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外回り営業のみなし労働時間制:事業場外労働の実態と対策を社労士が解説

外回り営業は、外出して顧客を訪問するため、労働時間の計測が難しいという課題があります。この問題を解決するために、みなし労働時間制が導入あります。しかし、実際の労働時間との乖離が問題視されており、労働者の過労や労働条件の改善が求められています。今回の記事では、みなし労働時間制の実態と適切な対策について考えていきます。

事業場外みなし労働時間制とは

事業場外みなし労働時間制とは、企業が従業員の労働時間を事業場外での業務に対して一律に設定する制度です。具体的には、外回り営業などの業務に従事する従業員に対して、一定の時間をみなし労働時間として認めることで、残業代の支払いを免除することができます。

1.定義と概要
事業場外みなし労働時間制は、労働基準法に基づいて設けられた制度であり、労働時間の管理や残業代の支払いに関するルールを明確化することを目的としています。従業員が事業場外での業務に従事する場合に適用され、一定の時間をみなし労働時間として設定することで、労働時間の把握や管理を容易にすることができます。

2.適用範囲と対象者
事業場外みなし労働時間制は、主に外回り営業や営業職など、事業場外での業務に従事し、かつ使用者の具体的な指揮命令が及ばず、実際の労働時間を算定するのが困難な業務を対象としています。一般的には営業職や販売職、集金人、金融機関の得意先係、各種の調査などの職種が該当します。また、コロナ禍で急速に普及したテレワークも対象となります。

事業場外みなし労働時間制の定義と概要

事業場外みなし労働時間制とは、外回り営業などの特定業務に従事する労働者の労働時間を一定の基準で計算する制度です。

事業場外での労働時間の算定が難しい場合は所定労働時間の労働とみなすとした場合、残業代を発生しません。また、事業場外労働を遂行するためには所定労働時間を超えるのが当たり前の状態になっている場合は、その業務に通常必要とされる時間労働したものとみなし、その時間分の残業手当が発生します。

事業場外みなし労働時間制は、労働者の労働時間の管理や労働者と企業の双方の利益を考慮した制度として位置づけられています。この制度は、外回り営業などの業務に従事する労働者の業務効率化や労働時間の適正化を図るために導入されました。また、労働者の負担軽減や働き方改革の一環としても注目されています。

事業場外みなし労働時間制の適用範囲と対象者

事業場外みなし労働時間制は、主に外回り営業などの職種で適用されます。具体的には営業職や販売職、集金人、金融機関の得意先係、各種の調査などの職種が該当します。

適用範囲は、主に営業活動や顧客対応、商談などの業務において発生する時間を対象とします。会社の外で働く仕事の場合、仕事内容や相手方の都合により、早く切り上げることもあれば、契約が取れると思えば遅くまで粘ったりすることもあります。時には相手方と飲食を共にすることもあるでしょう。このようなケースで使用者に労働時間算定義務を負わすことがかえって非効率になることもあるため、みなし労働時間というものがあります。

外回り営業のみなし労働時間制の実態

外回り営業のみなし労働時間制は、営業職の人々が外出先での業務時間を労働時間として認める制度です。実際の運用例としては、営業担当者が顧客先を訪問し、商談や契約締結などの業務を行う際に、その時間を労働時間として計算することが一般的です。

この制度の利点は、営業担当者が外出先での業務時間を適切に管理しやすくなることです。営業活動には相手方の都合により大きく左右されることがあります。予定がキャンセルになった場合は、途中の休憩時間が多くなったり、早めに切り上げることもあります。また、契約が取れそうなときは遅くまで粘るでしょうし、そのまま相手方と飲食につきあうこともあります。それを予め決められた時間仕事をしたとみなす、労働者の負担を軽減することも期待されています。

しかし、外回り営業のみなし労働時間制には問題点も存在します。例えば、労働者が実際に労働時間を超えて働いているにも関わらず、それが適切に計算されずに残業代が支払われないケースがあります。また、要件を満たさずにこの制度を採用している企業も存在し、労働者の権益が守られていないという指摘もあります。

