社員の有給休暇発生タイミング。入社6ヶ月後が基準ですが、管理は煩雑。そんな管理の負担を軽減する方法として、基準日の統一や分割付与などが考えられますが、それぞれに一長一短があります。結局のところ、最適な方法は?経験豊富な社労士がその疑問に回答します。

1.中途入社社員の有給休暇:いつから付与するのが正解?
中小企業の社長の皆さま、中途入社社員に対する有給休暇の付与について、適切なタイミングをご存知ですか?本記事では、社会保険労務士の視点から、中途入社社員への有給休暇付与の正しいタイミングと方法について解説します。
中途入社者の有給権利発生日:基本ルールとは?

まず、中途入社社員に有給休暇が付与される基本的なルールについてお話しします。
原則として、従業員が雇入れから半年を経過すると、有給休暇が発生します。
例えば、4月1日に入社した従業員は、10月1日に有給休暇の権利が発生することになります。
これは、労働基準法で定められた基本的なルールです。
このルールのもと、従業員は初年度に最低10日の有給休暇を取得する権利を持ちます。
その後、勤続年数に応じて休暇日数は増え、
2年目(1年半)は11日、
3年目(2年半)は12日、
7年目(6年半)以降は20日まで増加します。
ただし、企業によっては、これ以上の日数を設定している場合もあります。
原則として、従業員が雇入れから半年を経過すると、有給休暇が発生します。
例えば、4月1日に入社した従業員は、10月1日に有給休暇の権利が発生することになります。
これは、労働基準法で定められた基本的なルールです。
このルールのもと、従業員は初年度に最低10日の有給休暇を取得する権利を持ちます。
その後、勤続年数に応じて休暇日数は増え、
2年目(1年半)は11日、
3年目(2年半)は12日、
7年目(6年半)以降は20日まで増加します。
ただし、企業によっては、これ以上の日数を設定している場合もあります。
有給休暇の基準日:原則と柔軟な運用
有給休暇が発生する日を「基準日」と呼びます。
中途入社社員の場合、入社日が人によって異なるため、基準日も人それぞれです。
例えば、
となり、10日間の有給休暇が発生します。
2年目以降も、10月10日、11月28日というように、同じ日が基準日になるのが一般的です。
このように、従業員が多いと基準日も多岐にわたり、管理が煩雑になることがあります。
この問題を解消するため、大企業や中堅企業では有給休暇の基準日を統一する方法が採用されています。
また、入社日に応じて有給休暇を分割して付与する方法も選択可能です。しかし、どの方法を選んでも一長一短が存在します。
中途入社社員の場合、入社日が人によって異なるため、基準日も人それぞれです。
例えば、
4月10日入社の人は10月10日が基準日
5月28日入社の人は11月28日が基準日
5月28日入社の人は11月28日が基準日
となり、10日間の有給休暇が発生します。
2年目以降も、10月10日、11月28日というように、同じ日が基準日になるのが一般的です。
このように、従業員が多いと基準日も多岐にわたり、管理が煩雑になることがあります。
この問題を解消するため、大企業や中堅企業では有給休暇の基準日を統一する方法が採用されています。
また、入社日に応じて有給休暇を分割して付与する方法も選択可能です。しかし、どの方法を選んでも一長一短が存在します。
2.実務に役立つ!中途入社社員の有給付与のノウハウ

中途入社社員に対する有給休暇の付与は、中小企業にとっても非常に重要です。
このセクションでは、実務に直結する有給付与の具体的な方法とその運用についてご紹介します。
このセクションでは、実務に直結する有給付与の具体的な方法とその運用についてご紹介します。
入社6か月後の有給付与:原則とその運用
労働基準法によれば、従業員が入社してから6カ月が経過した日に、有給休暇が付与されます。この「6カ月後の原則」は、新入社員だけでなく、中途入社社員にも適用されます。
例えば、
4月1日に入社した社員は10月1日
7月1日に入社した社員は翌年の1月1日
に有給休暇を取得できます。
しかし、実際の運用では、従業員が多い場合や入社日がバラバラの場合、この原則に沿って個別に有給休暇を管理することが煩雑
になることがあります。
そのため、効率的な管理のためにも、基準日を統一するなどの方法が検討されます。
例えば、
4月1日に入社した社員は10月1日
7月1日に入社した社員は翌年の1月1日
に有給休暇を取得できます。
しかし、実際の運用では、従業員が多い場合や入社日がバラバラの場合、この原則に沿って個別に有給休暇を管理することが煩雑
になることがあります。
そのため、効率的な管理のためにも、基準日を統一するなどの方法が検討されます。
有給休暇の基準日を統一:メリットと注意点
有給休暇の基準日を統一する方法は、管理の効率化に大きく貢献します。
例えば、全社員の基準日を4月1日や10月1日に設定することにより、有給休暇の計算や管理が容易になり、人事部門の負担軽減や誤算の防止につながります。
