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完全歩合制は違法ではない!社労士が導入の注意点や効果をわかりやすく解説

完全歩合制。営業や販売などを中心として業種の社長は、できれば完全歩合制の給与にしたいと一度は考えられたことがあるのではないでしょうか?

ところが完全歩合制は、個人事業主と業務委託契約として結ぶもので営業社員タクシードライバー、アルバイトなど雇用契約を結んだ労働者に対して完全歩合制の給与にするのは違法と言われています。

その理由として、最低賃金との関係で、その月の売上がゼロだった従業員に対して給料はゼロとはできないからです。

また、労働基準法で労働した時間に応じて一定額の賃金保障をする「保障給」が義務付けられているからです。

逆に言うと、最低賃金と保障給の問題さえクリアすれば、完全歩合制という給与の仕組みは成立する。「完全歩合制は違法ではない!」と言えます。

今回は完全歩合制の給与を成立させるための要件や完全歩合制のメリットをお伝えします。

完全歩合制が違法とされる理由

完全歩合制とは、売上や成果に応じて報酬が支払われる制度のことです。しかし、完全歩合制は違法とされる場合があります。その理由は以下の通りです。なお、歩合制を労働基準法では「出来高払制」としていますが、ここでは一般的に使われることの多い「歩合制」を使用します。

1. 完全歩合制とは何か?

完全歩合制は、労働者の報酬が売上や成果だけによって決まる制度です。例えば、基本給などのベースとなる給与が無く、商品の販売員が売り上げに応じてのみ報酬を得る場合、これは完全歩合制と言えます。

2. 完全歩合制の違法性について

完全歩合制が違法とされる理由は、労働基準法による規制があるためです。労働基準法では、労働者に対する最低賃金が定められています。また、完全歩合制がこれらの規定に適合しない場合、違法とされることがあります。

例えば、完全歩合制の報酬が最低賃金を下回る場合、労働基準法に違反することになります。また、労働時間の制限を超えるような働き方を強いる完全歩合制も違法とされます。

例えば、月間総労働時間を160時間、最低賃金を1,000円とした場合、売上が低いからと言って給与が16万円を下回った場合、最低賃金を下回っているため違法とされます。

 ・月間総労働時間 … 160時間
 ・最低賃金 … 1,000円(時間)
 ・最低賃金 … 16万円

一方で、労働基準法で労働した時間に応じて一定額の賃金保障をする「保障給」が義務付けられており、最低保障を下回ることも違法となります。

保障給について具体的な定めは労働基準法にないのですが、平均賃金の6割が目安とされます。

最低賃金と保障給(平均賃金の6割)のどちらか高い方を下回ると違法になります。

参考までに、月間総労働時間が160時間の場合で平均賃金の6割が1,000円の最低賃金をオーバーするのは、月の給与が40万円以上。中小企業としては高水準の企業に限られてきます。

以上が、完全歩合制が違法とされる理由です。完全歩合制が適用される場合には、労働基準法の規定を遵守することが重要です。適法な労働条件を実現するために、雇用者や労働者は労働基準法について正しく理解し、適切な対策を取る必要があります。

完全歩合制とは何か?

完全歩合制とは、労働者の報酬が売り上げや成果に比例して決まる制度のことを指します。具体的には、売上や契約数などの成果に応じて報酬が支払われる仕組みです。

この制度は、営業職や販売職などの成果が直接的に数字で測れる職種でよく見られます。売上の伸びが報酬に直結するため、労働者はより一層の努力をすることが期待されます。

しかし、完全歩合制は労働基準法に違反する可能性があるため、注意が必要です。次の項目では、完全歩合制の違法性について詳しく解説します。

完全歩合制の違法性について

完全歩合制は、成果に応じて報酬が支払われる制度ですが、その違法性についても議論があります。

まず、完全歩合制が違法とされる理由は、労働者の最低賃金保護の観点からです。最低賃金は、労働者が最低限必要な生活を送るために必要な賃金を保障するものであり、労働者の権利を守るための法律です。

