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健康診断はどこまで会社の義務?対象者、種類、項目、費用などを解説

社労士として日々、中小企業の経営者と接する中で、健康診断に関する理解が不足している方が非常に多いことに気づかされます。
特に、知り合いの経営者から「健康診断は会社の義務だ」と聞いても、具体的にどのような対象者がいるのか、どんな健診項目が必要なのか、さまざまな疑問が浮かぶようです。
この記事では、そうした疑問に答えるべく、中小企業の経営者が抑えておくべき健康診断の基本情報を、分かりやすく解説していきます。健康診断の対象者から、必要な健診項目、さらには費用の問題まで、実務に役立つ情報を幅広く提供します。

1.健康診断の義務とは?中小企業社長が知るべき基本

中小企業の社長の皆さん、従業員の健康管理は会社経営における重要な責任の一つです。
ここでは、健康診断の義務について、基本的なポイントを解説します。従業員の健康状態を把握し、適切な職場環境を提供することは、企業の義務であり、福利厚生費の一環としても重要です。

健康診断、会社の義務の範囲

健康診断は、従業員の健康状態を確認し、職場の安全を保つために企業が実施する必要があるものです。具体的には、労働安全衛生法に基づき、常時雇用する労働者に対して年1回の健康診断が義務付けられています。

ここでいう「常時雇用する労働者」とは、正社員だけでなく、週の労働時間が正社員の4分の3以上のパートタイマーやアルバイトも含まれます。従業員の健康管理は、労働者が安心して働ける環境を作る上で非常に重要です。

労働安全衛生法に基づく義務の解説

労働安全衛生法では、企業に対して従業員の健康診断を定期的に実施する義務が課せられています。これは、労働者の健康を守るためだけでなく、職場でのリスクを軽減し、労働環境を改善するためにも必須です。

健康診断には、身長、体重、視力、聴力の検査から、胸部エックス線検査、血圧測定、貧血検査、肝機能検査などが含まれます。特に、有害な作業環境で働く労働者に対しては、特殊な健康診断が求められることもあります。

会社の健康管理担当者は、これらの健康診断を適切に管理し、必要に応じて保健指導や再検査を行うことが重要です。

2.健康診断の対象者を正確に把握

健康診断の義務は従業員全員に適用されるわけではありません。対象者を正しく理解することが、法律遵守と従業員の健康管理の第一歩です。ここでは、健康診断の対象者について、明確に解説します。

常時雇用する労働者の定義

「常時雇用する労働者」とは、一年以上の期間で、または一年以上の期間を見込んで雇用されている全ての従業員を指します。この定義には、正社員だけでなく、週の労働時間が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイトも含まれます。労働時間や契約期間を基準に判断することが重要です。

パートタイマーは健康診断の対象?

パートタイマーが重要な役割を果たしている中小企業も多いでしょう。パートタイマーも週の労働時間が正社員の4分の3以上であれば、健康診断の義務が適用されます。

企業としては、従業員の勤務形態にかかわらず、健康診断を適切に実施し、全員の健康を管理することが求められています。

社会保険加入要件との違い

一般的に、健康診断の対象者は社会保険の加入要件と同じと考えられがちですが、実際には異なるケースもあります。

特に、特定適用事業所(社会保険加入要件が週20時間以上)の場合、健康診断の対象者は正社員の4分の3以上の労働時間が基準となるため、社会保険と対象者が異なることに注意が必要です。これは、労働時間が短くても、一定の条件を満たす従業員は健康診断の対象になる可能性があることを意味します。

【特定適用事業所】
対象:厚生年金被保険者が101人以上の事業所(2024年10月以降は51人)
社会保険の加入基準(社会保険上の短時間労働者):
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額給与が8.8万円以上(年間106万円以上)
・学生でないこと

【関連記事はこちらから】
社会保険の加入義務:学生アルバイトで週30時間以上の場合はどうなる?