しかし、この方法には注意点があります。
法律上、有給休暇は従業員が雇入れから6ヵ月を経過した日に発生するため、基準日を統一しても法定の有給休暇基準を下回らないようにすることが重要です。
例えば、
4月1日に入社した従業員には10月1日が基準日で問題ありません。
しかし、9月30日に入社した従業員も同じ10月1日が基準日となり、入社翌日に有給休暇が発生してしまいます。
翌年の4月1日を基準日とすると、6ヵ月経過した日よりも基準日が遅くなるため、これもできません。
更に、この従業員が入社数日経過した10月3日に
「今月末で退職します。最後の10日間は有給休暇を使いたい」と申し出てきた場合、退職時の有給休暇は変更することができないため、受け入れるしかありません。
これは極端な例ですが、基準日の統一における注意点として、実際の運用上でしばしば見かけるケースです。
例えば、全社員の基準日を4月1日や10月1日に設定することにより、有給休暇の計算や管理が容易になり、人事部門の負担軽減や誤算の防止につながります。
しかし、この方法には注意点があります。
法律上、有給休暇は従業員が雇入れから6ヵ月を経過した日に発生するため、基準日を統一しても法定の有給休暇基準を下回らないようにすることが重要です。
例えば、
4月1日に入社した従業員には10月1日が基準日で問題ありません。
しかし、9月30日に入社した従業員も同じ10月1日が基準日となり、入社翌日に有給休暇が発生してしまいます。
翌年の4月1日を基準日とすると、6ヵ月経過した日よりも基準日が遅くなるため、これもできません。
更に、この従業員が入社数日経過した10月3日に
「今月末で退職します。最後の10日間は有給休暇を使いたい」と申し出てきた場合、退職時の有給休暇は変更することができないため、受け入れるしかありません。
これは極端な例ですが、基準日の統一における注意点として、実際の運用上でしばしば見かけるケースです。
有給休暇、分割付与の活用:メリットと複雑さ
分割付与は、従業員が入社してから6ヶ月経過する本来の基準日に付与される有給休暇を、前倒しで一部を先に付与する方法です。
例えば、4月1日に入社した従業員に対して、
入社当日(4月1日)に5日間の有給休暇を付与
6ヶ月後の10月1日(本来の付与日)に残りの5日間を付与
というように、10日間の有給休暇を分割して付与するやり方です。
この分割付与の大きなメリットは、新入社員が早期に休暇を取得できる点です。これにより、従業員のワークライフバランスの向上や満足度の増加が期待されます。
しかし、分割付与には以下の条件が伴います。
基準日を統一した際のように、入社直後に10日間の有給休暇を全て消化して退職するケースの衝撃を軽減する効果はありますが、最初に前倒しで付与した日が基準日となる点では、基準日を統一する方法と同様のデメリットが存在します。
また、複雑さも考慮する必要があります。
例えば、9月30日に入社した従業員の場合、
10月1日に5日間を前倒しで分割付与します。これは問題ありません。
残りの5日間を付与する日が翌年の4月1日だと、本来の基準日である入社6ヶ月経過した日を超える問題が生じます。基準日を3月30日以前にする必要があります。
このような複雑なケースを考慮すると、人事部門の負担は、原則である入社6ヶ月後の基準日を適用する場合よりも大きくなる可能性があります。
例えば、4月1日に入社した従業員に対して、
入社当日(4月1日)に5日間の有給休暇を付与
6ヶ月後の10月1日(本来の付与日)に残りの5日間を付与
というように、10日間の有給休暇を分割して付与するやり方です。
この分割付与の大きなメリットは、新入社員が早期に休暇を取得できる点です。これにより、従業員のワークライフバランスの向上や満足度の増加が期待されます。
しかし、分割付与には以下の条件が伴います。
(1)入社1年目に限定
(2)前倒しで付与した残りの有給日数は、入社後6ヶ月を経過する日までにすべて付与
(3)2回目の有給休暇は、分割付与した初回の付与日から1年以内に付与
(2)前倒しで付与した残りの有給日数は、入社後6ヶ月を経過する日までにすべて付与
(3)2回目の有給休暇は、分割付与した初回の付与日から1年以内に付与
基準日を統一した際のように、入社直後に10日間の有給休暇を全て消化して退職するケースの衝撃を軽減する効果はありますが、最初に前倒しで付与した日が基準日となる点では、基準日を統一する方法と同様のデメリットが存在します。
また、複雑さも考慮する必要があります。
例えば、9月30日に入社した従業員の場合、
10月1日に5日間を前倒しで分割付与します。これは問題ありません。
残りの5日間を付与する日が翌年の4月1日だと、本来の基準日である入社6ヶ月経過した日を超える問題が生じます。基準日を3月30日以前にする必要があります。
このような複雑なケースを考慮すると、人事部門の負担は、原則である入社6ヶ月後の基準日を適用する場合よりも大きくなる可能性があります。
3.結局、中途入社社員に有給はいつから付与するのが良いのか?

