要なのは、合意を得るために強要するような行為は絶対に避けるべきだということです。強要が感じられると、信頼関係が損なわれるだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。したがって、従業員との対話は、常に尊重と理解を基に行うべきです。

4.就業規則変更のスムーズな進め方

就業規則を変更する際には、正しいプロセスを踏むことが重要です。変更案の策定から、労働基準監督署への届出、最終的な周知まで、各ステップを丁寧に進めることで、トラブルを避けることができます。

変更案の策定と提示

就業規則の変更を行う際には、まず変更案を慎重に策定することが重要です。この過程で、変更の目的、内容、及び影響を明確にし、必要に応じて専門家の意見を取り入れると良いでしょう。

策定された変更案の提示には、従業員にとって理解しやすい方法を選ぶ必要があります。例えば、全体の従業員向けに説明会を開催することで、変更の概要とその背景を一斉に伝えることができます。また、個別の面談を設定し、従業員一人ひとりの疑問や懸念に直接応えることも効果的です。これらのアプローチにより、従業員からのフィードバックを受けやすくなり、変更に対する理解と受け入れを促進することができます。

変更案の提示は、従業員とのオープンなコミュニケーションを図る絶好の機会です。変更の理由と効果をわかりやすく説明し、従業員からの意見や提案を積極的に聞き入れることで、より円滑な変更プロセスを実現することができます。

労働基準監督署への届出と手続き

10人以上の従業員を抱える企業では、就業規則の変更を労働基準監督署へ届け出る必要があります。この届出には、以下の必要書類を準備し、提出することが求められます。

就業規則(変更)届:
就業規則を作成または変更した旨を記載した書面です。この書類は2部提出する必要があります。

意見書:
労働者代表の意見を記載した書類です。この意見書も2部提出します。

変更した就業規則:
変更後の就業規則全体、または変更箇所の新旧条文対照表です。従業員が変更内容を明確に理解できるよう、詳細に記載されていることが重要です。こちらも2部提出します。


これらの書類を正確に準備し、届出を行うことで、就業規則の変更が適切に行われていることを証明し、法令遵守を確保することができます。

変更の実施と周知

就業規則の変更が決定された後、その内容を従業員に効果的に周知することが重要です。以下は、変更内容を周知するための主な方法です。

掲示または備え付け:
変更された就業規則を、従業員が日常的に利用する休憩スペースや更衣室など、見やすい場所に掲示するか、簡単に手に取れる場所に備え付けます。支店や店舗、工場など、複数の事業所がある企業の場合は、それぞれの場所で掲示または備え付けることが求められます。

書面の交付:
従業員に就業規則のコピーを直接渡す方法です。この方法では、規則の外部への持ち出しも考慮し、必要に応じて持ち出し制限を設けることが有効です。

デジタルデータでの提供:
サーバーやクラウド上に就業規則を保存し、従業員がいつでもアクセスして閲覧できるようにする方法です。この場合、データの外部への持ち出しや印刷を制限するためのセキュリティ対策も重要になります。


これらの方法を適切に組み合わせることで、従業員が変更内容を正確に理解し、必要に応じて参照できるようにすることが可能です。周知のプロセスは、変更内容が従業員に受け入れられるための重要なステップであり、労働基準法の基準を充たすのみならず、従業員との良好な関係を維持し、円滑な職場環境を促進する上で欠かせない要素です。

5.経営者のための実践的アドバイス

就業規則の変更は、企業経営において避けられない課題の一つです。しかし、適切な方法で進めれば、トラブルを回避し、職場の円滑な運営に寄与することができます。ここでは、経営者に向けた実践的なアドバイスを紹介します。

トラブル回避のためのポイント

就業規則の変更においては、特に以下のポイントに注意することがトラブル回避につながります。

従業員とのコミュニケーション:
変更内容を明確に伝え、従業員の意見を尊重することで、理解と協力を得やすくなります。

法令遵守: 労働基準法などの法令に基づいて適切に変更を行い、法的な問題を未然に防ぎます。

変更内容の合理性: 変更の必要性や合理性を十分に検討し、従業員に納得感を与えることが大切です。

成功のためのチェックリスト

就業規則の変更を成功させるために、以下のチェックリストを活用すると良いでしょう。

□変更内容は従業員にとって理解しやすいか

□法的な基準に適合しているか

□従業員からのフィードバックを得ているか

□変更の影響を最小限に抑えるための措置を講じているか

専門家の助言を活用する意義

就業規則の変更にあたり、社会保険労務士や法律専門家の助言を求めることは非常に有効です。専門家は、法令遵守の観点から適切なアドバイスを提供し、複雑な問題に対する解決策を提示できます。また、専門家と協力することで、変更プロセスの信頼性を高め、従業員からの受け入れを促進することが可能です。

まとめ:中小企業経営者向け 就業規則変更のための実践的ガイド

(1)就業規則は会社が定めるもの。従業員の同意は不要
就業規則の変更は、法的には従業員の同意を必要としません。しかし、周知義務を果たし、従業員との信頼関係を維持することが重要です。

(2)不利益変更の可能性と判断基準
従業員に不利益をもたらす変更は原則禁止されていますが、合理性が認められる場合は変更が可能です。変更の必要性や労働者への影響を十分に検討し、合意形成を目指します。

(3)同意しない従業員への対応策
従業員が変更に同意しない場合は、効果的なコミュニケーション、説明会や個別面談を通じて、従業員の理解と協力を得ることが重要です。

(4)正しい就業規則変更プロセス

変更案の策定、労働基準監督署への届出、そして周知といったプロセスを正しく行うことで、法令遵守と従業員の理解を確保します。

(4)経営者への実践的アドバイス
トラブル回避のためのポイント、成功のためのチェックリスト、そして専門家の助言を活用することが、スムーズな変更実施につながります。


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