したがって、事業場外みなし労働時間制を適用する際には、労働時間の適切な管理や法令の遵守が重要です。労働者の権益を守りながら、効率的な営業活動を行うためには、適切な対策が必要です。

外回り営業のみなし労働時間制:実際の運用例

事業場外みなし労働時間制を導入している企業の中には、外回り営業の場合にどのような運用が行われているのでしょうか。

例えば、あるIT企業では、外回り営業の社員に対して、1日の労働時間を8時間として扱っています。社員は朝の出勤時に出社し、その後、外出先での営業活動を行います。営業活動の内容によっては、顧客先での商談や打ち合わせが長時間にわたることもありますが、これらの時間はみなし労働時間として扱われます。

ただし、企業側は社員に対して、営業活動の実施状況や結果を報告することを求めています。営業活動の内容や成果によっては、残業代やインセンティブの支給が行われることもあります。

このような運用例では、社員の外回り営業に対する労働時間を柔軟に認識することで、働き方の多様化や成果主義の導入を図ることができます。ただし、過重労働にならないための労働時間の管理や報告の徹底など、システムやルールを整備する必要があります。

外回り営業のみなし労働時間制:問題点と課題

外回り営業のみなし労働時間制には、いくつかの問題点と課題が存在します。

まず、サービス残業の横行が挙げられます。外回り営業は、顧客との打ち合わせや商談など、予定外の時間が発生することがあります。早めに切りあげることもあれば、時には遅くなることもあるという状態であればいいのですが、それが常態化すると、本来支給されるべき残業代が支払れなかったり、労働者の心身的負担が増えることにもつながります。

また、要件を満たさずに、事業場外みなし労働時間制を採用しているケースも問題となっています。事業場外みなし労働時間制は、事業場外での業務に従事し、かつ使用者の具体的な指揮命令が及ばず、実際の労働時間を算定するのが困難であることが前提となっていますが、中にはこれを満たさないまま採用している事業主も存在します。具体的には、上司が常に行動を把握し、報告・連絡・指示が随時なされている場合であったり、あらかじめ指示された計画通りに業務に従事するなど、労働者の自由度が無い場合、みなし労働時間が適用されず、実際の労働時間によって残業代が計算されることになります。

事業場外みなし労働時間制の問題点

事業場外みなし労働時間制には、以下のような問題点が存在します。

1.サービス残業の横行
事業場外みなし労働時間制では、労働時間を計測することが難しいため、サービス残業が横行しているケースがあります。従業員は、実際には定められた労働時間以上に働いているにも関わらず、残業代を受け取ることができない状況が生じています。

2.要件を満たさずに、事業場外みなし労働時間制を採用しているケース
事業場外みなし労働時間制は、一定の要件を満たすことが必要です。しかし、中には要件を満たさずに、事業場外みなし労働時間制を採用しているケースも存在します。これにより、労働者の労働時間が適切に管理されず、過重労働や健康被害のリスクが高まることになります。

事業場外みなし労働時間制の問題点を解消するためには、労働時間の適切な管理が重要です。従業員の労働時間を適正に計測し、サービス残業を防止するための対策を講じることが必要です。また、事業主と労働者が協力して、労働時間制度の見直しや働き方改革に取り組むことも重要です。今後も事業場外みなし労働時間制に関する問題点を解消し、労働環境の改善を図るべきです。

サービス残業の横行

事業場外みなし労働時間制では、労働時間を実際に計測せずに一定の時間をみなし労働時間として扱っています。しかし、この制度を悪用してサービス残業が横行しているケースもあります。

サービス残業とは、労働時間外にもかかわらず業務を行い、その時間に対して賃金が支払われないことを指します。事業場外みなし労働時間制では、労働時間を一定の時間で固定しているため、実際にはその時間以上の労働をしている場合でも、残業代が支払われない可能性があります。

サービス残業の横行は、労働者の負担を増やすだけでなく、労働環境の悪化や健康被害のリスクをもたらす可能性もあります。また、法律によって労働時間や労働条件が定められているにもかかわらず、それを無視して働かせることは違法です。