中途入社社員に対する有給休暇の付与タイミングは、経営者にとって重要な判断が必要なポイントです。基本的には以下の3つのパターンが考えられます。
・雇入れの6か月後を基準日とする
・基準日を統一する
・有給を前倒しして分割付与する
これらの方法はそれぞれ一長一短があり、最適な方法は企業の状況により異なります。事務の煩雑さや、社長が納得しづらい有給休暇の取得状況を考慮すると、どの方法を選ぶべきかは一概には言えません。
・雇入れの6か月後を基準日とする
・基準日を統一する
・有給を前倒しして分割付与する
これらの方法はそれぞれ一長一短があり、最適な方法は企業の状況により異なります。事務の煩雑さや、社長が納得しづらい有給休暇の取得状況を考慮すると、どの方法を選ぶべきかは一概には言えません。
社労士のお薦めは中小企業には雇入れの6か月後
私が社労士として中小企業の社長にアドバイスする際、最も推奨しているのは原則通り、雇入れから6か月後を基準日とする方法です。
確かに、従業員1人1人の有給基準日が異なることで事務は煩雑になりますが、基準日を統一しても有給休暇の管理自体が無くなるわけではありません。
20~30名規模の企業であれば、1人1人の有給基準日が異なっても管理できる範囲だと考えられます。
もし、煩雑さを少しでも軽減したい場合は、基準日を毎月1日に統一する方法も一つの選択肢となります。
確かに、従業員1人1人の有給基準日が異なることで事務は煩雑になりますが、基準日を統一しても有給休暇の管理自体が無くなるわけではありません。
20~30名規模の企業であれば、1人1人の有給基準日が異なっても管理できる範囲だと考えられます。
もし、煩雑さを少しでも軽減したい場合は、基準日を毎月1日に統一する方法も一つの選択肢となります。
入社直後の社員にも数日の有給休暇を付与する方法
雇入れから6か月間は有給休暇がないという状況を避けたい場合、法定の有給休暇ではない会社独自の有給休暇を設定することも可能です。
例えば、以下のように自由に設定できます。
このように、中途入社社員への有給休暇の付与方法は多岐にわたり、それぞれの企業の状況やニーズに合わせて柔軟に対応することが重要です。
例えば、以下のように自由に設定できます。
・入社から6か月間、2か月ごとに計3日間の有給休暇を付与
・使途は傷病に限定
・未使用の場合、繰り越しはなし
・使途は傷病に限定
・未使用の場合、繰り越しはなし
このように、中途入社社員への有給休暇の付与方法は多岐にわたり、それぞれの企業の状況やニーズに合わせて柔軟に対応することが重要です。
まとめ
今回は、有給休暇の付与タイミングに焦点を当て、以下の3つの方法について解説しました。
・雇入れの6か月後を基準日とする方法
・基準日を統一する方法
・有給を前倒しして分割付与する方法
それぞれの方法の概要とメリット・デメリットを検討しました。
重要なのは、自社の状況や考え方に合った方法を採用することです。一度採用したり変更したりすると、後に修正することは困難になることが多いです。
他社の事例やインターネット上の情報に流されることなく、自社にとって最適な選択をすることが大切です。
もし不明な点やご相談がある場合は、下段のフォームからお問い合わせください。
【関連記事はこちら】
・雇入れの6か月後を基準日とする方法
・基準日を統一する方法
・有給を前倒しして分割付与する方法
それぞれの方法の概要とメリット・デメリットを検討しました。
重要なのは、自社の状況や考え方に合った方法を採用することです。一度採用したり変更したりすると、後に修正することは困難になることが多いです。
他社の事例やインターネット上の情報に流されることなく、自社にとって最適な選択をすることが大切です。
もし不明な点やご相談がある場合は、下段のフォームからお問い合わせください。
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