
社労士が経営者から受ける質問「有給休暇は所定労働時間に含まれるのか」について解説。午前中有給休暇を取得し、午後出勤。そのまま残業をした時、時間外手当の計算はどうなる?①残業代の割増賃金が必要?②そもそも残業代は不要?③残業代は必要だけど割増は不要?。基本の考え方がわかればこの疑問も解決します。
■年次有給休暇とは何か?

長時間の労働や疲労は、労働者の健康を損なわせるリスクがあるため、年次有給休暇という制度があります。仕事を休んでも給料は支払うので、リフレッシュして下さい。という休暇です。勤務開始6ヶ月を経過し、その間に80%以上の出勤がある労働者に10日間の有給が付与されます。
年次有給休暇と休日の違い
「有給休暇は所定労働時間に含まれるのか」を考える前に、年次有給休暇と休日について整理してみましょう。どちらも休みには違いがないので、普段は経営者の方も社員の方達もあまり意識はしていないかもしれません。ところが、両者には大きな違いがあります。
休日は、労働義務が無い日。
それに対し、有給休暇は、(労働義務が有る日の)労働義務を免除している日。でも、給料は労働した扱いをして支給します、という日です。
休日は、労働義務が無い日。
それに対し、有給休暇は、(労働義務が有る日の)労働義務を免除している日。でも、給料は労働した扱いをして支給します、という日です。
■ 半日有給休暇の日に残業をした時の残業代は?

実際に問合わせいただく例をクイズ形式で考えてみましょう
午前中有給休暇(半休4時間)、午後勤務(4時間)した後2時間残業した場合は次のどれ?
まずは1つ目の例です。
【社員Aさん ある日の勤務状況】
・1日の所定労働時間が8時間
・午前中有給休暇(4時間)
・午後勤務(4時間)
・残業(2時間)
この場合、残業した2時間の取扱いはどうなるでしょうか?
次の3つの中から選んでください。
①残業代の割増賃金(25%)が必要
②そもそも残業代は不要
③残業代は必要だけど割増は不要?
有給休暇は、本来は労働義務が有るにもかかわらず、その義務を免除している日。でも、給料は労働した扱いをして支給します、というのがポイントです。
【社員Aさん ある日の勤務状況】
・1日の所定労働時間が8時間
・午前中有給休暇(4時間)
・午後勤務(4時間)
・残業(2時間)
この場合、残業した2時間の取扱いはどうなるでしょうか?
次の3つの中から選んでください。
①残業代の割増賃金(25%)が必要
②そもそも残業代は不要
③残業代は必要だけど割増は不要?
有給休暇は、本来は労働義務が有るにもかかわらず、その義務を免除している日。でも、給料は労働した扱いをして支給します、というのがポイントです。
法定残業と所定残業(法定外残業)の違い
ここで、残業について補足説明します。
残業には大きく、法定残業と法定外残業(所定残業)があります。
【法定残業】
法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間)を超える残業で25%の割増賃金が必要。
中小企業の場合、1日8時間(週5日勤務)としている会社が多く、残業は全て法定残業になる。
【法定外残業(所定残業)】
法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間)以内の残業で25%の割増賃金は必要でない。時間分の給料のみの支払いでOK
1日の所定労働時間が7時間(週5日勤務)の会社は、1日1時間までの残業は法定外残業(所定残業)になる。
残業には大きく、法定残業と法定外残業(所定残業)があります。
【法定残業】
法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間)を超える残業で25%の割増賃金が必要。
中小企業の場合、1日8時間(週5日勤務)としている会社が多く、残業は全て法定残業になる。
【法定外残業(所定残業)】
法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間)以内の残業で25%の割増賃金は必要でない。時間分の給料のみの支払いでOK
1日の所定労働時間が7時間(週5日勤務)の会社は、1日1時間までの残業は法定外残業(所定残業)になる。
有給休暇は労働時間には含まれない
社員Aさんのある日の勤務状況は、このようになっていました。
・午前中有給休暇(4時間)
・午後勤務(4時間)
・残業(2時間)
①の時間外(残業代)の割増賃金が必要と答えられた方の根拠は、以下ではないでしょうか?
午前中の給料にも給料は発生している。給料をベースに考えると、この日の労働時間は10時間。残業の2時間は法定残業となり25%の割増賃金がかかる。
午前中の有給休暇は労働義務を免除しているわけですから、労働時間にはカウントされません。
であれば、労働時間にカウントされるのは、午後勤務の4時間と残業2時間、計6時間になる。1日の所定労働時間である8時間に達していないので残業代は不要。
そう考えると②のそもそも残業代は不要(残業の2時間はカウントなし)、との考えになってしまうかもしれません。
でも、そうすると2時間の残業をしているにもかかわらず、給料が発生しないことになります。それもおかしな話です。
ということで、③の残業代は必要だけど割増は不要。
2時間の残業はしています。
ですが、法定労働時間(8時間)以内であるため、所定残業(法定外残業)です。
正解は、2時間分の給料だけを払って25%の割増賃金は無しで良い、となります。
・午前中有給休暇(4時間)
・午後勤務(4時間)
・残業(2時間)
①の時間外(残業代)の割増賃金が必要と答えられた方の根拠は、以下ではないでしょうか?
午前中の給料にも給料は発生している。給料をベースに考えると、この日の労働時間は10時間。残業の2時間は法定残業となり25%の割増賃金がかかる。
午前中の有給休暇は労働義務を免除しているわけですから、労働時間にはカウントされません。
であれば、労働時間にカウントされるのは、午後勤務の4時間と残業2時間、計6時間になる。1日の所定労働時間である8時間に達していないので残業代は不要。
そう考えると②のそもそも残業代は不要(残業の2時間はカウントなし)、との考えになってしまうかもしれません。
でも、そうすると2時間の残業をしているにもかかわらず、給料が発生しないことになります。それもおかしな話です。
ということで、③の残業代は必要だけど割増は不要。
2時間の残業はしています。
ですが、法定労働時間(8時間)以内であるため、所定残業(法定外残業)です。
正解は、2時間分の給料だけを払って25%の割増賃金は無しで良い、となります。
実際の対応は各社の運用ルールに合わせてください
とはいえ、同じ残業でも割増賃金の25%をつける、つけないというのを1つ1つ計算するのは給与計算の際、事務作業として煩雑になります。
とのことで、残業をした分は全て25%の割増賃金を計算している会社も多いのではないでしょうか?ここでお示しした回答は、あくまで法律に則った最低基準。
それを上回るのは全く問題ないですし、現状としてそのように運用している場合は、残業2時間に対しても、割増賃金をつけて支給する必要があります。
とのことで、残業をした分は全て25%の割増賃金を計算している会社も多いのではないでしょうか?ここでお示しした回答は、あくまで法律に則った最低基準。
それを上回るのは全く問題ないですし、現状としてそのように運用している場合は、残業2時間に対しても、割増賃金をつけて支給する必要があります。
■有給休暇を取得した週の残業は?