3.健康診断の種類と内容

健康診断は、従業員の健康を守るための重要な手段です。しかし、健康診断にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的と内容があります。ここでは、一般健康診断と特殊健康診断の違いと、企業が実施すべき具体的な健康診断項目について解説します。

一般健康診断と特殊健康診断の違い

一般健康診断は、従業員の一般的な健康状態を把握し、生活習慣病などの早期発見を目的として、従業員全員に義務付けられている基本的な健康診断です。労働安全衛生法に基づき、年に1回実施されることが一般的です。一般健康診断には、以下の種類があります:

・雇入時の健康診断:
 新たに従業員として雇用された際に受ける健康診断。
・定期健康診断:
 年に1回、従業員全員が受ける健康診断。
・特定業務事業者の健康診断:
 特定の業務に従事する従業員に対して実施される健康診断。
・海外派遣労働者の健康診断:
 海外に派遣される従業員が受ける健康診断。
・給食従業員の検便:
 食品を取り扱う従業員が受ける衛生的な検査。


一方、特殊健康診断は、特定の有害業務に従事する従業員に対して実施される健康診断です。
以下の特定の有害業務に従事する従業員に対して実施される健康診断です。

・有機溶剤業務
・鉛業務
・四アルキル鉛等業務
・特定化学物質を製造又は取り扱う業務
・高圧室内業務又は潜水業務
・放射線業務
・除染等業務
・石綿業務

企業が実施すべき定期健康診断の検査項目

定期健康診断は、従業員の健康状態を継続的に把握するために年に1回実施されるものです。この診断では、以下のような項目が検査されます

・身体測定(身長、体重、腹囲)
・視力と聴力の検査
・血圧測定
・血液検査(貧血、肝機能、血中脂質、血糖)
・尿検査
・胸部エックス線検査
・心電図検査

医療機関に健康診断を依頼する際、どのような検査項目が必要なのか聞かれます
厚生労働省のこちらのリーフレットをダウンロードしておくと便利です。
【労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう】

雇入時の健康診断の検査項目

新たに従業員を雇用する際に実施される雇入時の健康診断は、新入社員の健康状態を確認し、適切な職場環境を提供するために重要です。この診断では、以下のような項目が確認されます:

・既往症の確認
・身体測定
・視力と聴力の検査
・血圧測定
・血液検査
・尿検査
・胸部エックス線検査

正確な検査項目はこちらをご確認ください。
【労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう】

4.健康診断の費用と企業の負担

中小企業の経営者として、従業員の健康診断の費用とその負担は重要な経営上の検討事項です。健康診断は法的義務であり、その費用負担についても理解しておく必要があります。ここでは、健康診断の費用負担について、そしてコスト削減のポイントについて考えてみましょう。

健康診断の費用は誰が支払う?

労働安全衛生法に基づいて、健康診断の費用は原則として企業が負担します。この法律は、従業員の健康を保護し、職場の安全を確保することを目的としているため、健康診断の費用は全額企業側の負担となります。

ただし、しかし、法律で定められた検査項目以外のオプション項目に関しては、全額本人負担とすることも、一部を企業が費用負担することも可能です。

例えば、通常の健康診断に加えて特定の精密検査を希望する場合などがこれに該当します。こうした場合においても、企業と従業員間での明確な合意と、健康診断の実施に関する透明性を確保することが大切です。

コスト削減のためのポイント

・健康診断の一括契約:
複数の従業員の健康診断を一括で契約することで、単価を抑えることができます。大規模な契約により、割引が適用される可能性があります。

・近隣の医療機関との連携:
地域の医療機関と提携することで、特別な料金で健康診断を受けることが可能です。地域密着型の医療機関と協力することで、交通費の削減にもつながります。

・協会けんぽの利用:
協会けんぽが提供する健康診断プログラムを利用することで、コスト削減が見込めます。協会けんぽは、各種健康診断プログラムを低コストで提供しており、特に中小企業にとっては有効な選択肢です。

・必要な検査項目の見直し
法令で定められた必要最低限の検査項目に留め、余分な検査は避けることが重要です。企業のニーズに合わせて適切な検査項目を選択することで、無駄なコストを削減できます。

5.実践!効率的な健康診断の進め方

健康診断は、従業員の健康管理において欠かせない要素です。しかし、効率的に進めるためには適切な準備と計画が必要です。ここでは、健康診断をスムーズに進めるためのポイントと、結果を有効に活用する方法について解説します。