完全歩合制では、成果がなければ報酬がゼロになることもあります。これにより、最低賃金を下回る場合があるため、労働者の権利を侵害する可能性があるとされています。

また、完全歩合制は労働時間に応じた報酬ではなく、成果に応じた報酬を支払うため、労働時間外の労働に対しても適切な報酬が支払われない可能性があります。これも労働者の権利を侵害する要因となります。

以上の理由から、完全歩合制は違法とされることがあります。労働者の権利を守るためには、適切な報酬体系を導入する必要があります。

完全歩合制の具体的な違法例

完全歩合制は、労働者の報酬が完全に成果に応じて支払われる制度ですが、違法な場合もあります。以下に、完全歩合制の具体的な違法例を紹介します。

バイトの完全歩合制は違法?

バイトは雇用契約を締結した労働者になるので、労働基準法によって規制されます。労働者である以上、バイトは一定の労働時間に対して、最低賃金あるいは保障給(平均賃金の6割)のいずれか高い額が支払われるべきです。

最低賃金または保障給(平均賃金の6割)を支払うためには労働時間を管理している必要があります。完全歩合制にすると、成果のみで報酬が決まるため、労働時間の管理がおろそかになりがちになり、結果として違法となる可能性があります。

インターンの完全歩合制は違法?

インターンの場合、まずは労働者に当たるのか労働者には当たらないのかが判断基準となります。
・会社と本人との間に指揮命令関係があること
・その作業によって得られる利益、効果が、企業(使用者)に帰属すること
この2つを満たした場合、労働者に該当するとされます。

会社見学プラス、ちょっと作業もやってみる、という程度なら労働者とはならない可能性が高いので、そもそも給料を支払う必要もありません。
逆に通常の仕事をしてもらうということでしたら労働者になるので、労働基準法によって規制されます。

インターンに完全歩合制の導入を考えるレベルですと、労働者にあたる可能性が高くなります。そうなると完全歩合制であっても、労働時間に対して最低賃金あるいは保障給(平均賃金の6割)のいずれか高い額を下回ると違法になります。完全歩合制で、成果のみで報酬が決まるからといって、労働時間の管理がおろそかになると、結果として違法となる可能性があります。

営業の完全歩合制は違法?

営業の完全歩合制も、労働基準法によって違法とされる場合があります。営業は成果によって報酬が決まることが一般的ですが、労働時間に対する最低賃金または保障給(平均賃金の6割)のいずれか高い金額が必要です。労働時間に応じた最低賃金または保障給のいずれか高い金額を下回る場合、違法とされる可能性があります。

介護ヘルパー、訪問看護師の完全歩合制は違法?

介護ヘルパーの中でも、パートで登録ヘルパーと呼ばれる方やパートの訪問看護師の場合、1件に対しての手当となる仕組みを採っているケースをよくみかけます。
その場合も、実際に労働している時間(移動時間や書類作成時間含む)を管理し、最低賃金と保障給(平均賃金の6割)のどちらも上回る給与を支払っていなければ違法とされます。

完全歩合給を導入する際の注意点について

歩合給とは、売上や成果に応じて支払われる給与のことです。歩合給は、営業職や販売職など、成果が直接的に数字で表れる仕事に多く見られます。歩合給は、努力や成果に応じて報酬が変動するため、モチベーションを高める効果があります。

一方で、労働者である以上は労働時間を管理し、最低賃金と保障給(平均賃金の6割)を下回っていないかを確認することも重要です。
逆の言い方をすると、最低賃金と保障給(平均賃金の6割)の問題をクリアできれば完全歩合制を導入することができると言えます。

ここでは、完全歩合制を導入する際の注意点について解説します。

労働時間の管理を行うこと

厚生労働省により平成29年1月に策定された「労働時間の適正な把握のための使用者向けの新たなガイドライン」によると、労働者の労働時間管理について下記の記載があります。