続いて2つ目の例に移ります。こちらもクイズ形式で考えてみましょう。
所定労働時間1日8時間、週40時間。1日有給休暇した週の残業は?
【社員Bさんのある週の勤務状況】
・所定労働時間 1日8時間(月~金)、週40時間
・月曜日に有給休暇(8時間)
・火曜日に残業(4時間)
・水曜から金曜は定時で退勤
この場合、残業した火曜日の4時間の取扱いはどうなるでしょうか?
次の3つの中から選んでください。
①残業代の割増賃金(25%)が必要
②そもそも残業代は不要
③残業代は必要だけど割増は不要?
・所定労働時間 1日8時間(月~金)、週40時間
・月曜日に有給休暇(8時間)
・火曜日に残業(4時間)
・水曜から金曜は定時で退勤
この場合、残業した火曜日の4時間の取扱いはどうなるでしょうか?
次の3つの中から選んでください。
①残業代の割増賃金(25%)が必要
②そもそも残業代は不要
③残業代は必要だけど割増は不要?
1日8時間、週40時間のいずれかを超えると法定残業
この場合、週の労働時間をみると、週の労働時間36時間(所定時間労働:32時間、残業4時間)となります。
・月曜 0時間(有給休暇)
・火曜 12時間(所定労働時間:8時間+残業:4時間)
・水曜 8時間
・木曜 8時間
・金曜 8時間
先ほどの例から考えると、火曜の残業4時間を含めても週40時間以内になるので、法定外残業(所定残業)と思われるかもしれません。
法定労働時間は、1日8時間かつ週40時間。
週40時間以内であっても、1日8時間を超える残業は法定残業となります。
この場合は、火曜日の4時間に対する残業代は、4時間分の給与にプラスして25%の割増賃金が必要です。
・月曜 0時間(有給休暇)
・火曜 12時間(所定労働時間:8時間+残業:4時間)
・水曜 8時間
・木曜 8時間
・金曜 8時間
先ほどの例から考えると、火曜の残業4時間を含めても週40時間以内になるので、法定外残業(所定残業)と思われるかもしれません。
法定労働時間は、1日8時間かつ週40時間。
週40時間以内であっても、1日8時間を超える残業は法定残業となります。
この場合は、火曜日の4時間に対する残業代は、4時間分の給与にプラスして25%の割増賃金が必要です。
■まとめ
最近では労働者もネットで情報を得ることができるため、労働時間や残業代に対して(火)会社に疑問を投げかける例も増えています。そんな中でも、今回の事例は労働時間と有給休暇の両方にかかわる複雑なもので、きっちりと説明できなければ会社と労働者との信用・信頼関係に影響します。
この記事で理解を深めていただけると幸いです。
当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。
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