社員へのアナウンスと準備

健康診断を効率的に進めるためには、事前のアナウンスと準備が重要です。

アナウンス:
健康診断の日程、場所、持ち物などを事前に社内で周知させます。メールや掲示板を利用すると効果的です。

健康診断の目的と重要性の説明:
従業員に健康診断の目的とその重要性を理解してもらうことで、積極的な参加を促進できます。

事前アンケートの実施:
医療機関が効率的な健康診断を行うために、事前に従業員の健康状態や既往症に関するアンケートを実施することがあります。企業は、このアンケートを収集し、医療機関に提供することで、より適切な健康診断が行えるようサポートします。アンケートは個人情報を含むため、適切な取り扱いが必要です。

健康診断結果の活用方法

健康診断結果の活用は、従業員の健康管理と職場環境の改善に役立ちます。

個別の健康相談:
健康診断結果に基づいて、従業員個々に健康相談を提供します。これにより、健康リスクの早期発見と対策が可能になります。

職場環境の改善:
健康診断結果を分析し、職場環境や作業条件の改善を検討します。例えば、ストレスの多い職場では、リラクゼーションスペースの設置や休憩時間の見直しなどが効果的です。

健康プログラムの導入:
結果に基づいて、運動プログラムや栄養指導など、従業員の健康をサポートするプログラムを導入することも一つの方法です。

Q&A - 健康診断に関するよくある質問

健康診断は中小企業の経営において重要な要素ですが、その実施に関しては多くの疑問や不明点が存在します。このセクションでは、健康診断に関するよくある質問をピックアップし、それぞれの疑問に対する明確な答えを提供します。ここでのQ&Aを通じて、健康診断の実施方法、費用負担、法的な義務など、中小企業経営者が抱える疑問を解決する手助けとなれば幸いです。

Q1: 健康診断はどこで受ければいいのか?

A1: 健康診断の場所は特に指定されていません。従業員の希望する医院でも構いませんし、会社の近くの医療機関を指定しても問題ありません。

従業員50人未満の会社では、産業医を選任する必要はありませんが、従業員の健康管理のため、何かあれば相談できる医療機関を決めておくと便利です。協会けんぽから届く案内を参考にすると良いでしょう。

Q2: 健康診断費用の負担は会社?従業員?

A2: 労働安全衛生法により、健康診断の費用は事業者が負担することが義務付けられています。従業員の健康診断の実施は法律で定められた事業者の責任の一部です。

Q3: 健康診断を実施しなかった時の罰則は?

A3: 会社が健康診断を受診させなかった場合、50万円以下の罰金に処される可能性があります。

Q4: 従業員が健康診断を受けてくれない場合はどうする?

A4: 会社には従業員に健康診断を受診させる義務があり、同時に従業員にも受診する義務があります。
従業員が健康診断を受けない場合、その重要性を理解してもらうよう説明することが重要です。ただし、従業員が受診しないことによる罰則はありません。必要に応じて就業規則に基づく懲戒処分を検討することも一つの方法です。

Q5: 健康診断結果を本人に提出を求めていいの?

A5: 健康診断結果は重要な個人情報ですが、労働安全衛生法では会社が結果を把握し、本人に通知することが義務付けられています。したがって、会社は従業員の健康診断結果を把握する義務があります。多くの医療機関では、健康診断を受診した従業員の数に応じて、本人用と会社保管用の2通の結果を出してくれます。

Q6: 健康診断結果の労働基準監督署への報告義務は?

A6: 常時50人以上の従業員を雇用している事業場は、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出する義務があります。一方、常時50人に満たない会社にはこの提出義務はありません。

まとめ: 効果的な健康診断の実施方法

この記事では、中小企業の経営者が把握すべき健康診断の基本的な知識と実施方法について詳しく解説しました。健康診断の対象者の定義から、一般健康診断と特殊健康診断の違い、健康診断の費用負担、そして効率的な健康診断の進め方まで、幅広くカバーしました。さらに、健康診断に関するよくある質問に答えることで、経営者が直面する疑問を解消しました。

健康診断は従業員の健康を守ると同時に、企業の責任としても重要です。この記事が、中小企業の経営者の皆さんにとって、健康診断の実施に関する貴重なガイドとなることを願っています。


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