事業場外みなし労働時間制を採用する場合は、サービス残業の横行を防ぐために、労働時間の適切な管理や労働者の教育など、対策が必要です。また、労働者自身も自分の権利を知り、適切な労働条件を求めることが重要です。

要件を満たさずに、事業場外みなし労働時間制を採用しているケース

事業場外みなし労働時間制は、労働基準法によって定められた制度ですが、中には要件を満たさずにこの制度を採用しているケースも存在します。

事業場外での業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮命令が及ぶ場合は、実際の労働時間の算定が可能になるので、みなし労働時間制の要件は満たしません。

 具体的には次のような場合、みなし労働時間は適用されません。

1.何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

2.携帯電話などで随時使用者の指示を受けながら労働している場合

3.訪問先、業務内容、時間等について具体的に指示を受け、その通りに業務を行わなければならない場合


要件を満たさずに事業場外みなし労働時間制を採用することは、労働基準法に違反する行為となります。会社は、充分な注意が必要です。

事業場外みなし労働時間制に関する裁判例

事業場外みなし労働時間制に関する裁判例として、阪急トラベルサポート事件と光和商事事件が存在します。2つの裁判例を見ていきましょう。

阪急トラベルサポート事件

阪急トラベルサポート事件は、事業場外みなし労働時間制の問題点を浮き彫りにした事件です。この事件では、ツアーの添乗員としてみなし労働時間制を受けていた社員が、会社側に時間外割増賃金等の支払を求め提訴したものです。

ツアーの添乗業務は、早朝から夜遅くまでの仕事になるのですが、「労働時間の算定が困難」に該当するかどうかが争点となりました。結論としては、次の点から「労働時間の算定が困難」とは言えず、みなし労働時間は適用されないとされました。

1.あらかじめ決められたツアーの日程に沿って業務を行うことを指示されていた
2.ツアー日程に変更が生じた場合、会社の指示を受けるものとされていた
3.ツアー日程の終了後、添乗日報を提出をさせていたため業務の状況を把握できた


これまでも解説してきましたように、事業場外みなし労働時間制は、事業場外での業務に従事するだけではなく、実際の労働時間を算定するのが困難でなければ適用されません。また、使用者の具体的な指揮命令が及ばすに労働者の裁量によって仕事ができる状態である必要があります。

光和商事事件

光和商事事件は、事業場外みなし労働時間制に関する裁判例の一つです。この事件では、光和商事という企業が外回り営業の社員に対してみなし労働時間制を導入していました。しかし、実際には社員の労働時間が定められた基準を超えていることし、社員から残業代の請求が行われました。

裁判では、「労働時間の算定が困難」であるかどうかが争点となり、結果としてみなし労働時間制は適用されないとされました。

労働時間の算定が困難といえないとされた理由としては下記の通りです。

1.営業社員は毎朝出社後、朝礼に出席。その後外勤勤務に出ていた。
2.営業社員は、メモ書き程度の簡単なものであるものの、その日の行動内容を記載した予定表を会社に提出していた
3.外勤中に行動を報告し、電話を受けた社員が予定が完了したことを明らかにするために該当欄に線を引いていた
4.営業社員全員に会社の所有の携帯電話を持たせていた。
5.タイムカードで管理していた


ここでのポイントは、タイムカードなどで時間を管理することや、携帯電話を持たせることだけでは、労働時間の算定が困難といえない理由にはならないということです。

タイムカードだけでなく、外出先であっても始業と終業の時刻を記録することは、過重労働を防止する意味でもむしろ必要なことです。
また、携帯電話を持たせることは、必要に応じて連絡を取るという意味で欠かせません。

外出中の業務について、営業社員の裁量に委ねられていれば、みなし労働時間制が適用された可能性も充分にあります。

テレワークに事業場外みなし労働時間制は適用できるか?

テレワークは近年、多くの企業で導入されている働き方の一つです。しかし、テレワークにおいても事業場外みなし労働時間制は適用できるのでしょうか?