使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

過重労働から労働者の健康を守ることと、賃金を適切に支払うという目的によるものです。

完全歩合制では売上や成果だけが給与の対象になるということで、労働時間管理が不要と考えてしまいがちです。
労働者である以上は、労働時間を適切に管理し、残業の上限を超える働き方になっていないかを把握するとともに、労働時間から算出した最低賃金と保障給(平均賃金の6割)を下回っていないかをチェックすることが重要です。

完全歩合制の給与でも残業代が必要

完全歩合制であっても労働時間が関係するため、法定労働を上回った場合、残業代を支払う必要があります。
完全歩合制を導入したとしても、最低賃金は必要だし、残業代も支給しなければならない。

「だったら意味ないよね?」と思われた方もおられるでしょう。
基本給を最低賃金に設定して、歩合給を上積みしていく方法と何が変わるのかわかならい。というのも無理はありません。

ですが、残業代の計算方法がが大きく異なります。

歩合制給与の残業代の計算方法には次の大きな特徴があります。
①歩合給の時間単価は、所定労働時間でなく残業時間も含めた総労働時間で算出する。
②残業時間に応じた割増賃金(0.25倍)だけが対象となる。

具体例で解説します。
次の前提条件で、同じ240,000円を(1)基本給だけで支給、(2)基本給+歩合給、(3)歩合給のみ、の3パターンで計算してみると、残業代、総支給額に大きな差が出ます。

■前提条件
 ・所定労働時間:160時間(法定労働時間も160時間とします)
 ・残業:40時間
 ・総労働時間:200時間(160時間+40時間)
 (最低賃金を1,000とします)


(1)基本給だけで24万円の場合(歩合給なし)
   残業単価:1,875円(240,000円÷160時間×1.25)
   残業代 :75,000円(1,875円×40時間)
    総支給額:315,000円(240,000円+75,000円)


(2)基本給16万円、歩合給8万円
  残業単価:①基本給部分:1,250円(160,000÷160時間×1.25)
       ②歩合給部分:100円(80,000÷200時間×0.25)
  残業代 :54,000円(50,000円+4,000円)
       ①基本給部分:50,000円(1,250×40時間)
       ②歩合給部分:4,000円(100円×40時間)
   総支給額:294,000円(160,000円+80,000円)


(2)歩合給24万円
   残業単価:300円(240,000円÷200時間×0.25)
   残業代 :12,000円(300円×40時間)
    総支給額:252,000円(240,000円+12,000円)


このように、歩合制であっても残業代がかかえるとはいえ、計算方法が全く異なるので歩合完全歩合制にすることで、時間よりも成果中心という考え方ができます。

個人で成果をあげる職種に向いている

完全歩合制は、売上や成果に応じた給与であるため、営業職や販売職に向いています。
とはいえ、売上や成果以外の要素は給与に加味されないという注意点があります。言ってしまえば、個人プレーに徹することを容認できるかです。
同じ営業や販売職であっても、店舗内で行う仕事の場合は、他のスタッフとの関係性もある程度は考える必要があるでしょう。自分の業績だけに関心があり、他のスタッフが困っていても何知らぬ顔。ひどい場合だと他のスタッフの足を引っ張る行為をする。
こういった場合もマイナスにする要素がありません。

自社の業態から見て、個人プレーに徹してもらって問題無し。と言い切れない場合は完全歩合制の導入は見送った方がいいかもしれません。

逆に、外回りの時間がほとんどで、成果さえあげれば(就業時間内であっても)早めに切り上げて帰宅してもOK。という考え方ができれば完全歩合制に向いているでしょう。

まとめ

ここ数年、働き方改革や未払い賃金の時効が2年から5年(当分の間は3年)に延長されたりと、限られた時間で成果をあげる生産性の向上が求められています。
一方で、時間をかけても成果につなげることのできない労働者も一定数いることも事実です。生産性の高い人よりも、生産性の低い人の方が残業が多く、結果として給料の逆転現象が起きることも見かけられます。
条件さえ一致すれば、完全歩合制の給料は非常に有効ですのでご検討の機会になれば幸いです。


当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。


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