1.テレワークの特性と事業場外みなし労働時間制の関係

テレワークは、従業員が事業場外で業務を行うため、事業場外みなし労働時間制との関係が注目されています。事業場外みなし労働時間制は、通常、従業員が事業場外での業務に要する時間を労働時間として認める制度です。そのため、テレワークにおいても事業場外みなし労働時間制が適用される可能性があります。

2.適用可能性と注意点

しかし、テレワークにおいて事業場外みなし労働時間制を適用する際には注意が必要です。テレワークは従業員の自宅や外出先など、様々な場所で業務が行われます。そのため、労働時間の明確な区別が難しくなる可能性があります。また、テレワークにおいては労働時間外に業務に取り組むことが多いため、サービス残業の問題も懸念されます。

このような点に留意しながら、テレワークにおいても事業場外みなし労働時間制を適用することは可能です。しかし、従業員の労働時間管理や労働条件の適正な確保が重要です。事業主は、テレワークの特性に合わせた労働時間管理の方法を検討し、労働法令を遵守するための取り組みを行うことが求められます。

テレワークにおける事業場外みなし労働時間制の適用は、今後ますます重要性を増していくでしょう。従業員の労働時間を適正に管理し、労働条件を守ることは、企業の信頼性向上や労働環境の改善にもつながります。今後の展望として、テレワークにおける労働時間管理や労働条件の適正化に向けた取り組みが進められることが期待されます。

テレワークの特性と事業場外みなし労働時間制の関係

テレワークは、場所や時間に制約を受けずに仕事を行う働き方の一つです。特に最近では、新型コロナウイルスの影響でテレワークが広まりました。一方で、事業場外みなし労働時間制は、外回り営業などの業務において、通常の労働時間制限を適用せずに労働時間を計算する制度です。

テレワークは、場所や時間に制約を受けずに仕事を行うことができるため、事業場外みなし労働時間制との関係は密接です。テレワークを行う場合、労働時間が明確になりにくいため、事業場外みなし労働時間制を適用することで、労働時間の管理を簡素化することができます。

しかし、テレワークの特性を考慮する必要があります。テレワークでは、労働時間とプライベートの境界が曖昧になりがちです。そのため、労働時間の適正な管理が課題となります。また、テレワークにおいては、労働時間外に業務を行うことが増える可能性があり、サービス残業のリスクも高まります。

テレワークを導入する際には、事業場外みなし労働時間制の適用可能性と注意点を考慮する必要があります。それらについて解説いたします。

テレワークの事業場外みなし労働時間制:適用可能性と注意点

事業場外みなし労働時間制は、テレワークにも適用可能な制度となっていますが、注意点も存在します。

テレワークに事業場外のみなし労働時間制を適用される要件は下記となります、

1.当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
2.当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと


情報通信機器とは、一般的にはパソコンと考えられますが、労働者の個人所有のスマホが該当する場合も考えられます。

『使用者の指示により常時』とは、労働者が自分の意志で通信可能な状態を切断することが使用者から認められていない状態を指します。

『通信可能な状態』とは、使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて電子メールなどで随時具体的指示を行うことが可能であり、かつ使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応じなければならない状態を指します。

言い換えると、具体的指示の備えての手待ち状態であるか、待機しながら業務を行っている状態です。

逆に、回線が接続されていたとしても労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合は『通信可能な状態』にはあたらないとされています。

まとめ

事業場外みなし労働時間制は、外回り営業などの現場で広く適用されています。また、急速に広がっているテレワークにも適用可能です。しかし、その実態には問題点も存在します。サービス残業の横行や要件を満たさずに採用されるケースもあります。

事業場外のみなし労働時間制の要件としては、事業場外での業務に従事し、かつ使用者の具体的な指揮命令が及ばず、実際の労働時間を算定するのが困難であることです。

具体的には次のような場合、みなし労働時間は適用されず、裁判により残業代を支払うことになった例もありるので、充分に注意が必要です。

1.何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

2.携帯電話などで随時使用者の指示を受けながら労働している場合

3.訪問先、業務内容、時間等について具体的に指示を受け、その通りに業務を行わなければならない場合


当社労士事務所は大阪、堺市、を中心に様々な企業の問題に取り組んでおります。


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